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むくろ人形の不思議な話5【記憶病院】

幽霊の日、と言うことで不思議なお話を。TwitterのDMでいただいた話です。

「記憶病院」

送ってくれたフォロワーさん、仮にRさんとしますが、この方が小学校3年くらいの時に体験した出来事だそうです。

Rさんには三つ下の妹さんがいるのですが、あるときその妹さんが血尿を出してしまったことがあったそう。

しばらく様子見てても痛みが引かなかったそうで、ある日母親とRさんの3人で地元の大きな病院に行ったのだそうです。

診断の結果は膀胱炎。割と深刻だったらしく、数日間の入院が必要だったそうで、そのまま詳しい検査に移行したそうです。

何も持っていかず来てしまったので、Rさんは待合室で興味ないテレビを見たり、ジュースを飲んだり、昼寝をしたり、とにかく何時間もいつ終わるともわからない暇を潰していたそうです。

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そのうち、病院の診察時間も終わり、Rさんとお母さん以外の人影は消え、来た時は昼だったのに、外はすっかり薄暗く様変わりしていました。

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人気が消えると音も消え、なんとも思っていなかった病院が途端に見慣れない不気味な空間に感じられ、Rさんは母親にくっついて過ごしました。

しかしながら人体は無慈悲なもので、Rさん、昼間に飲んだジュースのせいでトイレに行きたくなってしまったそうなんです。正直不気味を感じてしまった夜の病院のトイレに1人で行くのは、当時のRさんにとってはかなりの難題。しかし、子どもながらに妹のことで不安な表情の母親に迷惑をかけて怒られるのも嫌だったので、意を決して「トイレ行ってくる…」と告げたRさん。

母親に「…1人で行ける? 廊下の突き当たりに看板あるからその先にあるよ」と言われ、1人トイレに向かったそうです。

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嗅ぎ慣れない病院のすえた臭い、そして、いくら夜とはいえ全く感じない人気がRさんの恐怖をかき立てました。

「本当に誰もいないんですよ。物音一つしない。やっぱおかしいと思いますよ、今思うと」

廊下を照らす蛍光灯の下を越えるたびに、どこかドンドン母親と離れていくような恐怖に苛まれながら、視界の先のトイレを指す看板のある曲がり角を目指す。

ようやく突き当たりに到着し、看板の指す左を向くと、割とすぐそこにトイレがあったそうです。

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中に入っていくと、そこにも誰もおらず、個室の扉は全部開いたまま。

Rさん、余計に不気味を感じながら用を足していました。
なんとか大事に至らなかった安堵と、恐怖を乗り切った誇らしさで少し気分が良くなっていると。

後ろを誰かが横切ったそうです。

「(……うわ、人いんじゃん!)」

状態が状態なので振り向けなかったそうですが、突然の気配に心臓がキュッとなったそうです。

で、その時わかったんですが、人の気配、個室から入口の方に向けて動いていたらしいです。

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さっきとは違う、鼓動が駆け足で速くなってくる緊迫感と、今すぐ駆け出したい恐怖で焦ったRさん。用が済むや慌てて手を洗い、鏡を見た。

「そこで記憶飛んでます。次に覚えてるのは、何かから夢中で逃げて、胸の辺りが苦しくなってる記憶です」

待合室に戻ったのか、そのあとどうやって家に帰ったのか、その辺りの記憶は全部覚えていないそうです。

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で、それから10年後。

Rさん、実家に帰省した時に妹さんの膀胱炎の話題になって、笑いながら話す中で、ふとこの一連の記憶が蘇ってきて、母親に話したんだそうです。

「違うって言われました。『その記憶間違ってるわよ』って。『夜の病院のトイレ何するかわからないあんたを1人で行かせるわけないし。というか、そもそも、あんたあの日家に居たのよ。病院行ってないから』って言うんですよ」

Rさんの母親が言うにはその日、妹さんを連れて病院に行くことが決まった時、Rさんは家に残したそうで、その後検査が長引いて帰れなさそうになった時、Rさんの母親は隣の県に住むお婆ちゃんにRさんの面倒みてもらうように頼んだのだそうです。

Rさん、お婆ちゃんと過ごした記憶は全くないそうで、代わりにその病院の出来事は、その時の病院の臭いすら鮮明に覚えているそうです。

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その後、実家近くに引っ越したRさん、最近になって腰を痛めてしまったらしく、その病院にその記憶以来初めて行ったそうですが、長い廊下や、ガラス張りで緑のある中庭が見える景色など、記憶と全く同じだったそうですが、曲がり角にトイレはなかったそうです。

おわり

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