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むくろ幽介の怖い話10【足たち】

『足たち』

2017年11月5日にした話

先日、閉店間際の某ショートパンツでアメリカンなご飯を提供してくれるナイスなお店で、お姉さんからじっくり怖い話を聞けたので話します。

例のごとく怖い話収集してるって言ったんですよ。

そしたら「話すと憑いてくるっていうから嫌なんだけど、お兄さんたちTシャツ買ってくれたからなー」って教えてくれました。(金髪ベリショお姉さんなのでまんまと買わされました)

そのお姉さん、霊感はないそうなんですが、つい先日まで憑かれてたらしいんです。

「私の友だちにデブキャバに勤めてる子がいてね、その子が見えるの」

「いつもめちゃくちゃ飲むから、閉めた後お店でも関係なく寝ちゃうこと多いんだって、でね、そういうときにたまに見るんだって」

私「幽霊?」

「そ。でも、その子めちゃくちゃ気が強い子でさ、疲れてイライラしてるとビンタしたりするんだってw」

私「ビンタて…そういうのに当たるもんなの?」

「ううん」

聞くところによると、空中を手でバッと払うようにすると、大抵の気持ち悪い空気は消えるんだそうです。

私「気の持ちようだな…」

「あ、でもマジでそうみたいよ! でさ、その子がマジでヤバいと思ったときの話なんだ」


私がその子に話を聞いた時から1年くらい前、2016年の11月頃の出来事だそうです。

そのデブキャバの子、いつものごとく仕事で酔っぱらってしまい、その日もお店で寝てしまったんだそうです。

で、真夜中。

タタタタタタ タタタタタタタタ タタタッ

という、店内を駆け回るような音が聞こえたらしくて、それで目が覚めたんだそうです。

「シーンとすると耳がキーンとなるじゃん。その時もお店の中誰もいないから、静かで、耳もキーンてなってたらしいんだけど、でもその駆け回る音だけは耳に入ってきたんだって」

『あー…ヤバいな』

ふいにゾクッとして…ピンと張りつめたような緊張感が部屋に走ったそうです。

ドキドキしながら、かすかに薄目を開けて辺りを見ていると、タタタタタタタタ……と走り回る音が、彼女の目の前、ソファの裏でフッと消えたように止まったんだそうです。

『あ、くる…』と思った瞬間、ソファの影から下半身だけの赤ちゃん、一歳くらいの下半身がトタトタトタっと出てきたんだそうです。

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「でね、すぐにまた裏に引っ込んじゃったんだって」

「その子も『え? 赤ちゃん?』て。初めて見たから思わず起き上がってソファの裏とか見たけど、もういなかったんだって。なんか今まで見たのと違って、すごく怖くなったんだって」

私「うえ、気持ち悪い話…」

「実はそれだけじゃないの」

私「え?」

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「それから二ヶ月くらいして、私その子の家に行ったんだ」

お酒を買い込み、「さあ飲むぞ!」と店員さんの子は意気込んで扉を開けたそうです。

家主の子、おもむろに郵便物確かめてて『先入っててー』と。そう言われた彼女は薄暗い部屋の廊下を進んだところで違和感に気づいたそうです。

「電気付いててさ、その部屋。リビングだけ。変じゃない? 私『えっ…』って立ち止まっちゃって、そしたらちょっと開いてたリビングの扉の隙間からカチャカチャカチャって猫が私の側通って彼女のとこ走っていってさ」

「彼女可愛がってるから猫を抱き抱えながら私見て『何してんの? 早く入りなよ』って。私を横切って部屋入って「え、なんで電気ついてんの?」って、コートを柱にかけてさ、そしたらさ、猫がパッて降りて、部屋の角凝視し始めたのよ」

私「え、猫が?」

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「うん。彼女思わずもう一回猫抱き抱えようとしゃがんだらさ、目線が猫と重なって、『あ』って。猫も毛逆立てて玄関まで逃げちゃって」

「私が『え、なになに?』って言ったら、彼女『コート取って、早く。出てから話す』って」

「私、慌ててコート取って、入ったばっかなのに出ようとしたの。で、玄関で鍵開けてる時かな。走ってきたんだ」

私「え?」

「見えなかったからわかんないけど、気圧? みたいなの」

私「気圧?」

「そう。トタトタトタトタトタトタトタトタって音と気圧みたいなのが、バッ! って目の前に!」

彼女は私の目の前にふっと手出して、顔に付くか付かないかぐらいまで近づけました。

私「え、なになに、怖い」

「わかる? 姿見えないけどいる感じ。こういう圧がさ、目の前、ほんと目の前にいるのに見えないの。私、腰抜かしちゃってさ。その音で友だちも振り向いて、無理やり引っ張るみたいに、私、友だち、猫がこう、ドタバタ外出たのよ」

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「で、近くの公園行って、猫はもう彼女から離れなくて、私『どうしたの? なに?』って聞いたら、彼女レモンサワープシュって開けて飲むんだよ」

私「すごいなw で、彼女何か話してくれたの?」

「うん」

「『部屋の角から赤ん坊の足がいくつもウネウネ出てきてた』って言うの」

私「……え?」

「足、赤ちゃんの」

私「…え、出てきてたって」

「私も見たわけじゃないからわからないけど、部屋の角からいくつも、虫みたいにウネウネ出てきてたんだって」

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彼女たち、その日は別の友達のところに行ったそう。しばらくしてその子はその部屋から引っ越したそうです。
話してくれた店員の子は、それからずっと、顔の真横に誰かいるみたいな気配と、異常に物音に過敏になって気を病んでしまったそう。


「でね、行きつけのお祓い的なこともしてくれる中国の針治療のとこがあって、そこに行ったの。そしたら、やっぱ憑いてるって言われたんだけど、ここで払うと店に居つきそうだから、知り合いの人教えるからその人に払ってもらいって言われたの」

「その紹介された人が、なんか笑っちゃうんだけど、なんか夢に中国の神さま出てきて、小声で昔鬼退治した剣の名前囁かれて、それから払えるようになったらしい、静岡住んでるすごい人で、旅行がてらデブキャバの子と訪ねて行ったらすごいいい人で、ただで払ってくれたんだ」

「なにが憑いてたの?」

「赤ちゃんの足の群れ」

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「というか、こう下半身の群れみたいなので、掴んで離さないようにしてたみたい。1匹、爪が太くて黄色い、毛深い足のやつもいたらしくて、『こいつは危ないな』って言ってたけど、なんとか払ってもらったんだ」

私「マジか……」

「怖かった?」

私「うん。下半身だけのってのが……」

「なんか気になるの?」

私「実は昔、親父が線路で」

「あー待って、その話はいいや。ごめんね。なんか戻ってきそうだし。お兄さんたち、帰れなくなるからそろそろだよ!」

私「あ、うん…」

隣の客「うわ!」

私「え?」

そのとき、マジなんですけど、隣の席のグラスが落ちて割れました。


おわり

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