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むくろ人形の怖い話16【処置室】

『処置室』

2019年6月16日にした話

ありがたいことで、アニマムンディさん(@animamundi_)に紹介していただいたおかげで、怖い話を結構な方に読んでいただけるようになりました。果てはBLパロまでしていただいちゃって、私は一体どこに行くのかと。

これはチャンスと「怖い話を持っていたら、DMで教えて下さいね」みたいなことも呟いたんですよ。そしたら結構来るんですよ、怖い話、本当に。

今回のお話はそんな感じでフォロワーさんに教えてもらった体験談です。細かなところは変えつつお話します。


その方、今も現役で病院に務めてらっしゃる看護師さんだそうです。

仮にHさんとしておきます。

で、現在務めているところは移転先の綺麗な病院なんだそうですが、移転前の病院が結構なボロ病院だったそうで、モルタル塗装が所々剥がれてきちゃってるというか、まあ、年期の入った所なんだとか。

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Hさんがいた病棟も老化が進んでいて、移転の話も出てていたそうです。

そんな病院に、Hさんが入職して数ヶ月頃の話です。Hさんがいた病棟には処置室という場所があって、検査や治療の時に使う部屋なんだとか。でもそこ、少し違和感あるらしいんです。

普通、そういう部屋って離れにつくりそうですが、その処置室は、病室の間にあるんだそうです。311、312、313、と続く中にポツンと処置室があって、315、316と続いていく。

そこ元病室らしいんですよね。それを改装して処置室として使っている。

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勝手の良い位置につくっただけな気もしますが、Hさん曰く

「看護師たちの詰め所から無駄に遠い位置で、評判悪かったです。だから変だなって」

処置室の位置に違和感持ちながらも、看護師さんかなりハードなお仕事ですから、Hさん、日々あくせく働いているうちに、些細な疑問は忘れていったそうです。

それから数週間ほど経った時に、先輩から「処置室に●●号室の患者さん移動させるから、手伝ってくれる」と言われたんだそうです。「はーい」って応えて、一人その病室行こうとしたら「ちがうの、あの、ベッドごと移動するから、私も行くから」って。

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「え、ベッドごとですか…」

「そう、だから、一人じゃダメだから」

「…でも、あそこの患者さん歩けますよ…だから私が呼んでくれば」

「いいから。本当に。ベッドごとだから。ねえ」

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やたら語気が強いというか、少し怖くて、色々疑問は湧いたそうですが、揉めたくもなかったので従ったそうです。

処置室に近づくにつれて疎らになってくる人の気配。

処置室の前まで来ると、先輩が「じゃあ、先に処置室のベッド、動かすから、いい?」「あ、はい」。

なんか、緊張してる様子で嫌な感じがしたそうです。

両隣の病室は空いている。

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先輩、処置室の鍵取り出して、ガチャっと開けて、二人して入る。



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カーテン閉まってて暗いのに、先輩は明かりもつけずに真ん中のベッドに向かっていくから、Hさんの違和感は大きくなっていったそうです。

「早く、そっち持って…いくよ」

「はい」

「じゃ、せーので持ち上げて、一旦部屋の外持って行くからね」

「はい」

「じゃ、せーのっ」



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「…めて…してはなし…」

背後から声して。

Hさん、スーーッ…て手足冷たくなって、そしたら

ガタン!

って、先輩持ち上げたベッドの端、床に落としちゃって、二人バッと顔見合わせて、でも、その音より、また何かが聞こえるのが怖くて、嫌なのに耳そば立てちゃって。

数秒沈黙してて、でも、もう声はしなくて、先輩の顔見たらダラダラ汗垂らしてて、喉こくこく動いてて、ああ、聞き間違いじゃなかったんだなって。

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「………行くよ」

二人急いでベッド運んで部屋出たそうです。


その後は、患者さんを処置室に案内して、検査して、部屋に戻って、普通に終わって、患者さんも数日後に問題なく退院したそうです。

「なんだったんだろう、あれ」

どうしてもあの瞬間の背後の声が、耳元から離れず、落ち着かなかったそうです。

仕事終わりに、先輩とご飯行くことになって、お酒も進みつつたわいもない話してたけど、Hさん我慢できず「あの、聞きました? お昼の…」って。

先輩「え、あ、うん。聞いた…」って。

「本当ビックリしたよ。プシ(精神科病棟)から? だよねあれ」

「え」

「『ギャー!』ってね。ベッド落としちゃってごめんね。恥ずかしくて黙っちゃったもんね」

「……え」




「『座って』って言ってませんでした?」

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その日は早々にお開きになったそうです。



ここまでそのDM読んでて思ったんですけど、Hさん声聞いたとき「座って」なんて言ってないんですよ。少なくともそう書いてない。

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その後は変わったこともなく日々は過ぎ、病院は移転の時期に。Hさんは綺麗になった別の病棟へ、先輩は同系列の別の病院に異動になったそうです。


Hさんは仕事の合間や、飲み会の席で、他の先輩や同期に処置室の話を聞いてみても、みんなHさんの話はぐらかして、気まずそうにするばかりだったそうです。


ただ、あのベッドは新しい病棟には持っていかなかったそうです。

あと、物も片付けた引っ越しの当日、病棟の詰め所の扉をスタッフが最後に閉めようとしたら、急にナースコールが鳴って、でもそのスタッフはどこから鳴っているかは見ずに鍵を閉めた、という話は聞いたそうです。

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「結局、何か知ってる人も、誰も、話さないから、みんな知らないフリしてるんですよ」

「最近、気になってよく前の病棟行くんですよ。窓にね、居るんですけど、もう会えないんです」

Hさん、最後にそう言ってました。意味はよくわかりませんでしたけど。

座っていたら、何が起きたんでしょうね。


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おわり。

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