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むくろ人形の怖い話11【読モ】

『読モ』

2018年2月5日にした話

先日、会社の喫煙所でカメラマンさんとサボっていた時に、私が今進めてるホラー漫画企画の話になったんです。その時に、そのカメラマンさんから前この会社に少しの間だけいた、あるカメラマンさんの話を聞きました。

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大体2005年頃の話らしいです。

カメラマンの早川さん(仮)は、私がこの会社に入る前にカメラマンをしていた人らしいです。(私は知りませんでした。話してくれたカメラマンさんは早川さんの後輩にあたる人)

元々はモデルのピンナップとかを中心に撮っていたらしいんですが、まあ今回話す出来事がきっかけで、物撮りの多いうちの会社に入ることになったんだそう。

早川さんは当時、赤文字系の雑誌とかでよく写真を撮っていたそうです。専属ではなくてフリーで。

読モ全盛期という時代で、早川さんもたくさんの読モ達を撮ったそう。

そんなある日、早川さんのところにとあるメールがきたそうです。

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「早川さま

突然ですが、雑誌でお名前を拝見しました。

私は読者モデルをしている●●と申します。

ぜひ早川さまに私のピンナップ撮影をお願いしたくご連絡致しました。」


と、こんな感じで読モ自身からの依頼だったそう。

珍しいなと思いつつ、ギャランティーも良かったので受けたんだそうです。


「当日は、私、個人的にマネージャーやってもらっている●●、友人のスタイリストの●●、あと、早川さまと同じく●●●●●(雑誌名)でお名前を拝見し、お声がけしたヘアメイクの●●さんの4名でお待ちしています。」


そのヘアメイクさんは何度か撮影で一緒だったので、早川さんは安心したそうです。

時期は秋。

場所は読モの指定で、都内のとあるビル。

朝に集まり挨拶。

現場で最初に目にしたのは知り合いのヘアメイクさん。

愛想のいい人で「あー、早川さん! お久しぶりー!」といつもの笑顔。早川さんも機材を準備しつつ彼女と世間話をしていたそう。

早川さん「モデルさん達は?」

ヘアメイクさん「それが、私、時間の15分前に着いたんだけど机にこれが」

見るとマジックで書いた汚い字で

「少し遅れますので、お待ちください」

と書いてあったそうです。

早川さん「うーん、まあ、あまり撮影慣れてないんだよ」と苦笑い。機材準備も終わり、現場で待ちぼうけていたそうです。

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メールにあった携帯電話にかけても出ず、30分待った頃、コンクリート打ちっ放しのフロアの奥にあるエレベーターがポーンと鳴ったそうです。

「ごめんなさーい遅れちゃってー」

降りてきたのはカーディガンを着た読モ、そして、40代後半と思しき男と30代と思しき太った女だったそうです。

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読モ「渋滞にハマってしまって、遅れちゃいましたー。お電話出来ずごめんなさーい」

そう言って申し訳なさそうな笑みを漏らす読モの女性は、思っていたより年齢がいっていて、30代といった風貌だったそうです。

こともなげに挨拶をする彼女、その後ろに立つ無愛想な二人に、早川さんは違和感を覚えたそうです。

読モ「こちらがマネージャーの●●さん、こちらはスタイリストの●●さん」

そう彼女は紹介したそうですが、早川さんには彼らがどうしてもマネージャーには見えなかったそうです。

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何故なら、服装はボロボロで挨拶もままならず、異常にこの空間にそぐわない違和感があったからだそうでした。

戸惑いつつ撮影はスタートしたそうですが、スタイリングなどはほぼ行われず、マネージャーという男も、スタイリストという女も、ただフロアの奥で壁に寄りかかってこちらを見ているだけだったそう。

「早く終わらせてしまおう」そう思った早川さんは、ヘアメイクさんとも話し、巻きで進めたそうです。


パシャ

パシャ

パシャ

パシャ

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淡々と下りるシャッター音と、外から聞こえる喧騒。

必要最低限の言葉しか話さない、異常に活気のない現場だったんだそう。

撮影前まではテンションの高かった読モも、撮影が始まると自分の世界に入り込んだのか、口数がかなり減った様子だったそうです。

そのうち、撮影予定だったカットの大部分が撮り終わり、撮影も終盤に差し掛かった時に、


「あー…もう……」
「今はやめてって…もう…」
「今撮ってるでしょ…」
「ねえ、今はダメだって……ねえ、今は撮ってるでしょうが!!」

と、モデルが突然叫んで床をバンッ! と叩いたんだそうです。

「え、ど、どうしたんですか…?」
「●●さん大丈夫…?」

心配して声をかける早川さんとヘアメイクさんをよそに、モデルの様子はドンドンおかしく、ストレスを爆発させるように泣き叫び出したそうです。

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ヘアメイクさんは叫ぶ読モに駆け寄る。

早川さんはカメラから目を離し、背後のマネージャーをパッと見る。

マネージャーと目が合うと、まるで「やれやれ……」と言わんばかりの表情でこう言ったそうです。


「もう終わりでいいですから。お金払いますんで」


「え、お金? いや、彼女どうしたんですか…何か病気なんじゃ……」

そう早川さんが言った時、読モの方に駆け寄っていたヘアメイクさんの悲鳴が聞こえたそうです。

「いゃぁぁ!! いや、何これ何!?」

「えっ!」

振り返る早川さん。

背後のマネージャーが
「お前に何がわかるんだよ…」
とつぶやく。


全てが同時に起きたそうです。

パシャ キーン パシャ キーン
パシャ キーン パシャ キーン パシャ キーン
パシャ キーン パシャ キーン パシャ キーン パシャ キーン
パシャ キーン パシャ キーン パシャ キーン パシャ キーン パシャ キーン

不定期に作動するシャッターの音と、それに連動したフラッシュ音と明滅。

「いゃぁぁぁやだっ!!」

悲鳴。

突然連続して切れるシャッター音。

オギャーオギャーオギャーオギャーオギャーオギャー

早川さんは混乱の最中に確かに無数の赤ん坊の泣き声を聞いたといいます。

そして、フッと、ヘアメイクさんの叫び声と読モのわめき声が止んだそうです。

早川さんがそちらをパッと見ると、

腰を抜かして後ずさりするヘアメイクさん。

その側には、座り込んで口をだらしなく開け、上を向く読モ。

明滅するフラッシュの合間に、早川さんは見たそうです。


読モの目から赤黒い涙が流れ

口からは先ほどの「オギャーオギャー」という赤ん坊の泣き声が聞こえ

座り込んだ彼女の下半身から血と羊水のようなものがダーーッと流れ始めていたんだそうです。

「うっわ…!! え! なに!?」

早川さんが叫ぶとバンッ! と部屋の電気が消えたそう。

何が起こったか分からず、静まり返る部屋に赤ん坊の泣き声だけが響く。


しばらくすると「早川さん! どこ!? 早川さん!!」という、ヘアメイクさんの震え声が聞こえてきたそうです。

早川さんは「●●ちゃん大丈夫! じっとしててダメ動いちゃ!」という言葉が口をついて出てきたそうです。

バシャ キーン……

バシャ キーン……

焚かれるフラッシュの明滅の中、おもむろに男と女に抱きかかえられ、読モの女は運び出されているようでした。

早川さん「…おい! 待てって!!」

恐怖が怒りに変わり、早川さんは去りゆく彼女らに這いながら怒鳴ったそうです。ふいにフラッシュの明滅が止まり、辺りは真っ暗。何も見えませんでした。


パサッ


早川さんの頭のそばに落ちてきたのは数枚のお札だったそうです。

歩き去る足音。

ポーンという音と共にエレベーターが開くと、まばゆい光が漏れ、目を眩ませている間に扉が閉まりました。


しばらく経ち、明かりがパッと点くと、体育座りで震えるヘアメイクさんと、床に広がった生臭い液体と、倒れたカメラがあるだけだったそうです。

ヘアメイクさんの元に駆け寄り、「今帰ったから…もう帰ったから…」と慰め、震える手で倒れているカメラを手に取りました。彼女は泣いていたそうです。

カメラを見ると、フラッシュのタイミングがズレてほとんどが真っ黒だったそうです。

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何枚も撮られた中に

無数の胎児がまとわりついた女の写真があったそうです。


後日彼女からのメールも捨て、早川さんはしばらく仕事を休んだそうです。


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それから数ヶ月した時、早川さんがコンビニで週刊誌を読んでいたら、都内のマンションで30代の女が刺し殺され、部屋から無数の堕胎した遺体と、刺し殺したと思われる30代の無職の男の自殺体が見つかったという記事を見たそうです。

その後はニュースにもならなかったので、真偽は不明だそうです。



おわり

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