マガジンのカバー画像

不条理短篇小説

116
現世に蔓延る号泣至上主義に対する耳毛レベルのささやかな反抗――。
運営しているクリエイター

2019年4月の記事一覧

短篇小説「夢のまた夢のまた夢」

短篇小説「夢のまた夢のまた夢」

 目が覚めると僕はプロ野球選手になっていた。これは僕が生まれてはじめて抱いた夢だ。寝て見る夢ではなく、起きて抱く夢だ。だからこれは夢の中の話ではなく、外の話ということになる。どちらが現実かなんて、取るに足らないことだろう。

 しかしプロ野球選手の僕は、引退後に生き甲斐を失い、酒びたりの毎日を送ることとなった。毎日が無力感に溢れていた。子供のころ、引退後のことまで夢に見ることを忘れたからだ。こんな

もっとみる