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女子の欲望全開!イケメンパラダイスなヴァンパイアたちは幸せな死を迎えられるのか?! 『黒薔薇アリス』

【レビュアー/こやま淳子

美しくて恐ろしいヴァンパイアの新ルール

これはヴァンパイア漫画である。ヴァンパイアといっても、吸血鬼ではなく吸血「樹」で、いままでの吸血鬼のルールといろいろ違う。

光を浴びても死なない(ちょっと眠くなるだけ)、ニンニクに弱くない、鏡に映る、コウモリになって飛んだりしない、無闇に人間に噛み付いて死なせたりはしない、非常に長寿ではあるものの、不老不死ではなく寿命がある、そしてその寿命を迎える前に人間の女性と「繁殖」して「種」を残していかなくてはならない。

そしてその女性は、繁殖したあとどうなるかというと…ネタバレになるので書けないけれど、どうも無事ではいられない。美しくも恐ろしいヴァンパイアの新ルールがあるのである。

物語は中世ヨーロッパから現代の日本まで時代を駆け巡り、耽美にドラマチックに、切なく壮大に描かれていく。人々の恋や憎しみや後悔や嫉妬、ありとあらゆるドロドロした感情が絡み合い、そこに美しくも恐ろしい吸血樹のストーリーが展開するのだ。

女子の欲望全開!の水城せとなワールド

しかし同時に、そこは『失恋ショコラティエ』の水城せとな先生である。少女漫画ドリームというか、女子の欲望がふんだんに詰まったようなシーンも、これでもか!というように描かれる。

例えば、種類の違うイケメンがたくさん出てくる。何せヴァンパイアになれる条件が「強く美しい個体(しかも男性に限る)」なのだから、美しくない男子は、ほぼ出てこない。

ちょっと冷たいけれどクールで長髪の西洋イケメン、優しくていつもそばにいてくれるジェントルマンなイケメン、美味しいご飯と美味しいスイーツを作れる双子のイケメン…。

そしてヒロインは、フリフリのロリータファッションを纏い、美味しいスイーツやカフェ飯を食べながら、そのイケメン吸血樹たちに囲まれて、素敵なお屋敷で生活する。しかも、そのイケメンたち、みんな自分をめぐって争う恋敵なのである。いくら少女漫画といえど、ここまでの天国設定、なかなかないんじゃないだろうか。しかしその天国には、恐ろしい「条件」があるのだけれど。

深く切なく恐ろしくも雅やかなストーリーを堪能しながら、同時にちょっとエロいとも言えるようなイケメンパラダイスな女子ライフも読めるのが、この漫画の醍醐味である。これがもう飽きさせないんだ。

そして物語の大きなテーマである「後悔」と「再生」。ヴァンパイアになって人生をやり直す男たちは、幸せな死を迎えることができるのだろうか。

気をつけてほしいのが、「黒薔薇アリス D.C.al fine」というのは第二部(続編)なのでそこから読まないように。そこから読んでわけわからないと思ってる人、結構いるらしい(実は私もその失敗をしました…)。






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