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劇場版『今日から俺は!!』が大ヒット!学園コメディの雄・西森博之の読むべき漫画4選

ヒキョー&真面目なヤンキーの痛快さ『今日から俺は!!』

大ヒット公開中の映画『今日から俺は!!』は、1988年に週刊少年サンデーで連載を開始して以来1997年まで実に10年間連載された大ヒット漫画です。

2019年に何故かこのタイミングで実写ドラマ化され話題を呼び、そのコミカルさ&90年代ヤンキーバトルが福田雄一監督の手にかかって料理され極上のエンターテインメントとなって、ついに2020年の劇場公開へと繋がりました。

10年も連載が続いた漫画作品のため全38巻と大ボリュームではありますが、一切ダレることなく最後まで夢中になって読むことが出来ます。

「ヤンキー漫画は苦手」という方もいらっしゃるかもしれませんが、本作はむしろコメディの要素が強く、W主人公である三橋(みつはし)のヒキョーっぷりの痛快さと、実直で信念を持って生きている伊藤(いとう)の心地よいバランスがたまらなく心に刺さる名作なのです。

こうした要素が時代に左右されることなくちゃんと受けるということは、実写ドラマや劇場映画の大ヒットからも裏付けられています(実写版も原作漫画同様の時代背景のため一切スマホなどが登場しないのですが、全く関係なく楽しめます)。

いつ読んでも色褪せない名作というのは、文字通りいつ読んでもいい!ぜひ、劇場版と合わせて原作漫画もたっぷりと楽しんでいただければと思います。

スーパー美少女は元男だった!?『天使な小生意気』

『今日から俺は!!』に続く西森博之作品は、『天使な小生意気』(全20巻)。前作がヤンキー要素&コメディが中心だったのに対して、一転してファンタジー要素が大きい作品です。

『天使な小生意気』では、「男の中の男になりたい」と思っていた少年があまのじゃくな悪魔に女の子にされてしまいます。女の子にされて6年が経ち、まるで天使のような美少女に成長を遂げた主人公と、その周りの仲間たちの学園生活&バトルを描いたコメディ作品です。

ジャンルは一見異なるように見えても、そこはやはり西森作品。しっかりと芯の通った男達と天使のような美しさを持った主人公との掛け合いや闘いは必見です。

西森作品にはいつも闘いが描かれるのですが、とにかく『悪』の描き方が上手いという点において共通しています。一切の同情の余地がないような、わかりやすいクズや悪が数多く登場するのです。

だからこそ、ぶっ飛ばした時の半端ない気持ちよさがあるのです!

現代の少年たちの武士道のカッコ良さ『道士郎でござる』

お次は『道士郎でござる』(全8巻)。タイトルにある道士郎(どうしろう)がもちろん主人公ではあるのですが、実はW主人です。

道士郎は「間違った武士道を教えられ育てられた」という現代の男の子。もうひとりの主人公は平凡・小柄な健助(けんすけ)。この二人のコンビが織りなすハチャメチャな学園モノなのです。

腕っぷしは道士郎のほうがもちろん強いのですが、本当の意味で屈せず、相手が例えヤクザであっても喧嘩を売るほどの信念を持っているのは健助なのです。

なので、最初は勘違いから始まった道士郎(仕える)→健助(君主)という奇妙な関係性から物語は構成されていましたが、途中から段々と健助という少年の正しさや器のデカさのほうが読んでいて心地よくなっていきます。

まるで本当の君主の様にどんどんと健助の周りに理解者や友人が増えていくさまは非常に気持ちよく、ハートフルなストーリーとバトルの熱さのバランスがこれまた堪らない作品なのです。

悪魔なヤンキーは茶道を学ぶことにした『お茶にごす。』

最後は、『お茶にごす。』(全11巻)のご紹介です。

『今日から俺は!!』以来のヤンキー主人公ですが、これ以上不毛な争いごとに巻き込まれないようにするために穏やかな心を学ぶべく茶道を始める、という物語です。

見た目の人相の悪さ故に喧嘩を売られ、その腕っぷしの強さから無敵伝説を作り続けてきた“悪魔(デビル)まークン”と呼ばれる主人公が、実は天然で心優しい性格だったという部分が本作の一番の魅力です。

母親は病死して冷酷な父親に見捨てられたという暗い過去から、彼の人生の目標は「優しい人間になること」になりました。ですが、「男は強くなければ優しくなれない」という持論を展開して大きくなったので、こんな不思議な天使のような悪魔が生まれてしまったのでした。

やっぱり基本は学園コメディで、ハートフルで熱い魂を持っているという構成は、他の西森作品と共通する部分ですね。

西森作品には義理と人情=任侠節がある

他にもまだまだあるのですが、今回はざっと代表的な西森作品を4つ紹介しました。こうして見ると、西森作品にはある種の共通項があります。

学園を舞台としたコメディ(&ケンカ)ものであることも確かにそうなのですが、本質的な面白さはやっぱり誰もが共感できる義理と人情=任侠節にあるのだと思います。

「コイツはクズだ」と誰もが思う登場人物(悪役)を主人公たちが力を合わせて熱くハートフルにぶっ飛ばすのは、やはり読者を選ばない普遍的な面白さがありますね。

漫画家としてのキャリアが長いだけあって西森作品はたくさんあります。どれから読んでも間違いはありませんが、良かったら今回紹介した4作品を上から順に読んでいただければと思います。

読むときっと幸せな気持ちになって、他人のことがちょっとだけ好きになると思いますよ。

WRITTEN by 松山洋
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