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尊敬する先輩経営者に「ヴィジョナリーカンパニー」よりいい経営本だと紹介された漫画のタイトルは・・・・・・

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)

【レビュアー/佐渡島庸平】

先輩経営者に相談したら、「ゴミ箱の数を決めるのも意思決定。誰がどこにゴミ箱をおくのか、一日に何度回収するのかを決めている。社長が決める必要はなくても、誰が決めるのかは、社長が設計して権限委譲を行っている」と言われた。

本当にその通りだ。世の中の全てのことは、誰かの意思決定の結果だ。でも、意思決定は重要なことだけに行われているような気がしていて、些細なことも意志決定の積み重ねだということに、ほとんどそれに気づくことなく生きてきていた。

コルクという会社を運営していくにあたって、僕は「ゴミ箱の数をどうするのか」というようなことまで、自分で決めるか、社員の誰かに決めてもらうかしないといけない。

サラリーマンの時には全く気づくことがなかった会社という組織のすごさを今頃になって実感している。

別の先輩経営者に、経営を学ぶのにいい本はないか尋ねた。たくさん本を読んでいる人だったので、おススメのビジネス本を教えてもらうつもりだった。

「『ヴィジョナリーカンパニー』もいいけど、一番いいのは『総務部総務課 山口六平太』だよ。」

なんと、日本でも有数の経営者におススメされるのが、六平太とは!?

昔、父親が持って帰ってきていた「ビッグコミック」で読んでいたことがあったものの、単行本で読むのは初めてだ。

そして、読んで思った。

これぞ、まさに僕の仕事!!! 僕が毎日苦労していることだと!

これから起業しようと思っている人、起業して悩んでいる人、『総務部総務課 山口六平太』を読んだほうがいい。いや、絶対に読むべきだ!!

これこそが、まさにベンチャーの社長の仕事。

定義しきれない仕事をすべてやるのが社長だ。

下手をすると、トイレットペーパーの替えを用意することまで、仕事になるのだ。

1巻に社員のお葬式を取り仕切るエピソードがある。

最近、僕に仕事をたくさん教えてくれた、大好きな講談社の先輩社員が亡くなった。そのお葬式を講談社の総務の人達が仕切っていた。故人は、出張中に香港で倒れた。すぐに香港へ行き、色々な対応をしたのも講談社の総務だったという。

故人を偲びながら、そのような講談社のすごさに在職中は、全く気づけなかったと考えていた。

山口六平太を読んでいると、総務に持ち込まれるトラブルは、本当に千差万別だということがわかる。些細すぎることから、大きなことまで。その全てに同じように誠意を持って対応していく。それが、できるかが、会社の行く末を本当に決めている。

会社は、戦略でできているのではない。人でできている。だから、人のいい部分も嫌な部分も全部、向き合わないといけないのだ。

立派なビジネス本を読むよりも、確かにずっと経営の勉強になった。

六平太は、起業家だけに参考になるのではない。

新人漫画家にも、すごく参考になる漫画だと感じた。六平太の、煙草をクルッは、絶対に忘れられないキャラとしての特長だし、特に大事件がなくても1話を読ませきる構成力は、漫画の教科書のような作品だとも思った。


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