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もっと評価されていいジャンプの名作 個人的No.1『ジャングルの王者ターちゃん』 尾田栄一郎が師事した徳弘正也が書いたエロとギャグとバトルの融合

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)

【レビュアー/筧将英】

32歳になりまして、「若手」とは自分ではいえなくなって久しく立ちます。それにともなって、「昔読んだこの漫画おもしろいな、読んでほしいな」と思うものも増えてきました。

本日は、いらないお節介だけど、本当に読んでほしい、おもしろい漫画の紹介です。

今回、紹介する漫画は徳弘正也さんの『ジャングルの王者ターちゃん』です。『ジャングルの王者ターちゃん』と『新ジャングルの王者ターちゃん』があって登場人物は同じですが、今回は主に“新”を紹介します。

連載時期は、1988年〜1995年の7年間(私が5歳から12歳なのでちょうど漫画読みまくりの時期です)。週刊少年ジャンプが歴代売上最高部数(653万部、ギネスに登録)を達成したのは1995年3-4号ですが、この少しあとに『ジャングルの王者ターちゃん』は終了しています。

この1995年3-4月号の連載作品ですが、

■SLAM DUNK:井上雄彦
■SHADOW LAY:桂正和:読切
■MIND ASSASSIN:かずはじめ
■ドラゴンボール:鳥山明
■みどりのマキバオー:つの丸
■とっても!ラッキーマン:ガモウひろし
■るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-:和月伸宏
■ボンボン坂高校演劇部:高橋ゆたか
■NANPOUDEN:梅澤春人:読切
■地獄先生ぬ~べ~:真倉翔・岡野剛
■ジョジョの奇妙な冒険:荒木飛呂彦
■キャプテン翼 ワールドユース編:高橋陽一
■こちら葛飾区亀有公園前派出所:秋本治
■新ジャングルの王者ターちゃん:徳弘正也
■DRAGON QUEST ダイの大冒険:堀井雄二・三条陸・稲田浩司
■影武者 徳川家康:隆慶一郎・原哲夫
■NINKU -忍空-:桐山光侍
■RASH!!:北条司
■ろくでなしBLUES:森田まさのり
■BOY:梅澤春人
■BAKUDAN:宮下あきら
■王様はロバ -はったり帝国の逆襲-:なにわ小吉

この時期はちびっこはみんなジャンプを読んでいたと思うので(読まないと友達との話についていけなかった)、20代後半以上から40歳くらいまでの方でジャンプを読んでいた方は、概ねの上記の作品を覚えていると思いますし、当然『ジャングルの王者ターちゃん』を読んでいた方も多いと思います。

なので今回の記事では、20代後半以降の『ジャングルの王者ターちゃん』を読んだことがあるひと向けの前半と、20代前半までの読んだことがないひと向けの後半に分けます。

『ジャングルの王者ターちゃん』を読んだことがある方には

読んだことがある方には「HEARTの形状」をみてもらえれば良いでしょう。

アニメが放送されていたのは1993年10月から1994年9月までのたった1年間。にもかかわらず、僕はこの「HEARTの形状」、ほぼ覚えていました。幽遊白書の「アンバランスなkissをして」並みです。

主人公のターちゃんの声優はあの俳優の岸谷五朗です。当時は両津勘吉のラサール石井よりも衝撃的でした。 以上、ターちゃんをもう一度読みたいと思ってもらうには、これで十分かなと思いましたので、前半はここまでです。

『ジャングルの王者ターちゃん』を読んだことがない方には 

ではここからは、後半の読んだことがない方へ紹介です。まず、ターちゃんの作品のあらすじですが、

““
その昔、アフリカが「動物の楽園」と呼ばれていた時代、ひとりの男がいた。鍛え抜かれた肉体と、平和を愛する正義の心を持ったその男は、動物たちと、妻をはじめとする周囲の人たちに支えられながら、日々ハンターたちと戦い、ジャングルの平和を守っていた。この物語は、動物と自然を守る男・ターちゃんとその仲間たちが悪と戦い、「地球」を救った過程を描いた物語である。(wikipediaより引用)
””

漫画家さんは売れる前に連載をしている漫画家のアシスタントをすることが多いそうですが、『ワンピース』の作者・尾田栄一郎氏もデビュー前に、3名の漫画家のアシスタントをしていました。その3名が、甲斐谷忍・徳弘正也・和月伸宏です。

近年(といってもすこし前かな)甲斐谷忍氏の『ライアーゲーム』でドラマ化・映画化されましたし、和月伸宏氏の『るろうに剣心』も映画化されたので認知されていると思います。それに対して、徳弘正也氏の『ジャングルの王者ターちゃん』は、知名度が劣っている状況ですが、 

““
尾田は徳弘を「本当のプロ」、「一生の恩人」と慕っている(wikipediaより)
””

というほど、徳弘正也氏は優れた漫画家です。

では、なぜこの作品の知名度が低いかと言いますと、読んだことがある方にはわかると思いますがやはり“エロ“にあるのかなと思います。

本作品は、『シティーハンター』とともに「もっこり」という言葉を定着させたと言われているのですが、今の少年漫画ではできない言葉や描写が多く使われています。

ただし、戦闘+シリアス+エロ+ギャグをここまでうまく組み合わせることができる漫画家は徳弘正也氏以外にはいないのではないか、というくらいです。

ジャングル(というよりサバンナ)が舞台ということもありますが、このエロの要素が多いことにより実写化や映画化は難しいです。でも、逆にいえばこれがなくなると、それはもうターちゃんではなくなってしまいます。

ターちゃんを読んで欲しい理由は、エロではなく、“戦い” 

最初の「ジャングルの王者ターちゃん」はサバンナでハンターから動物を守るというシンプルな内容だったのですが、少年ジャンプの方針として、悪に立ち向かうという要素が入りました。それが「新ジャングルの王者ターちゃん」になります。(作者の徳弘正也氏は「ジャンプだからしょうがない」と言っていたそうです)

仕方なく始めたものの、作者が格闘技をやっているせいか、戦うシーンがめちゃくちゃかっこいい。敵キャラも本格的な格闘技を使います。

あと戦いのシーンとしては、個人的に梁師範がすごく好きです。中国西派32門派白華拳の最高師範で、ターちゃんの友人。必殺技は百歩神拳。

ドラゴンゴール方式で、どんどん強い敵が出てきて戦っていきますが、ターちゃん自身や仲間も強くなりながら、強敵を倒していく、という王道のストーリになっています。各ストーリーのあらすじは下記のようになっています。中国編とヴァンパイア編、ルシュ王国編がおすすめ。

ユンケル帝国編:ユンケル帝国のトーナメントに出場。薬物によって強化された戦士と戦う。

中国編:中国山奥で開催される中国憲法の流派争いのトーナメントの助っ人として加わる。梁師範が登場。中国拳法の技が多く出てくる。

アメリカ編:ターちゃんの兄弟となのる富豪の家族に招かれてラスベガスのトーナメントに出場。これ以降現れる悪の組織MAXが登場。

ヴァンパイア編:窮地にたったヴァンパイアの国を助けるためにヴァンパイアのくにへ。ヴァンパイアと戦うシーンが最高。

クローン編:ターちゃんの毛からつくられたクローンとトーナメントで対決。MAXとの因縁の終結。

ルシュ王国編:五千年前にアフリカを支配していたルシュ王国の軍神アペデマスと対決。ターちゃんの強さの秘密がここでわかる。

十二神将編:未来からきた梁師範の子供の暗殺を狙う昆虫戦士と対決。最後のアフリカを救うストーリーは泣けます。

以上が『ジャングルの王者ターちゃん』の魅力です。

「知名度が低いから」、「エロがあるから」という理由で読まないのは非常にもったいないくらいターちゃんはかっこいいです。エロと自然の大切さと正しい強さを教えてくれるこの作品は、ある意味、子供に見せたい漫画かもしれません。

ターちゃんを読んで、戦いのシーンがいいなと思った方は、『狂四郎2030』と『昭和不老不死伝説 バンパイア』の2作品がおすすめ。

『狂四郎2030』はエロ、戦闘シーン、人間をより強く表現されており、『昭和不老不死伝説 バンパイア』は政治、人間を表現している作品。両方ともおすすめです。