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#20 給料日前日のXデー

私は給料日の前日がちょっと憂鬱だ。
7年くらい前からか。
たいてい給料日の前の日に、何かお金に絡むマイナスな出来事が起こる。

車を傷つけてしまって修理代が発生したり。
夫の店に商工会議所の人がきて、「手続きが漏れていた」と消費税の徴収がきたり。
住宅リフォーム契約済みのお客様から突然のキャンセルをくらったり。

ちなみに今の会社の給料日は10日。
そう、つまり本日5月9日がXデーなのである。

まあ毎月毎月というわけではないので、大丈夫。
もう夫だって働いているし、今は自動車税以外の何かの大きな支払いがくる、なんてことはない。
今月は平和にXデーを、やり過ごせると思っていた。



のだが。



「失業手当っていつからもらえるんかな?」



今朝夫からこんなことを、聞かれた。


ほらきた。
だからいやなんだよ、給料日前日は。

夫よ、まだ勤めて4ヶ月、今月からやっと正社員になったのだよ。

「1年間は雇用保険払ってないと、もらえないからねえ」笑顔でそう伝えて、心では100回ため息をつく。

そうきたか、Xデー。
朝一はキツイよ、Xデー。
そもそもなんでいつも給料日前なんだよ、Xデー。

5年前に夫が自営の店をやめたいと言った日も給料日の前日だった。
その頃はコロナの緊急事態宣言で、夫の経営する飲食店はかなり厳しい売上だった。閉店はやむを得ない判断。

そんなことを思い出していたら、「ちょっとまった」と私の勝手な分析が始まる。
なんなら夫が給料日前日をXデーとして定めているのでは?
あえて「給料日の前の日には、日頃言いにくいお金のことを言おう!」みたいなスローガン掲げてるのでは?

そう、思うくらい、給料日前日を狙いやがる。



「もし辞めるのであれば、失業保険うんぬんじゃなく、次の仕事を探してから辞めればいいんだよ」

いってらっしゃいの前に、夫にそう伝えてみたが、ため息を付いて無言で会社へ行ってしまった。

うん。今回もちょっとだけ、覚悟しとくか。
あーあ。



映画「インデペンデンス・デイ」みたいに、明日宇宙人が地球に来ないかなあ。人を殺さない、優しい宇宙人バージョンで。
そいで、「オカネニナンテ、シバラレナイデー」とか言って、諭吉をばらまいてくれないかな。


そこまで妄想して、まな板の上の卵焼きを自分の弁当箱につめ、食器を洗い、リビングの椅子に座った。

するとスマートフォンのDiscordに通知が来ていた。
開いてみると、私の所属するWebライターのコミュニティで「インタビューライター講座」が開催されるというお知らせが届いている。

「わお!今私がやりたいことがギチギチに詰まった講座だ!」

カリキュラムや、講座を受けたあとのゴール設定などが書いてある画面を、半ば興奮気味に読みすすめる。

3分の2ほどスクロールして、ハッと気づく。

「この講座、きっと高い」

ドキドキしながらスクロールを続ける。









「明日もらう夫の給料でちょうど払える金額やん」



5分前に、いつ仕事をやめるか分からない夫を送り出した私に対し、宇宙人たちが「Xデー、バンザーイ」とおちょくってくる。



さて。


今月も我が身にふりかかった2つのX。


ドウノリキロウカ。










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