J3トップクラスのセンターバック井上黎生人はファジアーノ岡山の守備を強化できるか


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ガイナーレ鳥取からファジアーノ岡山に加入した井上黎生人ってどんな選手なのか、どんなプレーが得意なのか、ファジアーノ岡山に何をもたらしてくれるのか。DAZNで見られる(2020年12月27日現在)ガイナーレ鳥取のフルマッチ5試合を見て、プレースタイルなどを分析してみた。

 井上黎生人をまだ知らないファジアーノ岡山サポさんや来シーズンからファジアーノ岡山の試合を見てみようと思っている人にぜひ読んでもらいたい。また、「井上黎生人にはもっとこんな良さがあるよ」というガイナーレ鳥取サポさんは引用RTなどで自分やファジサポさんに教えてほしい。


基本プロフィール

選手名 井上黎生人(いのうえ りきと)
生年月日 1997年3月29日
出身 島根県
身長 180㎝
体重 77㎏
利き足 右
ポジション CB、DMF


チームキャリア

ユース経歴
 島根県・雑賀JSCキッカーズ、雑賀JSCキッカーズ玉湯SC、
 滋賀県・RESTA FC
 鹿児島実業高校
プロ経歴
 2015年 -ガイナーレ鳥取
 2021年 -ファジアーノ岡山


高さ・強さ・速さを兼ね備えたJ3トップの守備能力

 2020シーズン、井上は3バックの中央に君臨し、地上戦・空中戦で無類の強さを発揮。データを扱うサイト『Football LAB』によると守備ポイントではリーグ1位を記録した。

守備ポイント・・・相手のプレーの成功(味方へつなぐ、もしくはゴール)を阻止した場合に、成功していれば攻撃側に付与されていたポイントがそのまま守備側に与えられます。よって味方ゴールに近い方が高いポイントが付きます。奪取と違いマイボールにならなかったとしてもポイントとなりますので、クロスボールをクリアして相手にコーナーキックを与えたとしてもクロスを阻止したポイントが加算されます。(引用 Football LAB)

 相手の攻撃を阻止することに長けている井上は高い身体能力を生かしたダイナミックな守備が持ち味。跳躍力を生かした打点の高いヘディングでロングボールを跳ね返し、制空権を渡さない。第32節ブラウブリッツ秋田戦では、敵陣空中戦勝率でリーグ3位(Football LABより)の中村亮太に競り勝つシーンを見せるなどJ2でも跳ね返す力が通用すると期待したい。

 また、激しく身体をぶつけることで相手のコントロールを乱れさせてボールを奪うことも可能。高さだけでなく強さでも相手の自由を奪うことができる。

さらに、井上はセンターバック離れしたスピードも持っている。スペースへ出されたスルーパスに相手よりも速く追いつきクリア。スピードを生かしたサイドアタッカーの縦突破からのクロスにもしっかりと足を運んでスライディングでブロック。高さ・強さだけでなく速さも兼ね備えていることがディフェンダーとして優れているとファジアーノ岡山の強化部が判断した要因だろう。


3バックの中央を務めるほどの卓越したビルドアップ

 鳥取の高木理己監督から絶大な信頼を得ていた井上だが、その信頼は守備だけに留まらない。繋ぐスタイルを志向するチームで3バックの中央を任されていた井上はビルドアップでもチームに貢献できる。局面を1本のパスで変えるロングパスというよりも、確実に味方にパスを通す技術を持っている。3バックの中央でプレーしていた井上は左右どちらからも味方からパスを受ける。並みのセンターバックだと得意な利き足でコントロールして、そのまま利き足でパスを蹴ることが多い。しかし、繋ぐスタイルを志向する高木監督の指導を受けた井上はパスを遠い足でコントロールし、視野を広く確保した状態でパスを蹴ることができる。(例:右から来るパスを左足でコントロールする、左から来るパスを右足でコントロールする。)

 なぜ、パスを遠い足でコントロールする能力が大切なのか。それは相手にプレスの的を絞らせないからだ。例えば、必ず右足でコントロールするセンターバックだと相手はパスコースを誘導しやすく、連動したプレスで追い込むことができる。そうなると、ボールを持つチームは相手が多いサイドに無理してパスを繋ぐかロングボールを蹴ってボールを捨てるしかない。結果、ボールを奪われる可能性が高くなる。

 しかし、井上のようなセンターバックがいることでビルドアップが片方のサイドに偏ることを防げる。常に逆を意識した体の向きでプレーできるため、落ち着いて横パスを繋ぎ、相手のブロックを揺さぶれるのだ。

 ただ、横パスを選択することが多いが、縦パスを出す技術もある。良い姿勢でコントロールし、しっかりと状況を確認できているため本数こそ少ないが、正しい状況で縦パスを出すことができる。不用意な縦パスで奪われるシーンはほどんど見られなかった。

 また、多少プレスを受けても慌てずにGKに下げて動き直し、良い状態でボールを受けようとする「やり直す」プレーも標準装備。これは、今の岡山の選手にはあまり見られないプレーだ。細かな動き直しはボールを大事にしたいチームでプレーしたことで身につけたものだろう。

 17位で終えた2020シーズンのファジアーノ岡山は自分たちでボールを動かして相手を動かす意識を強めた。井上のビルドアップ能力は繋ぐ意識を2021シーズンにも継続していく上で鍵になっていくだろう。


「失点しない」ディフェンダーとしての対応を間違えないインテリジェンス

 3月9日で24歳になる井上は若いセンターバックではあるが、高卒でプロキャリアを始めており、既に6年間もJ3でプレーしている。そのため若さゆえの経験不足からくる判断ミスが少ない。

 中央から釣り出されたときはタイトなアプローチで前を向かせない。これは前を向かれ、展開されて自分が空けたスペースを使われたくないという高いリスク管理から由来するものだろう。また、井上を観察すると首を振る回数がダントツで多い。これにより、自分と相手の位置関係や背中にはフリーの相手がいないか、など次々に変わる状況を把握して、局面ごとに良い準備をして攻撃を迎え撃つことが可能になる。

 冷静さは守備テクニックからも見える。自分よりも高く強い相手と競り合うとき、肩を手で押さえて飛ぶことで相手の自由を封じる。身体的な能力に依存せずに、競り勝つ技術も身につけている。さらに、PA内でも冷静な対応を発揮。相手に対して足を出すのではなく、しっかりと体を寄せる。これはファウルをしてPKを与えてはいけないという意志の表れだろう。

 オフの大幅な人員整理により、岡山のCBは30歳を過ぎたベテランか実戦経験が乏しい20歳前半の若手しかいない。ベテランと若手の中間として加入する井上は十分な実戦経験を積んでいる。センターバックという経験豊富な選手が重宝されやすいポジションで、有馬賢二監督からの信頼を得ることができると期待したい。


CB離れした得点力

 シュートテクニック、空中戦の強さを生かしたヘディングシュート、ナゼソコニイノウエのようなゴールを決めることも可能。1試合でコーナーキックから2得点を決めたことも。守れるだけじゃない、セットプレー攻撃時にターゲットになることができる井上がとゴールネットを揺らして、シティライトスタジアムで喜ぶ姿を見たい。




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