【勝因】『ハーランドの衝撃』~第1節ウエストハムVSマンチェスターシティ~

試合結果

2022-2023 プレミアリーグ
第1節
ウエストハム(0-2)マンチェスターシティ
34分 アーリング・ハーランド
65分 アーリング・ハーランド

スタメン

この試合を選んだ理由

昨年のプレミアリーグ王者であるマンチェスターシティ(以下シティ)に加入したアーリング・ハーランドがどんなプレーを見せるのか、どのようにチームにフィットしているのか、どのような役割を与えられているのか。すごく気になったので選びました。

まえがき

遂にシティに本格派のストライカーが加入しました。彼の名はアーリング・ハーランド。22歳にして母国のノルウェー、オーストリア、ドイツのクラブを渡り歩き、184試合で138得点を決めている点取り屋です。

ハーランド加入前、シティには生粋のセンターフォワードはいませんでした。2020-21シーズンに退団したセルヒオ・アグエロはコンディション不良でシティ最終年のほとんどをベンチで過ごしていたため、最前線にはウイングを本職とするラヒーム・スターリング(現チェルシー)やフィル・フォーデン、インサイドハーフを主戦場とするケヴィン・デ・ブライネが起用されていたんです。彼らはクロスには飛び込んでいくものの、CBと駆け引きをしてゴールを狙うことはあまりしませんでした。中盤に下りてきてパスを引き出し、サイドに展開したり、スルーパスを出したり、いわゆる偽9番のような役割を担っていました。

偽9番システムでプレミアリーグを戴冠するも、チャンピオンズリーグではベスト4止まり。シティはしっかりと整備された質の高い攻撃で多くのチャンスを作り出しますが、それを仕上げるストライカーがいなかったんです。それで今回、念願だったストライカーとしてアーリング・ハーランドを獲得しました。

ハーランドの衝撃

ハーランドは衝撃的でした。

プレミアリーグの水に慣れるかどうか心配視もされていましたが、それは全くの杞憂に終わります。開幕節から2ゴールを決めてしまったのです。

彼195cm94kgの恵まれたフィジカルがあり、スピードもありますが、それに甘えていないんです。常にDFと駆け引きをして、ゴールを狙っています。

1点目は動き直しをしての得点でした。

34分、左斜めに下りてPA手前でジョアン・カンセロからの縦パスを引き出そうとします。しかし、カンセロとハーランドの間にイルカイ・ギュンドアンが入ってカンセロからのパスを受けました。ギュンドアンがパスを受けた瞬間に、ハーランドは反転。CBのジョンソンの背中側から走り出してスルーパスに抜け出しました。そして、飛び出してきたGKよりも先にボールに触り、PA内でGKに倒されて獲得したPKを自ら決めました。

2点目は動き出しの早さと質で決めたゴールでした。

65分、シティが自陣でビルドアップを開始しました。ボールはナタン・アケから左サイドのジャック・グリーリッシュに渡ります。背番号10は自陣に下がりながらボールをキープして、自陣中央のロドリにパス。このパスでウエストハムのプレスを回避し、ボールはピッチ中央でフリーのデ・ブライネにボールが渡ります。デ・ブライネがパスを受けて前を向いた瞬間、ハーランドはスタートを切ってCBの間から背後に抜け出しました。デ・ブライネからのスルーパスに抜け出してGKとの1対1を迎えると、冷静にゴール左スミに流し込みました。

得点シーン以外でもハーランドはDFと駆け引きをしていました。まずはDFの間に立ちます。シティが押し込んでいるとき、ほとんどは歩いています。そして味方が前を向いてパスが出せる態勢になった瞬間、一気にギアを上げてCBの背中側から抜け出すことを徹底していました。足がとても速いため、DFよりも遅くスタートを切っても抜け出すことができると思いますが、ハーランドは自分の身体能力に甘えることなく、得点を取るための準備を怠らないストライカーなんです。

得点を取るという仕事を全うしたハーランドですが、それだけが仕事ではありません。その他にも役割を与えられていました。的確なタイミングでインサイドハーフの間から中盤に下りて、縦パスを落とすポストプレーもスムーズです。ゴール前でのポストプレー、味方とのコンビネーションも安定していました。

シティが77%もボールを保持していたため、守備のタスクについてはそこまで見なかったので、強豪同士との対決でどのように守備に関わっていくのか楽しみです。

自分自身の身体能力に依存することなく、一級品のオフ・ザ・ボールの動きと高いフィニッシュ精度を誇るハーランドはプレミアリーグ初挑戦のシーズンで何点を取ってしまうのでしょうか。シティにはデ・ブライネをはじめ優秀なパサーがピッチの至る所にいるので、ハーランドの個性は存分に活かされると思います。30点くらい取って得点王になるんじゃないかと予感させるくらい、ハーランドは衝撃的な活躍を残しました。

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