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上場とともに第3創業期へ。どう“あるべき”かではなく、 どう“ありたい”かで決まった覚悟

2020/08に発行した新・社内報「BA MAG 2020」。そのコンテンツをnoteでもご紹介していきます。

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「BA MAG 2020」最後を締めくくるのは、共同創業者である中村・村上のインタビューです。ふたりにとって、9期の一年間はどんな年だったのでしょうか。上場翌日から始まった9期。一年間、どんなことに葛藤し、どう乗り越えてきたのでしょうか。ぜひご覧ください。

代表取締役ファウンダー
中村真広  / Masahiro Nakamura
思想を持った事業への共感と参加で社会を進化させていくために、ツクルバを共同創業。創業からデザイン、コミュニティ視点での会社経営を担当。今期から立ち位置を変更し、ツクルバを社会的なムーブメントにするため、長期・広範囲な目線での会社経営を行う。
代表取締役CEO
村上浩輝 / Hiroki Murakami
事業の拡大を通じて社会に貢献するために、ツクルバを共同創業。上場後に改めて自分のミッションを見つめ直し、変わらない思いで経営に携わる。今期は、会社運営における意思決定責任者、中~長期の投資意思決定責任者、maaと共にファウンダーズ2.0の実践をしていく。

強い事業体としてのツクルバになるために破壊、そして再構築の1年。それぞれが孤独だった

村上 8期最終日に上場した俺らにとって、9期はまるごと上場企業1年目として過ごした年だったわけだけど、相当濃くて、人生観が変わった1年だったな。というのも、より強い事業体としてのツクルバになるために、一度破壊して、再構築して……というプロセスを踏んだ1年だったんだよね。上場し“ここから第3創業期だ”と言ったものの、つぎはぎだらけで走ってきたから事業と組織の戦略にズレが生じていたし、これまでは阿吽の呼吸でみんなと感覚を共有できていたけど、組織の拡大とともにマネジメントが必要になって、組織を運営する上での課題も生じていた。強い事業体としてのツクルバを作るためには、今までに固執せずに、何を変えるべきか、変わるために変えないものは何かをきちんと見つめ直す必要があった。

思い返すと、9期前半は個人的に闇の中で。上場して社会の公器になったけど、中に目を向けると退職者が増加して組織は痛んでいるし、長期目線の打ち手を打つべきなのに、日々短期的な対応に追われていて。いろんなピースがはまっていない感じで、このままじゃまずいなと。目を向けたくないところとも向き合って、受け入れていかないといけない。でも、自分自身はどうしたいんだっけ?ともがいていた。

確信していたのは、このまま進んだらこの船は近い将来確実に沈むということ。とにかく何とかしたくて、「もしこのままツクルバが生まれ変われなかったら、自分は責任を取って辞める」といった趣旨の遺書みたいなメッセージを書いたりもした。まーくんにはクリエイティビティを発揮して自由にいて欲しかったし、自分だけで全責任を背負おうとして、ひとりで戦っている感覚。何もかもを抱え込みすぎていたんだよね。一個ずつ解体して再構築して走り出したっていうと綺麗な話だけど、実体はドロドロだった。

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中村 上場を目指すにあたって、それぞれのプレッシャーと戦っていたと思うんだけど、俺の場合、企業文化を守りぬかねばと使命感に駆られる一方で、ビジネス的な自己有用感は下がっていた。上場プロセスにおいて、証券会社や投資家とのフロントマンは浩輝、CFOの小池さん、COOの北原さんが担ってくれていたし、事業の現場からはすでに離れている。じゃあ自分はなんのバリューを出しているんだろうとモヤモヤしていた。

いざ上場し、色々な手元課題で会社全体が揺らいでいる中で、俺目線でできることはと考えていて。あの頃「ロゴリニューアルプロジェクト」や「御縁祭」等を矢継ぎ早に仕掛けかったのは、自分の葛藤や焦りからだったと思う。旧クレドのPhilosophy&Businessで言えば、上場プロセスの中でBusiness側に比重が寄ったからこそ、Philosophy側のアクションも仕掛けなきゃって。いつかみんなにツクルバを託して、自分がツクルバを去る時が来るはずだから、大切にしたい文化を上場の節目に改めて描いておきたくて。ロゴをリニューアルすることにしたのも、ぶっ壊して再構築する体験をこのタイミングで共有したかったんだよね。その視点自体はよかったと思うけど、やり方には焦りがあって上手くいかず、プロジェクトが頓挫しかけた。そんな中動き出した御縁祭は、誰にも理解されていない気がして。「浩輝、本当に企業文化のこと考えてる?」「数字を作ることももちろん大事だけど、企業文化に対しての眼差しを持っている経営メンバーっているのかな?」って。

経営だけじゃなく、メンバーとのコミュニケーションに関してもフラストレーションを抱えていたな。なんでこんなに、みんなでひとつのことをすることが難しくなっちゃったんだろう、なんで阿吽のグルーヴ感で伝わらないんだろうって。でも今思えば、俺だけじゃなくて、みんな孤独だったよね。

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村上 メンバーへの疑心暗鬼は確かにあったかもしれないね。一方的に愛情を押し付けていたけど、返ってこないなって。

中村 ふたりの振る舞いは変わってないけど、周りの環境が変わったんだよね。気付いたらメンバーは200人近くいて。でもその変化を全然自覚できていなかった。

村上 そうだね。俺らからすると、創業期から言っていることは変わっていないのに、受け取られ方が変わった。ふたり同じことを言ってるんだけど、表現が違うから言葉がひとり歩きしてしまって。

中村 そう。組織と事業、それぞれの理想と現実のギャップに悩んで、自己否定していたな。共同代表だからこそ混乱を引き起こしてるんじゃないかって。例えば、まーさんは「BEを解放しよう」と言っていて、浩輝さんは「コトに向かおう」と言っている。個々人の自己実現と、組織としての成果、大事にするべきはどっちなんですか?って。でも、みんなで実現したい壮大な絵を描く、それを実現していく道中で個々人が自己実現できるように会社としてサポートしていく、っていうのが俺らのメッセージなんだよね。両方大事。

この意図せずダブルスタンダードになっちゃっている問題には、経営合宿でも向き合ったよね。これまでは共同代表でよしなに意思決定してきたけど、最終的に誰が何の責任を持つのか不明瞭で、マネジメントの意識が薄かった。そして、そもそも経営チームも同じ価値観を共有しきれていなくて、経営メンバー同士、経営とシニアマネージャーが分断されてしまっていた。そこに社外取締役の高野さんが介入してくれて、ワークショップを開催してもらったり、マネジメントについての学びをもらったりして、みんなの覚悟が生まれていったんだよね。

高野さんに「今ツクルバで起きていることは、水平的にも垂直的にも組織が大きくなっていく中でのマネジメントの課題だよ」と言われて。安定的な社会関係を維持できる限界は150人で、それを越えることによる水平的課題、そして、組織が構造化していく中で意図せずヒエラルキーが生まれてしまう垂直的課題があると。モヤモヤとした状態からちゃんと課題が見えていく中で、これまでと同じ振る舞いをしていたらだめだと気が付いた。変わらなきゃいけないのはまず俺ら自身。成長したツクルバのフェーズに合わせたお作法が必要になっていたのにできていなかったんだよね。

でも俺としては、変わらず悶々とする日々が続いていて。高野さんにプロの管理職にならなきゃって言われて頭じゃ納得したんだけど、どうしても腹の底ではテンションが上がらなかった。振り返ってみると、俺は社会に対して事業で一石を投じていく「表現者」として、ツクルバを立ち上げた。経営者である前に表現者でありたいという願いに気付いちゃったんだよね。そのことを正直に高野さんに相談したら、まーくんらしいねって言ってもらって吹っ切れた。自分自身が100点でマネジメントできる人にならなきゃって思ってたけど、苦手なところはみんなを頼りながら、表現者としてツクルバをやってもいいんだって、肩の荷が下りた。それが年末年始のころだったかな。

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対話の中で見えた、ありたい自分
深く潜って、それぞれの覚悟を再発見する

村上 10-12月とか年末年始にかけては、お互いどうありたいのかずっと対話し続けていたね。

中村 生みの苦しみがあったね。色んな葛藤、気付き、自己変容……。辛い時期だったな。結局、自分で作り出した“あるべき”に縛られていたわけだけど、浩輝も経営チームのメンバーもみんなそうだったんじゃないかな。浩輝の場合は、投資家の矢面に立って言ったことはやらなきゃいけない焦りがあって。俺の場合は、自己有用感が下がっていたからこそ、今こそ企業文化に寄与するようなアクションを、と動いていた。でも、恐れや焦りからくる振る舞いって、うまくいかないんだよね。“あらねば”ではなく、どう“ありたい”かが大事だった。対話をしながら覚悟を決めていったね。

改めて、創業者として、ツクルバを自分の人生を超える大きなムーブメントにしたいと覚悟が決まったし、その中で自分自身は「表現者」として生き、ツクルバのすべてを通じて思想を表現していきたい。そして、これまでのCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー/チーフ・コミュニティ・オフィサー)という肩書きでは、その実現したいことをすべて表現できているとは思わなくなってきた。

なので今期からは「ファウンダー」という肩書きにして、領域を限定せず長期視点でツクルバというムーブメントを起こすことに集中すると決めた。

村上 結局ぐちゃぐちゃしながらも、大事だったのは自分たち自身の決意だったんだよね。上場後にしっかりとその決意ができたことは、冒頭の「相当濃くて、人生観が変わった1年」のハイライトかな。上場するまでは、実はシンプルで。なぜなら、ツクルバが金融機関から借りている億単位の借入は全部俺とまーくんの個人連帯保証がついているから、事業が失敗したら個人としても破産。構造的に辞めるとか立ち止まるとかはできないので、選択肢は“進む”の一択しかなかった。ある意味この状況はラクだったけど、上場したら、会社は創業者や社長のものではなく、名実共に社会の公器になる。創業者と会社は利害が相反しないように連帯保証とかもすべて外すことになるし、そもそも株主から自分たちが解任されることだってある。公器となったツクルバには、自分が関わることは決して必須事項ではないんだよね。

だから俺は、ツクルバの創業者として、経営者として、ひとりの人間として、男として、どう生きるかとにかく考えた。それで、俺の信念は、“事業の拡大を通じて、社会に貢献すること”だと改めて確認ができた社会への貢献度を最大化させたいから、スケールする、 社会の役に立つ事業をつくりたいし、今の課題を解決し、未来にとっての当たり前をつくりたい。そんな事業をつくることに関われたら、自分の人生の意義があると思っている。そして、事業は変わっても、継承されていく文化・思想を通じて、“人を遺したい”

ツクルバは、そんなスケーラブルな事業づくり×人を遺すことの両方ができると思っているんだよね。こんなに可能性があって、自分の人生の目標と合致しているのに、CEOをやらない理由はないなって。

これまでは“あるべき”から考えてしまっていたけど、“ありたい”から考えた時に意思決定がブレなくなった。新しいロゴもできて、「TSUKURUBA 3 VALUES」も固まって。そのおかげで、9期後半はコロナでバタバタしたけど、むしろ軸は全くブレなかった。覚悟してからは、経営の意思決定も気持ちよくできていると思うな。

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アイデンティティを確かめ、
みんなでつくる次のツクルバへ

村上 改めてツクルバのアイデンティティとして大切にしたいのは、“事業の拡大を通じて、社会に貢献する”ということ。これは創業から変わってないし、揺るがないな。あくまで事業をする集団=ツクルバであって、社会に貢献するような事業をつくっていくためには、個々人が強くなっていかなきゃいけない、プロフェッショナルでなきゃいけないと思っている。それに、ミッションである「『場の発明』を通じて欲しい未来をつくる」というのは、自分たちの手で未来を引き寄せるんだ!という圧倒的な当事者意識を表すものだと思っている。

中村 そう、DIY精神だよね。未来は予測するものでも、傍観するものでもなく、自分の手でつくっていくもの。俺は事業活動もひとつの表現になりうると思っているし、表現で思想が伝播することで社会を変えていけると思っているから、浩輝と同じく“事業の拡大を通じて、社会に貢献したい”と思っていて、それは創業から変わらないな。そして、時代に合わせてh owは変わっていくと思うけど、“人生を肯定する場の力を信じて、場をつくり続けて
いくこと
”はブレない。事業を通じて社会に貢献していくこと、場づくりをしていくこと、そのふたつはこれからも変わらないツクルバのアイデンティティだね。

村上 この1年、ふたりの覚悟が決まって、ツクルバとしてもブレない軸が見えてきた。新しい理念体系やロゴに込めた想いもしっかりと定義されたので、今後はそれに沿ってCEOとして意思決定をしていきたい。ミッションを胸にビジョンの実現に向けて、みんなで一歩ずつ着実に進んでいく。ロゴやバリュー、経営チームを見つめ直して、新しいツクルバになっていくのが、いちメンバーとしても楽しみだな。

中村 経営もチームになってきたし、各部署のシニアマネージャーを中心に事業が育っていくのも、マネージャーになり始めた若手メンバーがツクルバの中核を担っていくのも楽しみだね。いい意味で手放すことは手放してみんなを頼り、ファウンダーとして本当に自分がやるべきことに集中していく。ここから先は本当の意味で、みんなで“これから”をつくっていくことになるはずだから。

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「BA MAG 2020」一冊を通して、ツクルバのアイデンティティと向き合ってきました。

<イントロ>

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「アイデンティティって何だっけ?」

上場に向けて、企業としての「大人の階段」を登り、事業も組織もある程度大きくなってきました。

いざその節目を越えて、ふと立ち止まってみたとき、私たちの輪郭をもう一度描きなおす必要性を感じました。

目の前に広がるそれぞれの仕事と「『場の発明』を通じて欲しい未来をつくる」というミッションはどうつながるんだっけ?

私はツクルバのどんな価値観に共感して今ここにいるんだっけ?
そもそも、ツクルバのアイデンティティって何だっけ?

前に進むことに全力で向き合ってきたなかで、少しぼやけてしまった輪郭を描きなおしてきた1年でした。

ここで、ツクルバという「絵」を描けなくなった絵描きに登場してもらいましょう。
彼はこの冊子にあなたを誘うナビゲーターです。

うまく描けなくなっていた絵は、みんなと対話を重ねていくことでまた描けるようになっていきます。

ここにあるいくつかのエピソードを追いながら、この1年の物語を、あなたもぜひ追体験してください。

そして、最後に描ききった「絵」こそが、10期目を越えてつくっていきたいツクルバの新しい輪郭です。



<アウトロ>

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アイデンティティ、見つかった?

上場企業としてスタートした9期。
そこから1年を経て、10期目を迎える節目にこの冊子を皆さんにお届けすることになりました。

限りある紙面の中ですが、凝縮されたツクルバの1年を追体験していただけましたでしょうか?

この1年、これからも変わらないことを確かめ、そして、意志をもって変えていく未来に形を与えてきました。

「絵」をうまく描けなくなっていた絵描きは、みんなと対話を重ねていくことで再び「絵」を描くことができました。

ひとりだけが描ける特別なものではなく、それぞれが描ける私たちのものとして。
この版を使えば、誰もが「絵」を描くことができます。

この冊子で取り上げた新しいロゴ、新しい理念体系は対話の先に描きなおした、これからのツクルバの「絵」です。

私たちは、この「絵」を掲げて、やがて文化になる事業をつくり続けていきます。

「『場の発明』を通じて欲しい未来をつくる」ために。
10期目のツクルバも、よろしくお願いします。

また来年、BA MAGでお会いしましょう。

この一冊を通して、今のツクルバのアイデンティティ、感じていただけると幸いです💐

CREDIT

発行人・編集長:中村真広
編集:國保まなみ
デザインディレクター:柴田紘之
デザイン:柳原英司
撮影:幡手龍二、柴田紘之
ライター:平野翔子、酒井大作
Special Thanks:藤田大洋、小林杏子、駒崎琴美
...and to all tsukuruba members


▼「BA MAG 2020」転載記事はこちらからどうぞ。


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