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物理だけではない、「日常」という慣性の法則

「慣性の法則」というのは皆さん、知っていると思います。
物理の法則ですが、
物理が得意でない人でも恐らく名前くらいは知っているでしょうし、
なんとなくこんなことかな?くらいの認識はあるのではないでしょうか。

なぜなら、慣性の法則は相対性理論などとちがって
私たちが暮らしている日常生活の中の様々な場面で、
実際に感じることができるからでしょう。

例えば電車の中で、私はこんなシーンをよく目にします。
ある程度の年齢の女性である場合が多いのですが、
空いている座席をひとつだけ見つけ、そこに座ろうとして、
まず両サイドに座っている人の間に立ちます。

そのあと、背負っているリュックを降ろしたり、
着ている上着を脱いだりして、座れる準備をします。

私はなぜか、この人の正面辺りに座っていることが多く、
この段階くらいで「ちょっと危ないな」と感じ始めます。
この女性が椅子に座ろうとするタイミングと、
電車が発車するタイミングがだいたい一致しそうなことが
読めてくるからです。

そしてその女性が腰掛けようとした瞬間、
予想通り電車が動き出します。

最近は電車の長椅子の真ん中辺りにも棒があって、
掴まれる場合も増えたのですが、
運が悪いと、そのまま予定通り、隣の人の膝の上に
お尻をついてしまうことになります。

この絵、本当に何度観たことか。
これが「よくある慣性の法則実感の現場」ですね。

ちなみに私は自分がそのような状況になったときには、
電車が発車してしまうまで待ってから座ります。

慣性の法則というのは、
止まっている物は止まり続けようとし、
動いているもの(等速直線運動)は動き続けようとする性質です。

止まっている電車の中で立っている人は、
電車が走りだすときに後ろ方向に倒れそうになるし、
動いている電車の中で立っている人は、
電車が減速すると進行方向につんのめりそうになります。

これですね。

慣性の法則がとても面白いのは、
等速直線運動をしている物体の中(慣性系)では、
人は動いていることを感じないということです。

加速や減速をするとき、そして曲がるときにだけ
Gを感じるわけです。Gというのは重力ですよね。

地球って、1日に1回転、自転しています。
そして1年に1周、太陽の周りを公転しています。

自転している速度は日本の位置で時速1500キロメートル。
緯度によって周が変わるので、赤道がいちばん速くなりますね。
赤道では時速1700キロメートルです。

その速さで私たちは「実際に」回っています。
今、急に地球が自転をやめたら、我々は全員、吹っ飛ぶでしょう。

1年かけて太陽の周りを回る公転にいたっては、
時速11万キロメートルです。
地球自身の周は4万キロメートルで、直径は12800キロメートル。

なんとなく想像できますか?
比で言えば、
直径12センチの球が一時間で110センチ進む感じです。
しかしそのサイズが巨大ですから、
実際には1時間で地球を約3周する猛烈な速さで
私たちは実際に宇宙空間を飛んでいるのです。

しかしまったくそれは感じませんよね。
加速したり、減速したり、急激にカーブしたりしない限り、
私たちはGを感じることはありません。

慣性系という箱に入っている限り、
そしてその慣性系が加減速をしない限り、
私たちは感覚的には、
空間は静止しているようにしか感じられないからです。

しかし、ここが重要なのですが、
実際には我々は宇宙空間を時速11万キロで移動しているということです。
飛行機が一定速度で飛んでいるとき、
私たちは飛行機が飛んでいることを感じません。
でも実際は飛んでいます。

乱気流につっこめば振動を感じるし、
墜落すれば、実際に命を失ってしまう可能性が高い。
それは変えようのない厳然たる事実です。

この慣性の法則ですが、物理法則だけでなく、
私たちの日常そのものにも作用していると私は感じています。

それは「日常」という言葉そのもので表されます。
昨日と同じように今日が運営されていくと、私たちは動きを感じません。
でも、実際には動いています。

昨日と同じ今日は存在しません。
私たちは昨日より1日分、確実に年をとっています。
私たちの体の細胞のひとつひとつは昨日より確実に老化し、
あるものは死に、あるものは新しいものに置き換えられています。

私たちの地球は昨日より1日分、確実に資源を消費・分解し、
終わりの日に近づいています。
日常という慣性系の中にいると気づきませんが。

でも、その日常が加減速をするとき、
具体的に言えば震災や感染症などのアクシデントが起こって、
非日常の状態になったとき、私たちはいつもは感じていなかったけれど、
でも実際には存在していたGを感じるようになるわけですね。

そのGとは、「不安」です。「社会不安」ですね。

あるいはこんなこともあります。
私たちが今いる場所が等速運動をしているとき、
そこを「慣性系」というわけですが、
例えば私たちが所属するあらゆる組織も「慣性系」だと言えます。

それは企業のような大きなものもそうだし、
数人の友達グループもそうです。
それらが安定して運営されているとき、
私たちは動いていることを意識しませんが、実際は動いています。

そして人間関係の決裂で友達グループが不安定になったり、
会社の経営が怪しくなったりすると、
突然、Gを感じるようになるわけですね。

また、人の集団については、こんなことも言えます。
例えば企業がなんらかの不正をしてしまうとき、
そこにも慣性の法則が働いています。

その会社の中では当たり前のことも、
社会一般では不正である場合があるからですね。
あるいは、本当はいけないことかも知れないと思いながら、
その慣性系の中にいるためには、
急ブレーキを踏んではいけないという意識が働いて、
つい不正に手を染めてしまうということは、誰にだってありえます。

組織という箱がなかったらとてもできないような非道なことを、
人間は、組織という慣性系の中にいることによって
平気でできてしまったりします。

その最たるものが「軍」や「国」ですね。
ナチスドイツがホロコーストを実施したとき、
その現場にいた人々は恐らく、それほどの「悪」とは
感じていなかったのでは?と思います。

旧日本軍が大陸で残虐な行為をした、という話もあります。
殺された人数の問題を除けば、
多少は絶対にあったでしょう。
戦争とはそのようなことが起こる事象ですから。

人間から人間性を奪うのが戦争ですから、
残虐行為はあって当たり前なのです。
しかし、そのようなことが
「そのときは」おかしなことと思えないのも、
慣性系の中にいるからであって、慣性の法則です。

戦争では人殺しは肯定されます。
でも、慣性系の中にいるという井の中の蛙であることをやめ、
視座をその慣性系よりも上に移せば、
高い視座から己を見下ろす位置に立てば、

そこで何が起きているかを客観視できるはずです。

戦争は単なる人殺しであって、どんな理由があっても
やはり肯定されるべきではない事象です。
宇宙から地球を見下ろせば、必ずそう思えるはずです。

視座を慣性系の外に出さなければいけないのです。
イメージ湧くでしょうか?

私が最近、人間教育の初期の段階から、
そして人が生きている期間を通じてずっとすべき教育は、
宇宙論だと思っているのは、
人類の持続可能性を少しでも担保するには、
そのような領域まで視座を高めるしかないと思っているからです。

宇宙から見れば、お金をめぐる人間の争いも、
本質を見失った政治の争いも、
まったくナンセンス極まりないことだとわかるはずです。

そして、その視座を、読み書きと同じレベルで
この世に生きる全員が知っていれば、
人間社会の様子は圧倒的に変わっていくはずです。

そして何より重要なことは、
その視座から見た世界は空想やスピリチュアルや理想論ではなくて、
本当の現実なのだということです。

私たちは実際に時速11万キロでこの宇宙を漂う石の塊なのです。
それが変えようのない現実なのであって、
そのことを考えることなしに、
自分たちの現実を大局的に掴むことはできないのです。

重要なのは、自分がどのような慣性系の中にいるか、
ということを見つめ直すことです。

そして知らず知らずのうちに自分を覆っているその慣性系の箱を
取り外してみることです。
もちろん思考実験でいいのですが。

そうすると、自分たちが置かれている現実がちゃんと肌に伝わるはずです。
家の壁がすべて取り払われれば、
我々がどれくらい冷たい風に吹かれているのか、
地球という環境が本当はどういうものなのかがわかるでしょう。

慣性系の箱を取っ払うのです。
そして現実を見つめるのです。

あなたの体の中で、悪い病原菌が繁殖していたとしても、
病院で検査して、それを発見するまでは、
それは存在しないのと同じです。

でも、実際には存在しているのです。

それと同じで、今日1日だけなら、
目を逸らせばいくらでも逸らすことは可能な不都合な現実を
しっかり見つめる勇気が必要だと思うんですね。

私が地球環境の崩壊に危機意識を持つようになったのは、
今から20年ほど前です。

でも、そこから今に至るまでの間に何かが変わったか?というと、
状況はむしろ悪くなっただけで改善の兆しはありませんでした。

こういう私自身も文明社会を生き、
日々、エネルギーを使用しながら生きています。

お金という存在が諸悪の根源と知りながら、
貨幣経済の中で生きています。

しかし、その慣性系から、いつかは出なければいけません。
我々が作り上げた慣性系があまりにも巨大なので、
そこから出るというのはなかなか想像ができないし、
方法も今はわかりません。

けれど、そうしなければならないときは
必ずやってきます。

今、世界中で社会課題が噴出し、
全人類が先の見えないVUCAの時代を実感しているというのは、
実は今までの慣性系が速度を変え始めたからです。

今までは感じなかった「G」を、誰もが感じ始めたのです。
Gは、社会不安でしたよね。

新しい慣性系とは、持続可能社会以外に存在しえないでしょう。
そこにたどり着くには、まず我々大人の意識が、
自分の慣性系の外に出なければいけないのです。

宇宙の起源から、我々自身を捉え直しましょう。
これはスピリチュアルな話ではありません。
科学です。

我々自身が、物質からできていることは誰にも否定できません。
宇宙が誕生したときに生まれた物質が我々の体であり、
我々自身が宇宙の物質なのです。

一部ではあれ、我々が宇宙そのものなのです。

巨大な宇宙とミクロの素粒子。
その複眼を持てば、わかってくるはずです。

政治や経済やお金や権力、エゴ、嫉妬など、
人間の脳が生み出したすべての負のイメージこそが
実はスピリチュアルなものなのであって、

宇宙空間を時速11万キロという
猛烈なスピードで突進していることこそが、
私たちの本当の姿なのです。

しかもまったく音をたてずにです!

心の目で本当に想像してみてください。
直径12800キロの巨大な球体が、
音もたてずに時速11万キロで飛んでいる姿を。

それが、私たちです。

慣性系から外へでましょう。

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