ショア『Transparancies』を読む 第4回「アンディ・ウォーホルとコンセプチュアル・アート」

はじめに

 読者の皆様、こんにちは、tkjgraph(@tkjgraph)と申します。本noteでは、自身のアウトプットの機会として、また、同じく写真やアートについて知りたい/学びたい方との交流の機会として、写真やアートについて(短く、簡潔に!)書いていきます。
 最初のシリーズでは、スティーブン・ショア『Transparencies: Small Camera Works 1971-1979』(以下、『Transparancies』)を扱います。

前回の記事はこちらから!シリーズなので、順に読み進めていただけると!

Stephen Shoreとは?

アメリカ・ニューヨーク生まれ。幼少より写真を撮り始め、1971年にはメトロポリタン美術館で写真家として初の個展を開催。以降、ニューカラーの代表的旗手として活躍する。代表作に、『Uncommon Places』『American Surfaces』がある。

IMA「IMAPEDIA スティーブン・ショア」https://imaonlne.jp/imapedia/stephen-shore/、2023年3月6日アクセス

 第3回では、『Transparencies』でショアの写真に「フォーマリズム」という方向づけを与えた写真界の大御所、ジョン・シャーカフスキーについて学びました。第4回では、若き日のショアに大きな影響をもたらしたもう一人の人物、アンディ・ウォーホルとの出会いによってショアがどういった影響を受けたのかを学びます。

 なお、本記事では、アンディ・ウォーホルやポップ・アート、コンセプチュアル・アートの詳細までは触れません。紙幅の都合もありますし、まだ恐れ多いので..その点ご理解いただいた上で、お読みいただければ幸いです。

アンディ・ウォーホルからの影響

アンディ・ウォーホルって誰?

 アンディ・ウォーホル(1928-1987)は、アメリカの芸術家であり、「ポップ・アート」の代表的な作家として知られています。上記の展覧会(昨年、回顧展が京都で行われてました。)のビジュアルになっている、マリリン・モンローをモチーフとした作品もその一つ。

 ウォーホルは1960年代以降、ニューヨークに「ファクトリー」と呼ばれるアートスタジオを設けます。ファクトリーは、ウォーホルのアシスタントや作品の出演者、あるいはプロデュースするアーティスト、また交流のある著名人たちが一堂に会する場所でした。

 そしてショアも、ファクトリーの活動に魅了されたアーティスト(の卵)の一人だったのです。

17歳の頃、映像作家のジョナス・メカスを通してアンディ・ウォーホルに出会い、ファクトリーでの撮影に熱中しすぎるあまり、卒業数カ月前にして高校を中退。

レベッカ・ベンガル「写真の"超然"を求めて」『IMA』32号、アマナ、2020年
、75頁

 実は若かりし頃から注目の作家だったショア。14歳の時には、MoMAのディレクターであり、前回取りあげたシャーカフスキーの前任者、エドワード・スタイケンがショアのプリントを3枚購入しています。すごい…

ウォーホルから受けた影響

 2014年の対談でショアは、ファクトリーで初めてアートや「美的な思考」に触れた経験、そしてウォーホルが映画や絵画を制作する中で次々と下す「美的な決断」を間近に観察した経験が、ショア自身の「美的な思考」のベースにある、と語っています。

かつてウォーホルは、どの色を使うべきか?どの技術を取り入れるか?といった疑問を声に出しながら、周りにいる仲間と協力して作品を作っていた。

レベッカ・ベンガル「写真の"超然"を求めて」『IMA』32号、アマナ、2020年、75頁

 ファクトリーでの制作は、アシスタントなどファクトリーに集まる人々が共同し、コミュニケーションを取りながら行われていたようです。つまりそこでは、ショアがいう「美的な思考」「美的な決断」が、実践知としてショアに蓄積されていた、ということ。

 上記の対談の中でショアは、現代の文化を離れたところから観察し、それに(皮肉ではなく)喜びを見いだす、というウォーホルの思考に触れています。そして、その考え方が、後に自身がアメリカを写した作品の中で、文化に対する繋がり方、と言う形で表れた、と示唆します。

コンセプチュアル・アートから受けた影響

 上記の対談の中でショアは、ウォーホルに次ぐ自身にとっての重要な出会いとして、ウォーホルの展示を担当していたキュレーターから紹介された、エドワード・ルシェ『Every Building on the Sunset Strip』という作品を挙げています。

 ルシェの作品は「コンセプチュアル・アート」に属する作品としてしばしば語られます。コンセプチュアル・アートは、コンセプトやアイデアを中心としたアートであり、写真作品で言えば、描かれた内容や技巧の巧拙、メッセージではなく、写真というコンセプトまさにそのものを問い直すアートであったということ。

 ショアは対談で、この作品との出会いを通じて、ファクトリーで身につけた「美的な思考」と、ウォーホルの作品にみられる「連続的なイメージ」がどう写真と結びつくかを理解した、と話しています。

 そして完成したのが『Conceptual Sequences』という、1969年から70年にかけて制作された作品。この作品があって、以降の『American Surfaces』『Uncommon Places』、そして『Transparencies』があるわけで、その影響は決して見逃せません。

ショアの作品への影響

 ショアは、ウォーホルからの影響について、「美的な思考」などアーティストとしての姿勢については繰り返し言及する反面、モチーフや作品制作に関する直接的な作用についてはあまり語っていません。(少なくとも自分が把握している範囲では…) 

 とはいえ、ウォーホルの作品やコンセプチュアル・アートの思考法と、ショアの以降の作品に何らかの繋がりがあることもまた確か。この解釈もまた、作品を読み解く醍醐味かもしれませんね。

次回予告

 今回はここまで!次回は、『Transparencies』におけるショアの撮影のプロセスについて、ショア自身の言葉から読み解いていきます。

 質問や感想は、ぜひコメントで教えてください!「ここが面白かった!」「ここもっと説明して欲しい!」何でもOKです!
 ではでは、ごきげんようー

参考文献

  • C/O Berlin. 2014.  "Lecture . Stephen Shore with Melinda Crane." Accesed March 6, 2023. https://www.youtube.com/watch?v=87mtyO0fPdA

  • Stephen Shore, Transparencies: Small Camera Works 1971-1979, London; Mack, 2020

  • unobtainium photobooks, "Transparencies: Small Camera Works 1971-1979 by Stephen Shore." Accesed March 7, 2023. https://www.youtube.com/watch?v=VlSaWbm78FA

  • IMA「IMAPEDIA スティーブン・ショア」https://imaonlne.jp/imapedia/stephen-shore/、2023年3月6日アクセス

  • 『IMA』32号、アマナ、2020年

  • レベッカ・ベンガル「写真の"超然"を求めて」『IMA』32号、アマナ、2020年、73-79頁

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