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豊田章男氏の発言で考える2030年自動車電動化の話

先日、2030年のガソリン車問題に関して、トヨタ自動車社長でもあり、日本自動車工業会会長でもある、豊田章男氏の発言があった。その内容は大きく2つになっているようだった。

豊田章男氏のニュース

①電動化とEV化の区別をメディアに求める内容

②ヨーロッパと足並みを揃えたい発言に対し、ヨーロッパと日本の原子力や火力発電依存度の違いを示し、今の日本の電力事情に無理があり、大幅なエネルギー問題の方向転換が必要であるという内容

この内容を基に、車に興味がない人でも分かるようにまとめたいと思う。


まず、①電動化とEVの違いについて

電動化とEVは大きな違いがあります。自動車工業会の発言を見る限り、EVは、電動化の一部で、他にもPHEV、PHVといったハイブリッド車や、FCVなどの水素燃料車なども含まれます。

一般人が想像する電動化は、BEVと呼ばれる、バッテリー電動車もしくは、PHEVやPHVなどのハイブリッド車でしょう。ですからメディアが電動化=EV化と報道しても違和感を感じないわけです。

しかし、業界はFCEVと呼ばれる、水素・燃料電池車も含んでいます。

電動化=EV化としてしまうと、BEVのみの話をしているように感じてしまいます。「他のFCVや、PHEVの話はどうした?」となってしまう訳です。

例えば、国が、「これから麺類(電動化)にしたいなー」と独り言いってるところに、メディアが横やりを入れて、「ラーメン(EV)にしたいらしいっす!」といってるように思います。

他の、うどん・そば、冷麺、フォー、いろいろ麺類はあるのに、早合点された感じです。それに賛同した東京都は、「今すぐラーメン屋に行きましょう!」と言っている構図。

それに対して、自動車工業会がメディアに「他にも麺類なんていろいろあるだろ、何言っているんだ」、国に対しても「計画するのはいいが、まだ準備も何もできてないだろ、何言ってるんだ」と言ってるように思えます。


次に、②のエネルギー問題についてですが、コメントの一部を引用し、それについて、考えたいと思います。

先の、「準備も何もできてないだろ」の部分がここと紐づくことになります。

[コメント抜粋]販売される車をすべて純粋なEVに置き換えると夏のピーク時の電力需要が急増し、原子力発電所約10基分が新たに必要になるとの計算を示して、国のエネルギー政策で対応しなければ自動車メーカーの「ビジネスモデルが崩壊してしまう恐れがある」と述べた。

→2020年12月18日08:00時点の稼働状況は2基。2020年、夏の繁忙期でもおよそ10基かどうしていた様子。夏のピーク電力時に、今の倍近い電力が必要になるということだ。

※参考資料:http://www.genanshin.jp/db/fm/plantstatusN.php?x=d

その結果、以下のようなコメントとなる訳です。

[コメント抜粋]電力の89%を原子力発電や再生可能エネルギーで賄っているフランスなどと比べて日本は火力発電への依存度が大きく、政府の環境目標を達成するには、国のエネルギー政策の大幅な転換が必要との見方も示した。

→2019年日本の電力生産は、75%が火力発電となっています。2014年は0%だった原子力も、2019年には6.5%まで回復。資料のスクリーンショットは、以下の通り。

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※参考資料:https://www.isep.or.jp/archives/library/12541

結局、電動車の普及でカーボンフリーにするためには、大量生産が必須。その生産をするためには、大量の電力が必要(およそ原発10基分)。今の日本は火力発電がメインなのに、そんなに電気使ったら、火力発電で出るCO2で意味ないじゃん。というか、火力使っても電気が足りないから、もっと原発稼働させろよ、エネルギー問題を生産できるようにどうにかしろよ、という内容です。

何が言いたいかというと、「カーボンフリーするために電動車を普及させようとすると、今のまま大量生産しようとしても、電気は足らないし、作るときに大量のCO2が出るから、意味ないんじゃない?」ということです。

結論としては、「温室効果ガスの削減にはEVとHVやガソリン車をうまく組み合わせることを考える必要があるとし、50年までのカーボンニュートラル実現に向けての取り組みは進めるものの、それは「非常に難しい」との見方を示した。」となる訳だ。

以前のブログで、業界の反応は冷ややかであること、エネルギーに関心を持たなければいけないことをブログにしましたが、概ね予想通りの結果となっています。

個人的には、自動車ライターとして、流れを読み違えてなくてホッとしました・・・というのが正直な感想。

今後の見解としては、燃料電池に大きな期待がかかります。各所、FCVという水素・燃料電池のプロジェクトが多く稼働し、例えば神奈川県川崎市は、水素化を目指し都市計画も考えられ、トヨタ自動車以外にも、多くの企業がプロジェクトを持って参加しています。

参考資料:https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/suiso_nenryo_denchi_fukyu/pdf/006_07_00.pdf

個体電池もありますが、大型化が難しい個体電池には課題が残ります。リチウムイオンバッテリーは、電解液が入ってますが、それを無くし固形化させたものが個体電池の正体です。内部に硫黄を使用したり、他の物質にすることで5倍や7倍といった性能にすることもできるようです。

大型化が困難な理由は、数㎚の包み紙を外部に巻く必要があるためです。水が苦手で、少し水がかかるだけで発熱するリチウムには、直接水が触れないようにする必要があるからです。また、包み紙の厚みが大きくなると性能の低下が起こるため、極力薄くする必要があります。

その薄い紙で、大きなものを包むということは容易ではありませんし、組み立てにも細心の注意が必要で、アップルウォッチに内蔵されるような小型のものであれば実用化されていますが、電動車に利用されるような大型のものは量産されていないのが現状。

トヨタ自動車とパナソニックの合同出資の会社が、トヨタのEVやPHVの走行用バッテリーを生産していますが、2020年にデビューした「RAV4 PHV」に注文が集まった時に、バッテリーの生産が追い付かず受注を一時中止しました。

これだけ大きな企業同士が、共同出資して作っても追いつかないのに、他の自動車メーカーが、トヨタ同等に投資できているとも思えない状況で、コレですので他のメーカーが、電動車を生産することがトヨタや、中国市場なしには難しいでしょう。

緻密なコンピュータ制御がされる電動車では、レアメタル、半導体の問題もあり、中米の貿易問題も関わるため、日本単体でどうにかなるものでもない状況で、日本はどう立ち回るのでしょうか。

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