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【自動車ライターと読むニュース】トヨタがドリフト自動運転の動画を公開!

ライターの仕事の一環で、日々のニュースチェックは欠かせないものです。
そのなかでも、気になったニュースを見ていきます。

今回、気になったニュースはこの記事。
トヨタ、自動運転スープラがコースをドリフト滑走する動画を公開。非常時安全技術として開発中

冒頭の話

動画の冒頭で、「我々は、自動車のクラッシュを、極限状態で防ぐことができるか?」とポップアップされています。

その後の説明では、「極限状態で学ぶことが沢山ある」ということでナレーションが入り、「熟練したドライバーなら可能なことでも、多くのドライバーでは出来ないことがある」と言っています。

プロの運転手

そこで、「極限状態でも、クラッシュを避けるシステムを作ることにしました」という事です。

動画の冒頭を簡単に意訳すれば、こんな感じです。

ここで意識したいのは、スポーツドライビングの経験は、一般の走行にも役立つことがあると言われる所以です。

近年、ドライブレコーダーの普及で、交通事故のシーンを目にすることが増えました。
その事故例などをみていると分かるのですが、摩擦の低いアイスバーンや、圧接路、濡れた路面だけでなく、接触など、ちょっとしたことでも、車は簡単にスピンモードへ突入します。
特に、高速道路の100km/hを超える環境では、スピンモードも低速と比較して早く、適切な操作が出来ずに、まるでロデオのように車に振り回され、何もできずにクラッシュしてしまうシーンがよくあります。

車がスピン状態に突入しようとした時に、とっさに必要となるカウンターステアや、スピン状態を安全に止めるためのアクセルやブレーキの操作といった事は、一般走行しかしないドライバーでは、日本の教習所で教わることのない未体験ゾーンです。
これが、適切なタイミングでハンドル操作をし、適切なアクセルやブレーキの操作が行えるくらい、車両の動きを理解すればクリティカルなクラッシュを避けることができるということです。

これが、スポーツドライビングが一般道の走行でも役に立つと言われる所以の一端です。

0:36からの走行シーン

走行シーンでは、車の向き、フロントタイヤの向き、エンジンとタイヤの音に注目すると、どんな操作がされているかが想像できます。

音から分かるアクセル操作

①フオーン↑とエンジンサウンドが伸びる時は、アクセルを踏んで一定のスライドを発生するための姿勢制御している時
②フオーン↓とエンジンサウンドが落ちる時は、アクセルオフで一定のスライド状態から、減速や、向きを変えるなどの操作が入るためのスピードコントロール制御をしている時
③フオーン→とエンジンサウンドが一定の時は、ハーフアクセルでエンジン出力を安定させ、スライドの安定期になっている時

この操作は凄く特殊なように感じますが、一般道のカーブでの操作と比較すると、②で車速を落としてから、車を曲げ始め、③で旋回中の車速を保ち安定させ、①カーブの後の直線に備え車速を回復させるために加速するといった具合なので、実は、よくある運転操作と同じ目的で操作をしています。

音からわかるブレーキ操作

フオーン↓とエンジンサウンドが落ちながら、タイヤの音がする時は、サイドブレーキや、フットブレーキで減速、又は姿勢制御をしています。

ブレーキは通常の運転では、減速や停車を目的にして使用されます。
スライド状態でも、減速という同じ目的で使用されます。
しかしながら、スライド状態では、姿勢制御をするためにもブレーキが用いられます
分かりやすいのがサイドブレーキですが、車両のスライドする角度を微調整するのにも使われています。

車の向きとフロントタイヤの向き

ドリフトでもグリップでも、前輪はコースに沿った向きで、進みたい方向に向けるのが基本

ドリフトしている車両では、カウンターや、逆ハンなどと呼ばれ、左に行きたいのに右へハンドルを切るなどと言われます。
しかし、このイメージはドリフト走行の経験がある人からすれば、少し異なります

それは、ハンドル操作はフロントタイヤを行きたい方向に向けるために操作しているからです。その理由は明らかで、動画でフロントタイヤに注目することで分かります。

動画では、コースに沿って綺麗にドリフトしていく車両が映し出されますが、タイヤの向きは次に車が通る場所や、コースの路肩の曲線に沿った向きを向いています

実は、車体の向きがコースの内側を向くドリフト走行でも、スライドの発生しないグリップ走行でも、行きたい方向にタイヤを向けるために操作をするので、おおよそのフロントタイヤの向きは一緒になります。

例えば左カーブで、ドリフトで車体がカーブ内側をむいていると、行きたい方向は車体右側になり、行きたい方向は車体より右なので、ハンドルが右側へ向きます。
グリップ走行で車体がカーブ外側を向いていると、行きたい方向は車体左側となり、行きたい方向は車体より左なので、ハンドルが左側を向きます。
カーブの同じ位置でのフロントタイヤの向きを重ねると、概ね同じ方向になります。

ハンドルは、行きたい方向に操作するツールなのです。

1:30以降のエンジニアの話

この部分で特に注目したのは、ジョナサン氏のインタビューでした。
簡単にまとめると、「極限状態で熟練したドライバーは、タイヤがどの向きを向いているか、車の姿勢、向きを適宜判断して、車の稼働限界内で操作をしている」といった具合。
そして最後には、「これが成功すれば、将来的に本当にスムーズな運転になるだろう」と言っています。

まとめ

事故の削減に期待のかかる自動運転ですが、まだ開発は発展途上であることが分かります。それに自動運転は、街づくりから、住人の全てのトータルコーディネートが必要なものとなります。

例えば、東京オリンピックでの選手と接触した事故では、交差点近くに人が立っており、車両センサーが反応したもので、道路を横断する方向に加速度(動き)があることを検知すると、その物が停止する、もしくは検知しなくなるまで、車両は交差点内にしばらく停車してしまうケースも想定されます

接触事故は、安全確認が不十分だったとして、操作をしたオペレーターが責任を取るかたちとなりましたが、問題は多く残されている事例といえます。

トヨタ自動車が、ウーブンシティとして東富士に建設する町は、正にこの町から自動運転することを、実験するための施設といえます。

これから、自動運転の完成に向けて、どんな技術、ルール、アルゴリズムが生み出されていくのか注目すると、より面白くニュースが読めるのではないでしょうか。

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