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自殺志願者の週末

土曜日の朝、澄んだ空を窓越しに眺めながら珈琲を淹れる。
彼女のスカートに僕のスキニーが絡まって官能的な情緒をかすめる。
ベランダに出て鼻歌を歌う、小鳥のハミングが聴こえる。
隣の公園で咲いていた桜の木に子供の笑い声が絡まってる。
頓服を飲む。

日曜日の昼、仰向けの布団で部屋の常夜灯だけを見ている。
カーテンから漏れる陽光に顔をしかめながら布団に潜る。
夕方からのアルバイトに物想い、動悸した心臓が体を突き破る。
頓服を飲む。

金曜日の夜、部屋の隅に大きくなった埃を見つける。
ビニール袋で紐を作る。
彼女の腕の傷と僕の絞首痕が共鳴して、より一層胸を締め付ける。
頓服を飲む。
止まらない咳と止まらない咳。
頓服を飲む。
蜘蛛が一匹タンスの奥へ。
彼女の啜り泣く声。
頓服を飲む。
部屋は鍋の匂いが充満してる。
木造のアパートが軋む音がする。
薄い天井越しにコツコツとノックされる。
空になった頓服のシートを置いて目を閉じる。
降れ、こんな日には雨が相応しい。

土曜日の朝、スズメが鳴いていた。
窓を開けると、一週間前から干しっぱなしのスカートとスキニーが顔をしわくちゃにして怒っていた。
隣の公園を見ると、桜は散っていた。
頓服はもうなくて
コーヒー渋はこびりついて
鳴り続ける着信音に耳を塞いで
彼女の帰りを待つ。
頓服はもうないが
彼女の帰りを、待つ。
ただ待つ。
ただ、

待つ。

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