見出し画像

NOINが1年間で売上を10倍にした方法

1年間で10倍の売上(GMV)に成長

「コロナの影響はECにとっては追い風である」ということは一般的に言われていますがNOINにもコロナは大きく影響しました。ECで売上が300%とか400%という話はよく聞きますが、NOINでも流通額(GMV)が昨年2月比で今年の2月は9.6倍でした。これも売れすぎて物理的に在庫が倉庫からなくなってしまった影響もあるので、ちゃんと在庫用意できていればちゃんと10倍を達成できたはずです。絶対値は伏せますが、グラフにするときれいな右肩上がりです。(こういうグラフ大好きです)

スクリーンショット 2021-03-21 14.16.53

2月で売上が大きく伸びているというところに注目してほしいです。2月というのは小売では二八(ニッパチ)と言われる売上が大きく落ち込むタイミングです。そのタイミングで昨対で約10倍の実績がつくれたことは非常に意味があると思っています。本noteではこの1年間でNOINがECの売上(GMV)を伸ばすためにやってきたことを解説したいと思います。

二八(ニッパチ)とは

広告や小売ではよく言われる用語で2月、8月のことを指します。2月はクリスマスやお正月など出費がかさむタイミングのあとだったりするため、また8月はお盆があるためなど言われていますが、一般的に消費が落ち込むタイミングです。広告出稿も減るので相乗効果で売上は伸びにくいです。日本では3月が年度末なので広告予算消化が3月に行われたり、新商品は3−4月で発売したりと2月が伸びにくいのは明らかです。(わざわざ2月に新商品投入するところは少ないです)

ちなみにバレンタインデーは2月に消費をつくるという目的で仕掛けられたもので超うまくいったものです。

ECプラットフォームでいちばん重要なこと

NOINは化粧品のECプラットフォームです。私達のKGIはもちろん売上(≒GMV Gross Merchandise Value)です。タイトルでは一般の方にもわかりやすくということで売上と言ってますが正しくは流通額です。そのプラットフォームでどのくらいの購入が発生しているのかということです。メルカリや楽天も指標としてはGMVを使っています。売上とすると彼らの場合は手数料のことになるのでGMV比では10−20%程度になりますが、規模を測る指標としてはGMVが正しい指標だと思います。

では、売上を作るにあたって最も重要な指標は何でしょうか?プロダクトの使いやすさやデザイン性、イメージ、価格など様々要素はありますが、最も重要なのは商品ラインナップではないでしょうか。どれだけ使いやすくてイケてても「欲しい物がない」という体験は最悪です。「いいお店なんだけど欲しい物全然ないんだよね」というのでは何をどう頑張っても売れません。売れるためにはユーザー数(≒お客さんの数)は非常に重要ですが、それでも欲しい物がなければ誰がどれだけ来ようと売上は立ちません。

SKUを増やす

2020年私達が最も力をいれたのは商品ラインナップの拡充(≒SKUの拡大)でした。SKUというのはStock Keeping Unitの略で受発注や在庫管理を行う際の最小の管理単位です。例えばsöpöの例でいくとsöpöはマスカラ(5色)、アイライナー(5色)、アイブロウ(2色)で12SKUという数え方です。

「とにかく商品数を増やす」という目的のもと、SKUの拡大に注力したのが2020年でした。SKUの推移は下記です。

スクリーンショット 2021-03-21 15.23.22

順調に伸びているのがわかると思います。今、取り扱い可能な商品数は約19,000SKU(売れないものは置いても仕方ないので実際の販売SKUとは異なります)程度です。これがどのくらいの数なのかというとLOFTで扱っているのが大体5-6,000SKU程度です。

SKUの質(ブランド)

商品がただ増えればいいのかというと決してそんな単純なことではありません。商品にも質があります。コスメでいうとブランドの幅は非常に重要なポイントです。

スクリーンショット 2021-03-21 20.50.22

500を基準としているのでやや恣意的なグラフではありますが、ブランド数も大きく伸びています。現在の取り扱い可能ブランドは約850ブランドです。

韓国コスメの増加

NOINをよく知るユーザーにはNOINのイメージとして「韓国コスメに強い」というものがあるかもしれません。事実、私達は韓国コスメにかなり力をいれて開拓してきました。CEOの渡部や私がhinceに直接韓国まで会いに行ったり、カン・テリのCILYとも韓国で取り扱いについて交渉しました。メディヒールで有名なL&Kの本社にも行きました。(hinceの取り扱いはまだできていませんが、社長も日本に来たときに当社に来てくれました)

以前にも化粧品ECのハードルとして商品取り扱いの難しさについて述べましたが、対面販売やリアルの売り場での販売を重視する化粧品はECで取り扱いをするということにかなりの抵抗感があります。その中でSKUやブランド数を増やすのはとても大変でした。一方で韓国ブランドはECの重要さを理解してくれているという意味で日本におけるECにもかなり協力的です。

早期にブランド数やSKU拡大で武器になったのが韓国コスメでした。そしてトレンドを一番最初に取り入れているという意味でも韓国コスメはNOINのイメージを作ってくれました。いまでは韓国人のバイヤーを社員として抱え、更に新しい韓国コスメの開拓を進めています。

ちなみにシカ(ツボクサという植物の成分)系のスキンケアは修復作用が体感できて個人的にはオススメです。シカ系は韓国が多いです。

資生堂の参画

単純にブランドといってもとにかく増やせばいいというものではありません。魅力的なブランドに参画してもらうことが重要です。ブランド開拓をすすめるにあたり、私達がターゲットとしたのが資生堂でした。

言わずもがな、資生堂は日本でNo.1の化粧品会社です。資生堂に入ってもらえれば、他のメーカーが参画しない理由は極めて少なくなります。細かい交渉の話はここでは控えますが、2019年11月にKOSE、そして12月に資生堂ブランドの取り扱いをスタートできました。2020年3月にはオルビスと国内上位メーカーの取り扱いが続々とスタートし、それに伴って売上も伸びていきました。資生堂のインパクトは非常に大きく、特に国内ブランドの参画はかなりスムーズになりました。

デパコスの取り扱い

資生堂参画により、国内ブランドの拡大はかなり見えてきましたが押さえたいブランドは他にもあります。特に押さえたいのはデパコス(≒ハイブランド)です。デパコスはなぜデパコスというかというと、「デパートでしか販売されないコスメ」だからデパコスです。ラグジュアリーなイメージが非常に重要なためなかなかカンタンにアカウントは開いてもらえません。私達のような業界参入後発のプレイヤーには特にです。

2020年はデパコスの取り扱いに焦点を絞ったと言っても過言ではありません。

スクリーンショット 2021-03-21 22.57.17

ハイブランドのイメージも守れるようなハイクオリティなコンテンツも作っています

百貨店というパートナー

ハイブランドの取り扱いに際して、ブランドとの直接交渉を何度もしました。私たちの考え方や成長性に対して素晴らしい評価は頂けるものの、取り扱いという点になるとかなり難しいものがありました。理由は実績です。とはいえ、これまでの私たちからすると交渉のテーブルに立てるようになっただけでも大きな前進ではありますが。

実績がない者の評価はできない。これは当たり前ですが、「実績を作るためにどうするのか」これが私たちの最大のハードルでした。

「実績がないなら、実績があるパートナーと組めばいいのではないか?」

渡部と議論を重ねる中ででた一言です。デパコスの実績、デパート(=百貨店)との協業のアイデアです。

大丸松坂屋百貨店との協業

2020年最大のイベントは間違いなくコロナウィルスの蔓延です。これはある意味ではNOINを非常に苦しめ、一方では大きく前進させた要因でした。

2020年2月頃から様々な百貨店と話をし始めました。時間が進むにつれ、コロナは猛威をふるいはじめ、百貨店はフィジカルに閉店を余儀なくされてしまいます。店頭での販売に完全に依存していた百貨店は売上を立てる道を失ってしまいました。ECを始めることが絶対に必要なタイミングが予期せぬタイミングで来てしまったのかもしれません。

様々な百貨店と会話をする中、大丸松坂屋百貨店と4月に大枠の合意をし、猛烈なスピードで開発や交渉を重ね、2020年10月にcelvokeやJILLSTUART、ADDICTIONといった若年層に人気のハイブランドの取り扱いを開始する事ができました。百貨店のスピード感でいくとこのわずか半年でのスタートは半端じゃないスピードだと思います。

なぜ欲しいものが必ずあることが重要なのか(マーケティングの視点)

「行けば必ず欲しいものがあるところ」この体験があることは非常に重要です。そしてユーザーはこれに気づいていないことが多いです。しかしその逆はどうでしょうか?「期待していったのに欲しいものがなかった」はネガティブな記憶として定着します。

私はマーケティングは恋愛とかなり似ていると思っています。「好きになった理由は覚えていないけど、嫌いになった理由は忘れない」この一点に尽きます。一度嫌いになった人を再度好きになるにはかなりの時間と労力がかかります。

買い物の習慣化(ニコニコノイン)

「どこでモノを買うのか」これは習慣によるものが大きいです。そして習慣には想起の必要があります。「想起のタイミングの創出」これは私がノインに入ってからのテーマでした。

みんなが集まるタイミング、みんながNOINで買い物をしてよかったと言う(SNSで発信する)タイミングを作るにはどうしたらいいのか。必ず毎月同じタイミングでお得になったら習慣化するのではないか。来訪するインセンティブをユーザーに付与したら必ず来てくれるのでは?そして買い物もしてくれるのではないか。この仮説から生まれたのがニコニコノインです。

NOINでは毎月25日にポイント還元率が高くなるイベント、「ニコニコノイン」を開催しています。認知が広まるまでには時間がかかりますが、間違いなく習慣化させることができるのではないかと思ってスタートしました。

ちなみにネーミングも覚えやすいようにあえてこダサくしています。25日だからニコニコ。「笑顔になれる(≒いいことがあるはず)」ネーミングや見た目にあえてダサさをスパイス的に加えることは記憶に定着させるために非常に有効な手段です。語呂合わせで年号や単語を覚えられるのはこの効果のためです。ちなみに下ネタを混ぜるとより覚えやすいのですが、プロダクト的にそれはNGです。

アイデアの起源

ニコニコノインを思いついたきっかけは中国の独身の日(11月11日)です。毎年独身の日の売上は爆発的に伸びています。行動の習慣化が年単位で起きる。毎月のような短いスパンでも必ず同じことが起こせるのではないか?これがアイデアの起源でした。

画像4

2020年、今年の独身の日の結果はいかに?より抜粋

ニコニコノインの効果

予想通り効果は絶大でした。徐々にユーザーの間でニコニコノインは定着していき、売上が25日、26日に集中していき、その効果も高まっていきます。下のグラフは2020年8月から2021年2月のニコニコノインでの売上推移です。爆発的に伸びているのがわかりますね。

スクリーンショット 2021-03-21 22.28.14

2月はファミペイのキャンペーンも重なったことが大きな要因であることは否めませんがそれでも爆発的な効果です。施策がハマることはかなり気持ちいいです。

予想以上に爆発し、配送も完全にパンクしてしまってお客様に迷惑もかけてしまいました…。

これからのNOINでやること

ここまで説明してきたことはあくまでもマーケティングの手法を用いた小手先のテクニックで伸ばしたに過ぎないと私は思っています。本質的な改善はこの先にあります。

化粧品購入に最適化したUI/UX、個人に合わせてパーソナライズしたリコメンド、検索機能の充実、最適なタイミングで提案するためのCRM、店頭接客に負けないeカウンセリングの仕組み構築などなど、ここから更に伸びるための要素は山のようにあります。

商品がある程度揃い(まだまだではありますが)、想起のタイミングも作れたこれからやることはプロダクトを磨き上げることに尽きます。売上が更に伸びればデータにも更に意味が増します。ボリュームが増えれば増えるほどデータの価値はエクスポネンシャルに増大します。

採用強化中

1年後、2年後に更におもしろい結果を出すためにもノインに参画してくれる優秀なメンバーを絶賛募集中です。原宿で僕と握手!


サポートいただいた場合とくに収入とするよりは書籍購入やセミナー参加等してその内容をまとめるなどの方法で還元予定です。