共働き両親のロールモデル
先日、人事メンバー数名で集まってダイバーシティをテーマにディスカッションを行った。
女性、外国人、LGBTからキャリア入社、若手社員まで様々な立場を切り口に議論が行われた。
若手社員をダイバーシティの議論の対象とするのは若干おかしい気もするが、私が勤めている会社は昔ながらの日系大企業で、社員の高齢化が著しい。全社の平均年齢は40代を超えており、私が人事を担当している事業部では45歳以上の従業員比率が6割を占める。社内の事業部によっては平均年齢が50代のところもある。ウチの会社に限って言えば、若手社員であっても十分マイノリティになりうるのだ。
議論に入ったメンバーの中には、女性、中でも仕事と育児の両立が求められる現役のワーキングマザーが何名かいたことも影響し、子育てしながら働く女性のキャリアを中心に意見が交わされた。
そこで出た女性のキャリアについての主な意見は以下の通りである
・育児休業が昇進や評価等に響き、キャリアにおいてマイナスとなってしまう
・管理職クラスの働き方を見る限り、両親などの支援してくれる存在がなければワーキングマザーの昇進は難しいと感じる
・キャリアを構築していく上でのロールモデルがいない
※子育てをしながら課長クラスの管理職や実務担当者のエースとして活躍する身近なロールモデルがいない
・出世していく女性は独身者あるいは子どもがいない人が多い
女性のキャリアについてのディスカッション内容を下記をまとめると、
1.育児休業によってキャリアが一度ストップしてしまう
2.ワーキングマザーとしてキャリアを構築していく上でのロールモデルが身近にいない
といったところだろうか。
個人的には、上記の問題を女性個人のみに限定して考えるのではなく、男性自身も自分ごととして考えていく必要があると思っている。
何故なら、当然の話ではあるが、育児は女性だけの問題ではないからだ。男性も積極的にコミットしていく必要がある。
とはいえ、男性の育休取得率はまだまだ低いのが現状だ。
厚労省の「平成29年度雇用均等基本調査」によると、平成29年の男性の育児休業取得率は5.14%で、女性の83.2%に比べると著しく低い数値に留まっている。
(出典:内閣府「共同参画 2018年6月号」)
特に、私の勤務先では男性の育児休業取得率は1%を下回っている。つまり、男性社員が100人いて育休を取るのは1人いるかいないか、ということになる。
自分の周りの男性を見渡しても育休を取る人を見たことがない。
ディスカッションの中でも
・男性の育児に参加しないため、多様な働き方への理解が深まらない
という男性が育児に参加しないことに対して批判的な意見も出ている。
一方で、共働き家庭の数は一貫して増え続けている。
内閣府男女共同参画局によると、日本の共働き世帯数は1997年に専業主婦世帯の数を上回った。それから20年後の2017年には専業主婦世帯数641万世帯に対して、共働き世帯数1118万世帯と、2倍近くもの開きが生まれている。
(出典:内閣府「男女共同参画白書 平成30年度版」)
つまり、現在の日本では専業主婦よりも共働きの方がマジョリティなのである。
それにも関わらず、男性が育児に参加しないのはなぜだろうか?
三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成29年度仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査」によると、育児休業を利用したかったが利用できなかった人の割合は35%を超える。
(出典:内閣府「共同参画 2018年6月号」)
個人差はあるが、決して全ての男性が育休に消極的な訳ではないのである。
同調査では、男性が育児休業を取得しなかった理由も取り上げられており、そもそも育児休業がない、あるいは手続きを理解していない等の理由を除くと、「業務が繁忙で職場の人手が不足していた」「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった」の2つが上位の理由にくる。
(出典:内閣府「共同参画 2018年6月号」)
「育児休業が取得しづらい雰囲気」については、女性よりも男性が強く感じているところだと思う。
上司や同僚といった社内にいる男性のほとんどが子育てをした経験がなく、中には単身赴任中で何ヶ月も家族の顔を見ることができていない人もいるかもしれない。そんな環境では「育休を取りたい」とは言い出しにくいだろう。
とはいえ、同調査では男性が育休を取ることによる意識の変化についても取り上げている。
比率の高い順から並べると下記の通りとなる。
・「育児への意欲が高まった」(40.0%)で
・「早く家に帰ることを意識するようになった」(34.5%)
・「家事への抵抗感がなくなった」(20.1%)
・「仕事の効率化を考えるようになった」(19.0%)
(出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成29年度仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査」
(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000174275_2.pdf))
上記を踏まえると、育休を取ることは男性の子育てや働き方への考え方の変化に大きく影響を与えていることがわかる。
一歩を踏み出す個人を増やすことは簡単ではない。しかし、一歩踏み出すことで個人の考え方は着実に変わっていく。
男性が育休を取ることが当たり前になれば、
「育休は女性が取るものだ」から「育児は夫婦2人で一緒に考えていくものだ」という価値観へアップデートされ、働き方も自ずと変わっていくだろう。
これから必要になってくるのは、働く母親のロールモデルというよりも、共働きの2人の両親のロールモデルなのかもしれない。
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