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動物の脳から発想を得た低エネルギー高速稼働の自律型AIドローンを開発 オランダ デルフト工科大学

オランダのデルフト工科大学(TU Delft)の研究チームは、動物の脳の働きにインスパイアされた新しいAI技術を搭載した自律飛行ドローンを開発しました。このドローンは、従来のGPU(グラフィックス処理装置)を使用する深層ニューラルネットワークよりも、はるかに低エネルギーで高速な処理を実現しています。この技術の詳細は、2024年5月15日に発表されたScience Robotics誌に掲載されました。

動物の脳は、現在のAI技術に比べて非常に少ないエネルギーで情報を処理します。生物学的ニューロンは非同期で情報を処理し、「スパイク」と呼ばれる電気的パルスを介して通信します。このスパイクを送信するエネルギーを最小限に抑えることで、効率的な情報処理が可能となります。

デルフト工科大学の研究チームは、この動物の脳の特性を模倣した「スパイキングニューラルネットワーク(SNN)」を開発しました。SNNは、従来の深層ニューラルネットワークに比べて計算が単純で、整数の加算のみを行うため、エネルギー効率が非常に高くなります。このネットワークを支えるのが、Intelの「Loihi」というニューロモーフィックプロセッサーです。

研究チームは、ニューロモーフィックプロセッサーとニューロモーフィックカメラを搭載したドローンを開発しました。このカメラは、各ピクセルが明るさの変化に応じて信号を送信し、動きの検出を非常に高速かつエネルギー効率よく行います。SNNはこれらの信号をリアルタイムで処理し、ドローンの飛行制御に反映します。

この新しい技術により、ドローンは異なる速度での飛行や、明暗の変化に対応した飛行が可能です。例えば、ちらつく光の中でも安定して飛行できるため、従来の技術では難しかった環境での運用が期待されます。

デルフト工科大学の研究によれば、SNNを搭載したドローンの処理速度は、従来の小型GPUを使用する場合に比べて最大64倍高速であり、エネルギー消費も3分の1に抑えられています。Loihiプロセッサーは、ネットワーク動作時にわずか7ミリワットの電力しか消費しません。一方、同等のネットワークをGPUで実行すると、3ワットの電力を消費します。このため、ニューロモーフィック技術は小型自律ロボットの実現に大きく貢献する可能性があります。

デルフト工科大学のGuido de Croon教授は、「ニューロモーフィックAIは、すべての自律ロボットをより賢くするだけでなく、小型自律ロボットにとってはゲームチェンジャーとなる」と述べています。同大学の航空宇宙工学部では、この技術を利用して、温室内の作物の監視や倉庫内の在庫管理など、さまざまな用途に対応できる小型ドローンの開発を進めています。

これらのドローンは、安全性が高く、狭い空間でも効率よく飛行できるため、トマトの植え付けの間やガス漏れの検知など、多岐にわたる用途が期待されます。今後、ニューロモーフィックハードウェアのさらなる小型化と機能の拡張により、より複雑なタスクにも対応できるようになるでしょう。

詳細内容は、デルフト工科大学が提供する元記事を参照してください。

【引用元】

https://www.science.org/doi/10.1126/scirobotics.adi0591

【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7

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