キラキラ共和国

優しい幸せな国でありますように/キラキラ共和国

『ツバキ文具店」を読んで、鎌倉っていいな、手紙っていいなと思って気に入って何度も読んだ。その続きの物語が今回読んだ『キラキラ共和国』(小川糸:幻冬社)

前作よりも主人公の鳩子が地に足がついたような印象を受ける。

例えば、前だったら仕事をしたら近くのお店にご飯を食べに行っていたこと。

それがそのときにある食材や、旬のものを使って簡単にでも料理をするようになった。小さな変化かもしれないけど、鳩子の生活が変わってゆくことを一緒に楽しませてもらえて嬉しい。

なんかそういうのっていいな、と思った。環境が変わって、大きく変わったこと、少しずつ変わってゆくこと、変わらずあるもの。

それが前作から一つずつ丁寧に描かれていて、一緒に見守ることができて、鳩子の戸惑いや喜びがきちんと伝わってくる。

鳩子が抱える「お母さん」としての悩みも、ミツローさんが抱える前の奥さんとの悩みも、みんなみんなまとめて幸せになってほしいと願ってしまう。

穏やかで優しい、あたたかいストーリー。だからといって、登場人物が抱えている悩みは軽いものではないところが、惹きこまれてしまう理由なのかもしれない。

代書のお仕事も、視覚障害者の男の子と一緒に手紙を書いたり、亡くなった主人からの詫び状がほしいと頼まれたり、ひとり代書合戦をしたり…クセの強い依頼は変わらず、前回同様にこんなにも紙や筆記具、文字にバリエーションがあるのかと文房具界に無知なわたしは毎話わくわくしてしまう。

こんなに手書き文字を続けてみることもないので、人それぞれの性格や生き様まで垣間見える手書き文字っていいなあと改めて思う。

母譲りの丸文字が嫌でさらさらとしたきれいな文字を書く人にずっと憧れていたけど、このままでも私らしいのかもしれないとちょっぴりだけ誇らしくもなってしまった。字が遺伝するのかどうかはわからないけど。

あ、でも鳩子みたいにいろんな書体のバリエーションがつけられたらいちばん素敵。

ずっと続きが読みたいと思っていた作品だったし、期待通りに楽しませてくれて大満足でした。ただ、タイトルに『ツバキ文具店』の文字がないので、うっかりこの本から読み始めてしまうとついていけない部分が多くあるかも。

『ツバキ文具店』を読んでから、楽しんでもらいたい一冊。


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