大人になんかなりたくない/ピーター・パン
ちゃんと見たのはいつが最後だったかもう覚えていないけど、なんて夢のある話なんだろうとわくわくしたことは覚えている。
夜中に突然大人にならない少年とキラキラ光るきれいな妖精が訪れて、そのまま夢の島に空を飛んで連れて行ってくれる。
インディアンと一緒に踊ったり、ご飯を食べたり、みんなで毎日おしゃべりして、海賊はちょっとこわいけど、ひたすらに楽しそう。
最後は危ない目にも逢うけど、必ずピーターパンが助けてくれる。
……だなんて思っていました。
大筋はあってるかもしれないけど、でも原作のピーターパンはわたしの記憶の中にいる彼よりも5倍くらいめちゃくちゃで刺激的な存在だった。
【あらすじ】
けっして大人になりたがらない永遠の少年―ピーター・パン。ウェンディーとジョンとマイケルのきょうだいは、ピーター・パンと妖精ティンカー・ベルに導かれて、星のかがやく夜空へ飛びだし、おとぎの国へと向かいます。(Amazonより)
このおとぎの国には迷子の男の子たちと妖精とけものたちとインディアンと海賊たちがいて、ピーターがいないとみんなだらだらと生きている不思議な場所。
迷子の男の子たちはいつもピーターを探していて、海賊たちは迷子の男の子たちを探し、インディアンたちは海賊を探し、けものたちはインディアンを探し、島の中をみんなでぐるぐると回っている仕組みになっています。
頂点にいるのはピーターパン。大人が嫌いで、やんちゃで魅力溢れる存在なのだけど、決して成長のしないこの男の子はしょっちゅう物事を忘れてしまうし、とびきり飽きっぽくて、それゆえにこわさを持っているところがこの物語のなかで何度もなんども出てきます。
ウェンディーたちをネバーランドに連れていくときですら、存在を忘れてしまうし、殺した相手のこと、昨日のこと、過ぎてゆくこと全てを忘れていくので思い出や学びというものが彼には存在しないのです。
人やけものを殺すこともなんとも思わないし、気に入らないことがあるとすぐにため息をわざとつく(ピーターパンがため息をすると、現実世界で大人が1人死ぬと言われているので)。
優しくて、かっこよいヒーロー的な存在だと思っていたら、なかなかとんでもないなと読みながら自分のピーター像が何度も変わっていくのを感じました。
さらに、ウェンディーたちがいなくなったあとの家の様子、迷子の男の子たちがなぜいるのか、フック船長やピーターの過去や、人魚や妖精の性質がけっこう細かに描かれていてとてもリアル。
もちろんファタンジーではあるのだと理解していながらも、妙に生々しく、こういうことってもしかしたら実際にあるのかもしれないと想像してしまうことがとてもたやすくて。
とにかくはちゃめちゃなピーターだけど、読み進めていくうちにだんだん親が湧くようになってきて。だからこそ最後、ウェンディーが家に戻ったあとの数ページはちょっと切なくなってしまいました。
ディスニーだけの印象でこの物語を知ったつもりでいるのは大きな間違いだったなと深く感じました。
大人になんかなりたくない、と思い続けて、本当に子供のままでいられるようになってしまったピーターは本当に幸せなんだろうか。
時間をとってゆっくりじっくり考えてみたいと思います。
もっともっと新しい世界を知るために本を買いたいなあと思ってます。