まほうつかいたちの料理帳

毒リンゴを作るには稲光を起こしてから/魔法使いたちの料理帳

実際に作るかどうかは別として、けっこうレシピ本がすきなタイプだと思う。

レシピ本に対して、すきなタイプ嫌いなタイプがあるのかはちょっとわからないけど、どこにでもある食材で新しい体験ができたり、組み合わせによってぜんぜん知らない名前がついていることが面白くて、なんとなく本屋さんで立ち読みしては「ふんふん」とためになった顔をよくしている。

食べ物小説やエッセイもだいすきなので、わたしのキッチンには食べ物本コーナーもあるくらいで、煮込んだり、レンジが鳴るのを待ってるときはぱらぱら開いて、物語に出てくる料理を想像して楽しんでいる。

そんな物語にでてくる料理だいすきなわたしを狙い撃ちしたかのような本を最近見つけてしまいました…!

それが『魔法使いたちの料理帳』(オーレリア・ボーポミエ:原書房)というレシピ本。

【第1章】魔法使いの家庭料理
【第2章】魔法使いのパーティ料理
【第3章】魔法のスイーツ
【第4章】魔法薬

全4章からなるこのレシピ本は、魔法使いたちが実際に作っていたであろう料理をあらゆる角度から調べあげ、レシピにしたもの。

おなじみ『ハリー・ポッター』を始め、『指輪物語』『アラジンと魔法のランプ』『メアリー・ポピンズ』と言った名作から映画化されているものはもちろん、ドラマ『奥さまは魔女』に児童小説『バーティミアス』『魔女がいっぱい』に、ゲームの『ゼルダの伝説』まで!

ラインナップを見ただけでも満足できちゃうのだけど、この本の面白いところはそれだけじゃなくて実際のレシピ手順の部分をじっくり読んでほしいのです。

例えば、『ハリー・ポッター』に出てくる「ステーキ&キドニーのプチトゥルト」のページ。

1)牛の腎臓の表面の薄い皮を「むけよ」の呪文を使ってむく〜
(略)
3)マッシュルームに毒キノコが混ざっていないか(そして誰も食べた者がいないか)を確認し、〜

こんなユーモアあるレシピ初めて見た!!!!!ってむっちゃくちゃ興奮しました。

『奥さまは魔女』の「エンドラのカナッペ」は最初から

1)もしあなたの家に魔法使いがいれば、あなたは何もする必要がない。鼻をピクピク動かすだけで全部やってもらえるのだから。
2)もし魔法使いがいなければ、しかたがないから自分でやろう。パイナップルを缶から出してシロップを切る。

手順なのに、読み物としてすごく面白い。ついつい全部読んでしまうのです。

個人的にお気に入りなのは、『白雪姫と7人の小人』の「毒リンゴ」の最初の手順。

1)秘密の実験室に入り、手元を明るくするために稲光を起こし、魔法の鏡に「鏡よ鏡、魔法の毒リンゴのつくり方を教えておくれ」と呼びかける。

最初のハードルが高すぎる。

『ゼルダの伝説』の「緑のポーション」も同じくだ。

1)オクタロックには知られていないが、妖精はその存在を知っているという、ハイラルの秘密の洞窟に入る。滝壺から空き瓶で水に汲み、鍋に注ぐ。

全てのレシピが物語に沿った内容で作られているから、すきな作品を見つけてはにやにやして、また探してにやにやしての繰り返しでずっとひたすらに楽しい。

もちろん、レシピに添えられている写真もどれも世界観を体現したものばかりで、実際にこういうものを食べていたのかななんて想像も捗る。

実際に作るにしてもそこまで難しくはなさそうなので、手順のユーモアに惑わされずに挑戦してみたいものをいくつかあった。ただ、どうしても外国の料理がほとんどになるので、材料だけうまく置き換えられたらいいかも。

ファンタジー好きにも、魔法好きにも、料理好きにもおすすめな一冊。見つけたらぜひ、読んでみてほしいです。




もっともっと新しい世界を知るために本を買いたいなあと思ってます。