寛大さん、「探究学習」ってなんですか?vol.6 探究の成否はテーマの「自分ごと化」で決まる
ー寛大さん、こんにちは。今回は、探究学習ブログラムの中で対話を通じて問いを深めていくプロセスについて詳しく聞いていきたいと思います。
前回までのお話で、探究学習を成功させるにはそもそものテーマ設定が大事という話がありましたよね。学ぶ人自身が自分ごと化できるかどうかが重要、と。
テーマが自分ごと化されるまで問い続ける
中村寛大(以下中村):そうそう。諦められない、やらずにいられないもの以外、推進力がないですからね。自分ごと化されていないテーマは、結局、やらなくなってくるんですよ。
ーやらなくなっちゃう。
中村:うん。やらないから、探究の時間でいろいろやってみても、結果的にアウトプットの質が上がらない。解き明かしたいとか、なんとかしたいとか、熱量がないと。
ー熱量が持てるテーマを見つけられない時ってどうするんですか?
中村:以前にも話したけど、根っこのところから問い直しますね。
「自分が素晴らしいと思うポイントは何?」
「何のためにこのテーマを調べてる?」
「次に繋がっていくイメージがもてる?」
みたいなかんじで。
ーそれ、大人でも結構難しいかも。言葉に詰まっちゃう子とかいませんか。
中村:「とりあえずやりました」みたいな子はいますね、やっぱり。やる意義があんまり見えてなくて、作業はやってみたけど……という。
ーそういう時はどうするんですか?
中村:また問い直します。
「とりあえずやってどうだった?」
「次は何する?」
「もっとやりたいと思った?やりたくないと思った?」って。
そこから、
「やりたくなかったんだ、じゃ、このテーマはやめちゃおう!」
「こうじゃなかったんだね。このテーマではないということがわかったんだね、よかったね!」
というかんじで、次につなげていきます。
生徒一人一人と向き合い、「これがしたい!」を引き出す
ー徹底的な自分ごと化ですね。そこから1年間、授業はどんなかんじで進んでいくのでしょうか?
中村:まず(チームごとの)ビジョンを確認します。
たとえば、「地域の特産品の〇〇を世界に発信する」がテーマだとしたら、ゴールから逆算して大まかな計画を作ります。
今月何をするかを決めて、今日のToDoに落とし込み、実行します。
これをどんどん回していく。企業のプロジェクトと、基本的な進め方は同じです。
ポイントとしては、授業以外の時間にもフォローをすることでしょうか。
これ、ある学校で使っているSlackなんですが、生徒さんが60人入っていて、個別で全員とやりとりしてる。
授業が終わったらコメントを送ります。
「すげえいいなと思ったよ!」
「どんどん良くなってるね」
とか。
ただ褒めるだけじゃなく、具体的なアドバイスもしますよ。
その子のテーマに繋がりそうな論文や資料を紹介したり、タイモブのネットワーク内でその分野の専門家がいればその人につなげたりとか。
ーこれ、60人全員にやってるんですか。
中村:やってます。毎回全員に連絡することは難しいんですけど、必ず数名、ピックアップして連絡するようにしています。
生徒さんからは喜ばれていますね。親や先生以外の社会人と本気で、対等な目線で意見交換をする機会って、中高生だとあまりないと思うんです。大人の意見を聞くことで広がる世界もあるし、そもそも諦めていたことができるとわかることもある。
ー生徒さんたちにとっては魔法のランプみたいですね。
中村:疑問や気づきを投稿するとそこにアイディアやフィードバックがすぐにかえってくる。どちらかというと高性能なチャットボットみたいかもしれない、ある意味(笑)。
「そんなことできるの?!」のみたいなサプライズに挑戦していくのが探究学習を楽しむためのポイントでもあると思っています。
生徒さんたちが無意識に持っている「できない理由」を潰していって、やるかやらないかはあなたが決めていいよ、と。
なんとなく「こうなったらいいな」というのが見えていても、最初から諦めている子はすごく多いんです。
このテーマなら「この人に会ってみよう、話聞いてみよう」。そして実際に動いてみて、それが実現したとしても、うまくいかなかったとしても、そこから何かしら発見は生まれます。
その繰り返しの中で自然に「こうしたい」というのが出てくるようになるんです。そこまで引っ張りあげるのが僕たちの役割だと思っています。
ーその子が本当にやりたいことが見えてくるんですね。
中村:印象に残っているのは、長野県のある中学校で担当した探究学習のプログラム。その子はなかなかテーマが決まらなくて、結構ずっとふわふわしてたんです。いろんなプロジェクトに参加してみても、なんとなくしっくりきてない様子が伝わってきた。
それで、「本当にやりたいこと、してみたいことってなんだろう?」と聞いていったら、「博物館が好きなんです」と予想外の回答がかえってきたんです。
よくよく聞いてみると、彼女のお父様は考古学博士。幼い頃から地元の博物館によく足を運んでいて、縄文土器に興味がある、と。実は長野は、縄文土器が発掘された場所として有名なんです。
そこから一気に広がりましたね。長野の魅力として、国宝に指定された二つの土偶「縄文のビーナスと仮面の女神」を発信したい、というビジョンが完成し、プロジェクトを進める中で彼女は尖石考古館の山科哲(やましな・あきら)さんに、自分で手紙を書いて送ったんです。そうしたらまた、嬉しいことに返事が来て。まだ年齢が若いからすぐに参加できるプロジェクトはないけど、応援してるしいつか一緒に何かを手掛けよう、と。課題図書まで提案してもらってね。
「この本、もう家にあるので読んでみます!」
って張り切っていました。こういうブレイクスルーがいろんなところで起きているのが嬉しいですね。
ーありがとうございました!
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