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呻吟

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自分の思想が滲み出たフィクション小説、『呻吟』です。 さとり世代の呻吟と思春期の葛藤を描く、ユース・サスペンスドラマ。 呻吟は”しんぎん”と読みます。葛藤の類義語です。
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#短編小説

【呻吟】死

【呻吟】死

 自室に戻ると、罪を犯す前、元通りだった。改めて親への感謝が溢れてくる。砂の世界と似た雰囲気を部屋に覚え、みょうな落ち着きがあった。
 まだ彼との約束が、アドレナリンをとめどなく放出させてくる。あんな賭けはしたが、実際はそれを上回る海外大に受かろうと、芸術や作品に没頭して世間に認められようと、彼は賭けに勝ったことにしてくれるだろう。私がそれこそ文字通り、一生懸命にアツくいられる対象を見つけられれば

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【呻吟】砂の世界 旅路の日

【呻吟】砂の世界 旅路の日

 かつて砂の世界だと思っていた空間は、牢だった。年齢的にも少年院入りだったため、牢とはいえ、そこそこ部屋は明るかったようだ。
 ようだ、というのは閉ざされた記憶が流れ出したのち、私が三日間寝こんでいたからだ。知恵熱だろうか。夢であの日の事件がループしていたが、思い出せないよりずっといい気分だ。
 目が覚めると、折よく釈放日だった。出る際に、色々とメンドウな説明を聞かされたが、なにせ、メンドウで覚え

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