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北朝鮮の未来:金氏一族の末路


問題の提起

北朝鮮の終焉へのカウントダウンは、金正恩の最近の発言から顕著に感じられる。彼はこれまで同じ民族として“平和統一”、“和解”の対象としていた韓国について、「北南関係は同族関係ではない」と宣言し、“敵対国”と位置づけた。

そして、金正恩が自らの10歳の娘、金珠愛を「新星女将軍」としてメディアに押し出したことは、彼が自分の健康状態に関する厳しい報告を受け、限られた時間の中で愛する娘のために権力の基盤を築こうとしていることを示している。

金正恩と娘(金主愛)

しかし、彼の計画は終わりの始まりであり、北朝鮮は10年以内に、そして北東アジア全体が大混乱に陥る運命にある。

なぜ北朝鮮は世界との和解を拒むのか、表面的に強力な北朝鮮が崩壊に向かう理由、そして金正恩と彼の娘の悲劇的な運命がどうして避けられないのか、この文章を通じて、これらの問題に対する洞察を深めることができるかもしれない。さらに、北朝鮮の未来だけでなく、北東アジアが直面する予測不可能な混沌とした状況を見据え、迫り来る複雑な国際情勢に対して準備を整えることができる

北朝鮮の苦境

2023年1月25日、金正恩は北朝鮮の労働党政治局会議で、国内配給制度の崩壊を異例の公開認識として示した。

彼は、政府が国民に基本的な食料や生活必需品の供給を保障できないと述べ、これが北朝鮮の経済と民生が危機に瀕していることを露わにした。

多くの人々が抱く疑問について:人民は苦しんでいるのに、北朝鮮はなぜ中国の模範に従い、改革開放を実施しないのか?

北朝鮮はなぜ改革開放を実施しないのか

その理由は非常に単純だ。それは、中国がソ連を裏切ることの価値が、北朝鮮が中国を裏切ることの価値を大きく上回っているからだ。

この文は一見理解しにくいかもしれないが、以下で詳しく解説します。

まず理解しなければならないのは、アメリカの外交政策は自由や民主主義のスローガンによって導かれているわけではなく、相手国がアメリカにもたらす価値をより重視しているという点だ。

相手国がアメリカに十分な利益をもたらす限り、その国が民主国家であるかどうかは重要ではない。

中国が改革開放するの真実

冷戦時代にアメリカが中国を支援したのは、ソ連がアメリカにとって最大の脅威だったからだ。アメリカ人の立場からすると、中国はソ連より信用できないかもしれないが、ソ連の力を制衡することができる国はどれも支援に値する。

中国はソ連の極東および中央アジアの国境地帯に大きな圧力をかけることができ、ソ連には限られた兵力をこれらの地域に投じさせ、その軍事力を消耗させることにある。

そのため、アメリカは毛沢東に寛大な支援を提供し、化学肥料や農薬を送って中国の食糧問題を解決させ、さらには香港と台湾を通じて中国に大量の投資を行い、そして日本に中国の経済発展に必要な技術支援を提供するよう要求した


1978年、邓小平が日本を訪問し、日本の技術支援を求めました。

これにより、中国経済は世界市場に統合することができ、つまり、改革開放の背景には、中国の指導者たちが専制的な思考を変えたわけではなく、アメリカが市場を中国に開放する意向があったからだ。

アメリカの同意がなければ、鄧小平がどれほど改革を推し進めても、中国を経済大国にはできなかったでしょう。

この理解に基づけば、アメリカが北朝鮮を受け入れることに消極的である理由は非常に単純だ。

具体的には、以下の三つの理由が考えられる。

第一、中国は強くない

トランプ政権であれバイデン政権であれ、中国がアメリカに与える脅威はソビエト連邦がかつてしたようなものには遠く及ばない。

ソビエト連邦とアメリカはそれぞれ地球全体を破壊する能力を有していましたが、中国の核兵器はせいぜい台湾や日本を脅かす程度であり、アメリカ本土を直接的に脅かす能力には欠けている。

第二、韓国の価値はもっと高い

中国を受け入れることが台湾を裏切る行為に等しいように、アメリカが北朝鮮を受け入れた場合、それは韓国との裏切りに他ならない。

でも、韓国は明らかに北朝鮮よりも価値が高い。たとえば、現在保守派が政権を掌握している韓国は、アメリカの世界戦略に忠実で、ウクライナへの支援においても積極的な役割を果たしている。実際、2023年に韓国がウクライナに提供した砲弾の数は、全欧州諸国の合計を上回っている。

アメリカがこのように尽力してくれる同盟国を、北朝鮮を理由にして失望させることは考えにくいだ。

また将来、台湾海峡での紛争が発生した際、日本とアメリカは現代兵器の生産体系を持つ韓国という同盟国を必要とする。

第三、アメリカは北朝鮮の裏切りがいらない

アメリカが中国の抑制を望むならば、ベトナムを支援することも全く可能だ。ベトナムは海軍力で中国を牽制できるだけでなく、豊富な若い労働力を背景に中国に変わって新たな世界工場となる潜在力を持っている。

日本、アメリカ、韓国の同盟

したがって、アメリカが中国の脅威に対処しようとする場合、選択肢は豊富にあり、北朝鮮を利用して韓国との関係を損ねる必要は全くないだ。

以上の三つの理由から、金正恩が経済や外交の分野で重要な進展を遂げることは不可能であることが明らかだ。

内部および外部からの脅威



北朝鮮の苦境はこれだけではなく、ソビエト製の古い装備が老朽化するにつれ、軍事力も次第に衰退していく。

中国が経済危機や混乱に見舞われた場合、北朝鮮は基本的な食糧供給にさえ困難を抱えることになるかもしれない。加えて、金正恩の健康状態が以前と比べて大きく悪化している今、彼は自身の死後、金氏一族の権力が不安定になることを非常に懸念していることだ。

内部の勢力によって金氏一族が打倒されるか、あるいは「民族統一」という名の下に韓国に吸収される可能性がある。このような内部および外部からの脅威に直面して、金氏一族の存続が危ぶまれている。

そのため、金正恩は自分の死前に娘に安全な将来を確保し、新たな安全保障の基盤を築く必要がある。

彼が選択した道は、反日教育を基盤とした北朝鮮の従来の民族意識を捨て、新しい民族意識を確立することにある。

これにより、一つの民族内の分裂を超え、二つの異なる民族間の対立へと変化させるのだ。この新しい意識のもとで、金正恩の娘である金主愛に忠実な新世代の幹部を育成し、彼らは金主愛と密接に結びつき、彼女の運命と共に栄えるか衰えるかの共同体を形成する。時代遅れとなった老人たちを排除し、金主愛が円滑に権力を引き継ぐための舞台を整える。

しかし、この新たな民族意識の創出にあたっては、どのようなアプローチが取られるべきでしょうか?

金正恩の計画

金正恩の計画は極めて明瞭で、大きく二つの方向性に分けられ、一つ目は宣伝教育に関するもので、二つ目は外交戦略だ。

宣伝教育の側面では、反日教育の縮小と新民族の発明を図る。
外交の側面では、日本に対する敵意を減らし、ロシアとの関係を強化する一方で中国への依存度を下げ、韓国との意図的な衝突を引き起こす。

1.反日教育の縮小

朝鮮民族アイデンティティは、根強い反日教育によって築かれており、金氏一族はこの反日宣伝を通じて北朝鮮国内での支持を確固たるものにしてきた。実際、韓国内にも、日本教育を受けた韓国のエリート層が多いにも関わらず、北朝鮮だけが真の抗日リーダーであると認識している人々がいる。

金正恩が韓国を北朝鮮の敵対民族と位置づけるためには、反日教育の縮小と、彼の父と祖父によって築かれた民族観の転換が必要だ。彼には独自の道、新しい敵対者として韓国が必要になる。

2.朝鮮半島の歴史を再解釈、新民族の発明

金正恩は朝鮮半島の歴史を再解釈し、韓国との差異を強調することにより、北朝鮮人と韓国人が古代から異なり、時には敵対していたという観点を提案することができる。

北朝鮮の教育システムを通じて、北朝鮮を高麗の末裔、韓国を新羅の末裔と位置づけることで、二つの異なる民族意識を構築する試みが可能だ。このアプローチは歴史的な事実に基づいており、古代には北の高麗と新羅・百済の間の対立が朝鮮半島の状況を形作っていた。この構造は現代の朝鮮半島でも明確に認識されている。

朴正熙時代から始まり、韓国の政治と経済の中枢を長きにわたって支配してきた軍事政府やその背後にいる経済発展のエリートたちは、主に釜山およびその周辺地域出身、この地域の住民は韓国内で「嶺南人」と呼ばれ、古代新羅王国の中心地に位置する。

このエリアは、歴史を通じて親日的な姿勢で知られており、第二次世界大戦中に日本の特攻隊として命を落とした卓庚鉉もここから出た一人だ。

嶺南地方

一方、かつて百済王国の中心であった湖南地域は、朝鮮との和解を目指す民主派の政治家を育んできた。

金大中、盧武鉉、文在寅といった人物がその典型だ。

湖南地域

これら二つの地域の政治的立場と歴史的背景の違いは、釜山を中心とする嶺南地域の親日派と湖南地域の親北派の間に顕著な対立をもたらしている。この対立は民主派と保守派の政治闘争に留まらず、韓国の社会と政治構造に深く根ざした影響を及ぼしている。

この文脈から見れば、朝鮮半島の三国時代の構造は現代においても依然として影響を与えており、金正恩はこの歴史的背景を利用して、朝鮮を高麗の後継者、南方の韓国を新羅王朝の後継者と位置づけることができる。

さらに、朝鮮と韓国を古来から独立した異なる国家であり、フランスとドイツのような長年の宿敵として描くことも可能だ。このアプローチは、特に若い世代の間で韓国への憧れを抑え、韓国の影響力を弱めると同時に、経済制裁に起因する不満を他に向けさせる効果が期待できる。

次のステップとして、このイデオロギーに沿った歴史教科書を作成し、次世代の朝鮮の若者がこれを深く理解するようにする。そうすることで、金主愛に忠実な新たな幹部隊を若い世代の中から育成する土壌が整う。

3.日本に対する敵意を極力抑える、韓国に敵意を増加

外交政策に関して、金正恩が最優先で取り組むべきは、日本に対する敵意を極力抑えることだ。

一つには、民族主義を口実にした反日感情はもはや機能しないため、新たな国家戦略が必要となる。北朝鮮と日本との関係を修復することは、この新方針を模索する出発点となり得る。
もう一つは、日本との関係を改善することにより、経済援助を受け、北朝鮮の経済難を軽減する可能性がある。

続いて、韓国に対する敵意を増大させることだ

北朝鮮は、今年もしくは来年にかけて、軍事面で韓国に対して強硬姿勢を示し、韓国を挑発し続け、緊張を高めることが見込まれる。この攻撃的な戦略は、北朝鮮内部で韓国への敵意をあおることを主目的としており、実際に全面戦争を引き起こす意図はない。
北朝鮮は軍事資源の一部をロシア支援に振り向け、長期戦を支える食料資源にも限界があるため、金正恩は衝突が全面戦争に発展しないよう慎重に操作する必要がある。

4.中国との距離を置き、よりロシアに依存する

中国は長い間、北朝鮮を経済的に依存させ、後進的に保つことを望んできた。
例えば、中国は北朝鮮に生産設備を提供することはなく、食料や一般商品だけを供給している。
金正恩が将来的に中国が不安定になった後も金氏一族の支配を維持したい場合、自立した経済体系の構築が必要だ。中国はそのような体系を構築することができず、自国の経済も西側諸国の技術に依存している。

だから、完備した産業体系を持つロシアのみが、金正恩の支援が可能だ。

これが金正恩が北朝鮮の将来に対して描く計画ですが、果たしてこの計画はスムーズに進展するでしょうか?

金正恩の計画が失敗する理由

三つの主要な理由があり、三番目の理由は特に北朝鮮を崩壊の危機にさらす可能性がある。

1.金正恩には時間がほとんど残されていない

なぜと言うと、北朝鮮の公式メディアが金正恩の娘、金珠愛を「偉大な指導者」と報じたことは、彼女が金正恩の後継者になる可能性を示唆している。
この称号は、通常、上位の指導者に限定して使用されるものであり、金正恩の残された時間が少ないことを物語っている。彼は自身の死に先立って、急速に娘の評判を高める必要があるだ。

でも、新しい民族意識形態を確立し、それを固めるには複数世代にわたる時間が必要だ。国家の教育機関が幼い頃から民族意識を育て、この認識を深く根付かせないといけない。

しかし、金正恩の健康状態が悪化しており、彼が「高麗民族」理論を確立するのに必要な十分な時間を持っていないことは明らかだ。

2.金正恩の新民族意識が民間の支援を欠いている

民族のアイデンティティを構築するには、公的機関と民間の共同の取り組みが不可欠だ。授業での理論的な教育だけでは足りず、国民が民族に対して感情的なつながりを強めるためには、魅力的な文化的作品が必要だ。

韓国の例を見てみましょう。

1984年の映画法改正後、韓国では民間レベルで歴史を題材にした映画制作の熱気が高まった。これらの作品には、反日抗争史を反映したものや満州人の侵入に立ち向かう戦争を描いたものが含まれ、いずれも強い愛国心を背景にしている。

これらの作品を通じて、韓国の若い世代は学校や映画館で民族教育を受け、日本人や満州人とは異なる独自の韓国人の意識を徐々に形成してきた。

公的な民族主義教育と民間の文化的創造性が相互に支え合うことで、民族認同感が国民の心に深く根付くことができる。しかし、市場経済や言論自由が欠けている北朝鮮では、このような文化的な動きを生み出すことが困難だ。
もし韓国の映画や文学作品がインターネットを介して北朝鮮に広がった場合、北朝鮮政府が懸命に構築してきたイデオロギーは基盤を失い、国民の支持を獲得することはさらに難しくなるでしょう。


3.国内外の困難

現時点で北朝鮮は経済、外交、そして軍事の面で大きな進展を遂げていない。
国内の改革基盤も弱く、外部からの圧力は増大している。特にウクライナ戦争は北朝鮮に大きな負担をもたらしている。

北朝鮮に長年にわたって食糧と経済支援を提供してきた中国は、崩壊の危機に瀕している。

中国だけでなく、北朝鮮の別の同盟国であるロシアも深刻な崩壊の危機に直面しており、最近ではロシア国内でプーチン政権に反対するいくつかの反乱が発生した。首都モスクワですらテロ攻撃を受けている。
今後1~2年の間に、ロシアは軍閥間の抗争が激化し、極東ロシアの軍閥が北朝鮮の政権安定を脅かす可能性が高まる。

この厳しい政治環境のもとで、北朝鮮の未来についてはどのように考えればよいのでしょうか?

北朝鮮と金主愛の未来

北朝鮮の経済と軍事力は衰えつつあり、核兵器の維持さえも困難な状況に直面しており、国の窮地を脱するのはほぼ不可能に近い。金正恩による新たな民族創造の試みは、効果的な解決策とは程遠い、無力な足掻きに見える。

将来を見据えると、ロシアとウクライナの戦争の激化に伴い、その影響が北朝鮮と中国の国境地帯にまで及ぶ可能性がある
その場合、北朝鮮には選択肢がなく、最終手段として「汚い爆弾」を使用し、放射能による汚染地域を作り出して自国を他国から隔離するしかない。

しかし、そのような措置を取ったとしても、金正恩と北朝鮮の支配層が避けられない悲惨な結末から逃れることはできない。彼らの運命は既に定められており、今さら何をしても手遅れだ。

金珠愛にとって、その若さで直面する将来は非情であり、彼女自身が直接的な悪行を働いたわけではないにも関わらず、父、祖父、曾祖父の犯した過ちの重荷を背負うことになる

自分の運命が知らない女の子


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