TAEKO ADACHI

翻訳業。書く人。広告まわりの動画屋さん。ときどきイラスト/グラフィック。本が好き。映画…

TAEKO ADACHI

翻訳業。書く人。広告まわりの動画屋さん。ときどきイラスト/グラフィック。本が好き。映画が好き。BTSが好き。

マガジン

  • 書評講座 Vol. 4

    • 8本

    課題書:1)インヴェンション・オブ・サウンド(チャック・パラニューク著、池田真紀子訳、早川書房)、2)自由課題

  • 書評講座 Vol. 2

    • 6本

    課題書: 1)『掃除婦のための手引き書』- アメリカ、ルシア・ベルリン著、岸本佐知子訳、講談社、2)『ハムネット』- イギリス、マギー・オファーレル著、小竹由美子訳、新潮社

  • 書評

    書評まとめ

  • 映画備忘録

    映画を観たら忘れないうちに

  • 書評講座 Vol. 1

    • 11本

    課題書: 1)『エルサレム』- ポルトガル、ゴンサロ・M・タヴァレス著、木下真穂訳、河出書房新社、2)『キャビネット』- 韓国、キム・オンス著、加来順子訳、論創社、3)『クィーンズ・ギャンビット』- アメリカ、W・テヴィス著、小澤身和子訳、新潮文庫

最近の記事

【映画備忘録】『マスター先生が来る!』(2021)

大学教授のJDは、学校からは煙たがられているが、生徒からは大人気。型破りで腕っぷしの強い伊達男JDの、次の赴任地は少年院! ※この先はネタバレなのでご注意。 "暴力の最初のひきがねは感情だ。その後は……おれは確信を持っているけれど、依存だよ" JDの説教シーンがぐっとくる(映画館で一度観ただけなので、台詞は字幕の引用ではなく「こんなこといってたな?」という程度のものであることはご了承いただきたい。すみません)。暴力は依存だよ、アル中のおれだからこそ語れるんだ、と言ったあ

    • 【書評】人を人ではない何かに変えてしまうもの『ブラッカムの爆撃機』ロバート・ウェストール著|金原瑞人訳

      戦争ものが嫌いだ。暗くて嫌な気分になるし、恐ろしいし、何なら悪夢を見てしまう。でも読むだけですむならマシ。 ロバート・ウェストールの『ブラッカムの爆撃機』は、まさにそんな"戦争もの"の短篇集である。舞台が英国なので、日本で教育を受けた人には馴染みが薄いかもしれないが、一文一文ゆっくりと読み進めていけば、物語に入り込むのは容易だ。宮崎駿が描き下ろしたフルカラーの漫画も想像を助けてくれる。 表題作は、第二次世界大戦の不思議な記憶の物語。主人公で語り手のゲアリーは英国軍の無線士で

      • 【映画備忘録】『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)

        コインランドリーを経営する中国系アメリカ人のイヴリンは、悩ましい日々を送っている。夫との関係はぎくしゃくしているし、娘がレズビアンであることは飲み込みきれないし、旧態依然の父の目を気にしてしまうし、税金の申告はうまくいかない。 ある日、税務署でマルチバースに飲み込まれたイヴリンは、世界の危機を告げられる——世界を救うためのカギは、「最強に変なこと」? ※この先はネタバレなのでご注意。 このキャッチコピーを決めた人はすごい 「ようこそ、最先端のカオスへ。」って日本語のキャ

        • 【映画備忘録】『バビロン』(2022)

          サイレントからトーキーへ移り変わる時代のハリウッドを舞台にした群像劇。昔々ハリウッドという荒野に売れてる役者と売れてない役者とメキシコからきた青年がいました……という豪華絢爛で壮大なおとぎ話。 ※この先はネタバレなのでご注意。 映画への愛と様式美 デイミアン・チャゼル監督の映画愛。すごく上手いし、わたしも1920年代〜1950年代のハリウッドにどっぷり浸かってしっかり楽しんだ。3時間はあっという間。でも好みかときかれるとと少し違った。それはたぶん、わたしが登場人物に主眼

        【映画備忘録】『マスター先生が来る!』(2021)

        • 【書評】人を人ではない何かに変えてしまうもの『ブラッカムの爆撃機』ロバート・ウェストール著|金原瑞人訳

        • 【映画備忘録】『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)

        • 【映画備忘録】『バビロン』(2022)

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        • 書評講座 Vol. 4
          8本
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          11本

        記事

          【書評】自由と偶然への祝福『喜べ、幸いなる魂よ』佐藤亜紀著

          十八世紀、ベルギー。親が死に、亜麻糸商のファン・デール家に引き取られたヤンは、男女の双子と共に育てられることとなった。人付き合いはいいがどこか人生を諦観している少年テオと、並外れた天才で変わり者の少女ヤネケ。ある日、農園で兎の交尾をみていたヤンは、一緒にいたヤネケに、〈出来るか?〉と訊かれる。ヤネケの好奇心に付き合うように、ヤンはヤネケと交わり、いつしかヤネケはヤンの子を身籠もる。ヤンはヤネケと所帯を持つことを望むが、ヤネケは子どもを産むだけ産むと、生涯独身の女たちが住む「ベ

          【書評】自由と偶然への祝福『喜べ、幸いなる魂よ』佐藤亜紀著

          【書評】心を調律する音叉のような声『掃除婦のための手引き書』ルシア・ベルリン著|岸本佐知子訳

          本が好きで物語が好きで言葉が好きで、だから曲がりなりにも文章にかかわる仕事をしているのだけれど、たとえば好きな人に長い間ウソをつかれていたことを知ってしまったとか、一緒にくらす猫の病気に気がつけなかったとか、だれかが怒鳴られているのをずっと聞いていなくてはならなかったとか、突然の暴力にさらされたとか、何気ない一言で人を傷つけてしまったとか、だれにも言えない秘密ができてしまったとか、そういうことが積み重なって心が摩耗してしまうと、たとえずっと読みたかった本を手にとりページをめく

          【書評】心を調律する音叉のような声『掃除婦のための手引き書』ルシア・ベルリン著|岸本佐知子訳

          【書評】正常と異常の境目とは 『キャビネット』キム・オンス著|加来順子訳

          ものすごく足が速ければオリンピック選手で、ものすごく手が長ければビックリ人間だ。才能とは、個性とは、体質とは、どこまでが正常で、どこからが異常なのだろうか? キム・オンス著『キャビネット』は、正常と異常、現実と虚構の境界をぼかして読者を煙に巻く。 〈ポスト人類〉相談窓口 主人公のコン・ドックンは〈安定が一番〉という母の遺言に従い、とある公企業になんとか就職を果たした。だが、百三十七倍の倍率を突破して、いざ職場に行ってみれば、仕事とよべる仕事はほとんどなく、待っていたのは〈

          【書評】正常と異常の境目とは 『キャビネット』キム・オンス著|加来順子訳