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【映画備忘録】『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)

コインランドリーを経営する中国系アメリカ人のイヴリンは、悩ましい日々を送っている。夫との関係はぎくしゃくしているし、娘がレズビアンであることは飲み込みきれないし、旧態依然の父の目を気にしてしまうし、税金の申告はうまくいかない。
ある日、税務署でマルチバースに飲み込まれたイヴリンは、世界の危機を告げられる——世界を救うためのカギは、「最強に変なこと」?

※この先はネタバレなのでご注意。

このキャッチコピーを決めた人はすごい

「ようこそ、最先端のカオスへ。」って日本語のキャッチコピーを考えた人はすごい。脳みそに流れ込んでくるカオス。とにかく「何かがオカシイ」がぶっとおしで続く2時間20分。トロフィーを尻の穴につっこんだ人のアクションシーンをみてゲラゲラ笑った後、目のついた石をみて嗚咽している自分の情緒は大丈夫か。

しかし一体この脚本はどうやって作ったのだろう? 中年女性がマルチバースに飲み込まれる、はギリギリわかる。世界を滅ぼす悪の権化が自分の娘も、まぁわかる。でも細部の発想があまりにぶっとんでいる。「指がソーセージの世界」を思いつき、それを主要なマルチバースのひとつに選びだし、指ソーセージ界の類人猿までも表現した制作陣はどう考えても頭がおかしい(これ以上ないほどに褒めている)。
何より「最強に変なことをするとマルチバースにいる自分の能力をインストールできる」という設定がすばらしい。ものすごく真面目な顔でものすごく奇天烈なことをする人がたくさんみられるので、シュールなコメディが好きなわたしのような人間にはたまらないご馳走だった。

しかし、非常に複雑に思えても、最終的にはロマンチックな愛の話。どのユニバースをみても、どんな風に生きていても、誰のことが好きでも、どんな姿形をしていても、今のあなたと一緒にいたいという、強いメッセージに涙する。伝説の"I’m your father"を軽々と飛び越え、ダークサイドに身を落とした娘をつつみこむ、I’m your mother"。ぜひもう一度観たい。

その他覚え書き

  • おい、犬はだめだ。犬を投げようっていったやつはでてこい。

  • アライグマも保護しろ。

  • あちこちにポップに散りばめられた大人のおもちゃ。あれ……これ、映倫Gで大丈夫そ?

  • えっお父さん『グーニーズ』のあの子なの!? たしかに言われてみれば!

  • 可愛げない女ふたりが煙草すってるシーン最高。

  • Organic!

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