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鱗Rin

海辺に、ひらひらと落ちている
ナンヨウブダイの青い鱗

「まるで、人魚が落としていったみたいに
綺麗なんだよ」

と言う、夫のひと言から始まりました。

時々、海に潜って
その日に食べる分だけの魚を
獲ってきてくれるのですが、

私は、夫が海辺で捌くところを
実際に見た事がなかったので、
仕事が終わった後の夕方に
見に行く事になりました。

さっきまで海の中で泳いでいた
大きなナンヨウブダイ。

ガリガリと鱗を剥がしては
ひらひらと海辺に落ちてゆく。

白い砂浜に散りばめられた青い鱗は
宝石のようにキラキラと輝いていて
押し寄せた波に揺られて海に戻ってゆく。

本当に人魚が落としていったみたいだった。

透き通った繊細な模様と色合いが
とても美しくて

この鱗でアクセサリーを作って
身につけてみたい。

そんな思いが胸の中で
ふつふつと沸き上がっていました。

けれど、本物の鱗は匂いや変色もあるし
繊細過ぎる。

かと言って
レジン(透明樹脂)を使用して
中に閉じ込めたら
鱗らしさが消えてしまう。

と、なかなか形にする事が
できませんでした。

それから約一年後

夫が、ふと、乾燥したナンヨウブダイの鱗を
持って来てくれました。

それは、鮮やかな青さから
深い色味に変わっていて
細かい模様が浮きあがっていた。

和紙のような質感だけれど
しっかりとした強度がある。

これは、いける!

と、私の中で本物の鱗を使ったアクセサリーは、確信へと変わりました。

鱗から感じ取ったもの、
今、持っている技術、そして
頭の中にあるイメージを組み合わせて
アウトプットしてゆく。

するすると流れる何とも気持ちのいい時間。

一枚一枚、模様も形も違い、光を通した鱗は
えも言われぬ美しさです。

繊細な風合いの中にある
かつて生きていた命の凛とした力強さがあり、耳元で揺れる姿が鈴のようだったので、

「鱗Rin」
(リン)と名付けました。

ナンヨウブダイを食べる時に
いつも捨ててしまう鱗が、
唯一無二の耳飾りに、生まれ変わりました。




鱗Rinを制作し始めてから

「命をいただく」

という事に対して

より深く考えるようになりました。

人間は生きるために、
他の生き物の命を奪っている。

他の生き物たちも、それは同じである。

私達は動物や植物など他の命をいただいて
生かされている。

と、意識するようになりました。

当たり前の事かもしれませんが、

魚を獲る時は、その日に食べる分だけ。
粗でだしを取り、顔も眼も
食べられる所は、できるだけ食べて
最後は、「ありがとう」という気持ちで
手を合わせています。

夫は、いつも
畏怖の念を持って海の中に入っています。

自然は美しい反面、怖さもあり
ちょっとしたことで死んでしまう事もある。

自らの力で潜り、魚を追う事は
常に危険と隣り合わせだけれど、
そこには、私もまだ見た事のない
美しい世界がある。

「生きる」とは、どういう事なのか。

自然と関わってゆく中で
その大切な答えが見えてくるんだと、
改めて思うようになりました。

日々生活をしていると、
忘れかけてしまう大事なこと。


他の場所で生きている生き物たちの事や
そこに流れている時間を
それぞれの鱗から感じ取って頂けると
嬉しいです。

いつかみた青い鱗をみにつけたくて

どうして あの魚は

海に溶け込むような
青さを持っているのだろう

耳もとで鱗がゆれる Rin Rin と




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2009年に西表島に移住し 海辺に流れ着いた貝殻や珊瑚などでアクセサリーを制作して販売をしています。 主にインスタで発信をしていますが、 noteでは海辺の欠片絵本シリーズを発表したり、制作しているアクセサリーについての裏話や島での暮らしなどを書いていきます。