【連載小説】ガンズグロウ vol.25「自殺」
レナは心配そうにしながらも、帰っていった。
私は憂鬱で憂鬱でたまらなかった。
三週間経っても悪意のあるメッセージは止まなかった。
そして私の心は病んでいった。
『タ匕ねタ匕ね』
そんなメッセージを見ると、私はふらふらと立ち上がった。
びゅう、と下からの風が吹く。
下を見ると足がすくむほど高い。
ふと、携帯が鳴る。
タツキからだ。
『はい』
とだけ言って電話に出る。
『さやかちゃんどこにいるの?!シフト今日入ってるのに来ないから、店長が電話してくれって』
『ああ、シフト……忘れてましたね。でも、私はこれから死ぬので、店長にもよろしくお伝えください』
『ちょ……死ぬって、今どこにいるんだよ?!』
『○×ビルの屋上……』
それだけ言うと、電話は切れた。
私は何度も飛び降りようとするが、あと一歩を越えられずにいた。
下を見ると足がすくんで動けない。
何度も何度もそれを繰り返していた。
未練か……やりたいこと、たくさんあったなぁ。
タツキと行きたいところもたくさん。
お母さんのご飯がまた食べたかったなあ……
私の人生は未練ばかりだった。
気を取り直して、遺書のメールを書く。
宛先はお母さん、数人の友達、レナ、ゆらぎ、みなも、そしてタツキだった。
メールを送り終え、しばらくボーッとしていたが、再びダイブすべく、下を覗く。
そのときだった。
バンッと屋上の扉を開ける音がして、そちらを向く。
タツキだった。
息を切らし、肩で呼吸をしながら、
「間に合った〜!」
と言いながらこちらに近づいて来る。
「来たら飛び降りるから!」
「じゃあ行かないから、こっちへおいで」
そう言われ、タツキの方へ向かいかけたそのときだった。
突風が吹き、私はいとも簡単に飛ばされてしまう。
タツキが手を伸ばす。
しっかり手は繋がれた。
が、勢い余ってタツキまで落ちてしまう。
このまま死ぬんだ。
そう覚悟が決まったとき、下を見るとトランポリンのようなものが設置されている。
タツキは私を抱くと、
「うおぉぉぉ」
と雄叫びをあげた。
私たちは、ボフンと音がしたものに落下した。
よく自殺未遂現場にある、あれだ。
私はすぐに起き上がったけど、タツキが起き上がってこない。
救急車の音が鳴り響いた。
タツキと私は別々の救急車で運ばれた。
病院につくと、しばらくして血相を変えた母がやって来た。
私の無事を知って涙をこぼした。
MRIに、CTスキャンにといろいろ調べられた。
その日は点滴を打つということになり、入院となった。
私は看護師さんを捕まえると、一緒にいたタツキのことを聞いた。
ICUに入っていたが、骨折程度の様子だったので、今はこの病院の別病棟に入院しているとのこと。
とりあえず命に関わることはないと言われ、少しだけホッとした。
次の日は病棟で、警察の人からの事情聴取があった。
タツキの方にもいったらしく、
「彼氏は大丈夫だから」
を繰り返された。
私は一日で退院となった。
母に言って、タツキの病棟へ来た。
ナースセンターで、タツキの部屋を聞くと、お見舞いの花束を持って行った。
ちょうどタツキのお父さんが帰るところで、私は平謝りに謝った。
お父さんは、それよりも私の身体を心配してくれた。
タツキの部屋に入ると、タツキがいつもの笑顔で迎えてくれた。
右足と左手にギプスをしていた。
「さやかちゃんに怪我がなくてなによりだったよ」
「私、困らせてばかりで、ホントにごめんなさい」
と言うと、タツキがおいでおいでする。
寄っていった私は、ふいに片腕で抱きすくめられ、キスをした。
甘くて長い、キスだった。
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