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【連載小説】ガンズグロウ vol.9「タツキのいえ」

タツキは、見たいアニメがあるから一緒に見ようと言ってきた。

アニメアニメって、オタクですかー?

ってオタクだったね……


「今日はかわいいアニメだから、さやかちゃんもきっと気に入ると思うんだ」

始まったアニメはなにやらかわいい妖精さんがたくさん出てくるお話だった。

へぇ……こんなアニメもあるんだ。

お菓子をボリボリ食べながらテレビ鑑賞をする。

「これって、続き物?」

「うん!これは二期だけど、一期からみたいならあるよ」

へー、そうなんだ。

タツキはDVDの山から何かを発掘してきた。

「これが一期だよ。見てみる?」

何をするでもないので、見ることに。


タツキは麦茶のおかわりを取りに行った。


オープニングもなかなかかわいい。

こういうアニメならありかな……と思う。


麦茶を探す手が思わず触れる。

あ、なんかキスなムードかも……

その瞬間、携帯のアラームが鳴り出す。

「あ、ごめん、時間だ。一旦妖精さんストップしてもいい?」

「別に構わないけど……」

タツキは妖精さんをストップし、ブラウザに切り替える。

「このアニメ待ってたんだー!まさに神!って感じのアニメでね…※△○……」

途中から聞いていませんでした、はい。


アニメ自体は意味がわからなくともなんとなく掴めたのはサイバー戦闘ものだということ。

ちょっと小難しい、大人向けのアニメだった。



「ねぇねぇ、そんなにアニメばっかり見ていて、楽しいの?」

「うん、楽しいよ!さやかちゃんも楽しいでしょ?」

「私は……」

私は楽しくない、そう言いきれなかったのは、タツキがあまりに純真すぎたから。

「楽しくないなら、なんか他のことしよっか」

と言いながらゲームの準備を始めるタツキに申し訳ないと思いつつも、ゲームに切り替えてもらった。

ゲームはわたしでもわかるぷよぷよ。

レベル差をつけてもらって挑んだ。

結果は呆気なく負け。

悔しいのでもう一度、もう一度と繰り返してるうちに、辺りは暗くなってきた。

「そろそろおうちの人も帰ってくるだろうし、おいとましようかな」

「えーっ、もう帰っちゃうの?俺、飯作るから食べていきなよ」

「いや、おうちの人も帰ってくるだろうし……」

「そっかぁ、じゃあ送っていくよ」

「いいよ、いいよ、そんなに遠くないんだし」

「女の子の一人歩きは危ないから」

「そう?それなら送ってもらおうかな」

タツキは自転車を押して私の横を歩く。



今日は進展なかったな……

歩きつつ私は思った。

キスとか、思わず期待しちゃったけど、ありえないか……

「そういや、女の子と付き合うのって、私で何人目?」

「初めてだよ」

「えっ?」

「さやかちゃんが初めての彼女」

そんなに見た目レベル高いのに?

「みんなとは趣味が合わなくて……」

そりゃそうだ。

あれだけオタク臭してたら、寄ってきた子も離れていくかな……


って、じゃあなんで私には付き合ってって当然のように言ったんだ?

「さやかちゃんなら、俺の趣味を理解してくれそうかなって思って」


あー、ごめんね、さっきのアニメの説明とか、聞き飛ばしてました。


「私が趣味を理解できなかったら?」

「そのときはごめん、って言うしかないかな……」

オタクやめる選択肢はないんかい!!


そうこう話しているうちに、うちの前までついた。

「今日はありがとう」

「こっちこそ、無理矢理アニメ見せちゃったみたいで、ごめんね」

私たちは手をふりあって別れた。



どうせだから、『きゅんきゅん特選隊』も見てしまうかな……

見はじめて5分でやめたけど、これは許されるよねっ!!

そう自分に言い分けをしてガンズグロウをプレイし始めた。

夏休みの始まりの頃だった。

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