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【連載小説】ガンズグロウ vol.27「カウントダウン」

大晦日の晩。

私たちは神社の前で会う約束をしていた。

一緒にカウントダウンするためだ。


神社は私の家からもタツキの家からも同じ、中間地点にある。


少し早めの11時15分に約束をした。

タツキは少し遅れて来ると、カイロを私に手渡した。

「ありがとう」

私は素直に受けとる。

カイロは温かく、凍りつきそうだった手を温めた。


まだ神社には人はまばらで、たきぎをしているところとストーブを設置しているところに人が集まっていた。

私たちはたきぎのほうで暖をとる。

「ここの神社、私、初めて来た」

「俺も初めて来たよ」

「結構大きいね」

「なんでも、由緒ある神社らしいよ。寄付者の名前もずらっと並んでいたしね」

「ふぅん、そんなにすごいんだ」

私たちは喋り続けた。


「今年は実家に帰るの?」

「うん、2日から、2、3日かな」

「都内だっけ?」

「うん、なのに独り暮らしって贅沢だよね」

と私が笑うと、タツキも笑う。

「贅沢極まりないな。俺なんてまだバイトだし、家を出る金もないし」

「私だって、ギリギリで生活してるよー?本とかたくさん買ってるタツキくんのほうが贅沢」

「俺のは仕事なの!」

「えー、なんの仕事だよ?!」

この時間が永遠ならいい、と、私は思う。


11時半を回ると、人がだんだん増え始めた。

徐々に参列者が増えてきて、私たちも参列する。

星空を眺めていると、流れ星が流れた。

「あ、今の」

「見た?」

「うん、流れ星」

タツキが言うにはちょうどこの時期になんとか流星群というものがあるらしく、きっとそれのしっぽだろうと言う。

「あー、願い事言えなかった……」

「俺も願い事言えなかった」

「でも、こんなタイミングで見れるなんて」

「来年はラッキーかもしれないよね!」

「ほんとほんと」

時刻は11時45分を回っていた。


神主さんらしき人がスタンバイを始めた。

神主さんは3人いて、そのうちの一人は私たちと年齢が変わらなく見えた。


年齢……そういえばタツキの誕生日と年齢を聞き忘れていたな、と今更思いだし、聞く。

「俺?23だよ」

「誕生日は?」

「1月25日」

まだ過ぎていなくてホッとした。

「でも、なんで今更?」

と聞かれ、回答に詰まる。

「今更だけど、聞きたくて……」

「そっか。俺来年は年男なんだよね」

「そっかぁ。私よりずいぶん年上だったんだね」

「そういうさやかちゃんは誕生日いつ?」

「3月5日」

「まだだいぶ先だな。ってことは今年は成人式かぁ」

「うん、着物もレンタルしてある。見たい?」

「見たいなぁ」

「じゃあ式が終わったらデートしようよ」

「式が終わったら友達とかに誘われるんじゃない?」「じゃあタツキくんが見に来てよ!それで友達と一緒に遊べばいいよ!」

「いや、俺部外者だし……」

「そうしよっと♪」


社におじいさんやおばあさんが入っていく。

もうすぐカウントダウンだ。

神主さんが神社の中に入ってくる。

私たちはカウントダウンを始める。

5、4、3、2、1

祝詞が始まる。

新年だ。


「明けましておめでとう」

「おめでとうございます」

「今年もよろしくね」

「私こそ、よろしくお願いします」


ガランガランと鈴をふると、二人して手を合わせた。


もう一つの社でお祓いをしてくれるようだったので、そちらに回る。

お賽銭を入れるとばさーっ、ばさーっとしてもらった。


お祓いが終わったら、お決まりのおみくじだ。

「やったぁ、私、大吉!」

「俺は末吉、微妙だなあ……」

タツキはおみくじを枝に結びに行く。

「さやかちゃんは結ばないの?」

「いいのを引いたときは持って帰るんだよ。悪いのを引いたときに、悪いのを一緒に結びつけて祓ってもらうんだって。知ってた?」

「ふぇー、俺知らなかったよ。毎年結んでた」

タツキがおみくじを枝に結びつけた。


最後は二人して熱い甘酒をいただいてから帰宅した。

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