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【連載小説】透明な彼女 vol.1「プロローグ」

俺たちは付き合いだして一年。

ようやく行事を一巡りしたところだ。


俺たちは大学四年の春、合コンで知り合った。

当時の彼女はメガネで凛としていて、近寄りがたいオーラを出していた。

いわゆる喪女というやつである。

友人の引き立て役として連れてこられたらしく、仏頂面で、とんでもなく可愛げがない女だった。


そんな彼女と知り合いになれたのは、同じ、イラストレーターを目指していることがわかったからだ。

合コンでそんな話になるとは思っていなかった俺は、馬鹿正直に夢のことをみんなに話して聞かせた。


もちろんみんな興味なく、すぐに次の話題にうつってしまったが、一人、真剣に聞いてくれたのが、彼女竹中ユイだった。

俺こと、坂本コウヘイはその日、同じ夢を持つユイと実に充実した時間を過ごしていた。


当時俺は大学四年生になりたてで、イラストレーターとは全く無関係な文学部に通っていた。

だから、卒業したら美大に行きたいと思い、画廊に絵を習いに行く日々を送っていた。


ユイは美術系の専門学校に通っていて、俺よりもずっとイラストレーターに近い位置にいた。


そんな二人が仲良くなるのにそう時間はかからなかった。


告白は俺からした。

七月の風がさらりと吹く中で、セミロングの髪をなびかせるユイに、大きな声で

「付き合ってください!」

と叫んだ。

ユイは髪をかきあげながら、

「うん」

と一言答えた。


ユイはそのお堅い風貌からか、男子と付き合うのは初めてだと言った。

俺だってユイが二人目だよ、というと、ユイはクスクスと笑った。

俺の馬鹿正直さが笑えたらしい。


ユイといると、いつも楽しかった。

初めてのことだらけで、いつも二人で笑いあった。

喧嘩なんかしたこともなかった。

いつも二人同じ意見だったから、喧嘩のしようがなかった。


二人初めてのキスは付き合いだして三ヶ月目だった。

うまくキスできなくて、ギクシャクして、それも二人で笑いあった。


五ヶ月目で、二人で初めて抱きあった。

「愛してるよ」

何度もそう囁いた。


6ヶ月目、ユイがメガネからコンタクトに変えた。

今までのお堅いイメージを一掃して、セミロングの髪にはウェーブをあてた。

どんどん綺麗になるユイに、俺はドキドキしていた。


8ヶ月目、俺は卒業式を迎えた。

美大にはかろうじて受かった。

来月からは美大生だ。

ユイも喜んでくれて、ささやかながらパーティーを開いた。

あのときの合コン仲間で付き合ったりして残っている連中で、花火をした。


9ヶ月目。

俺は晴れて美大生となった。

ユイはわざわざ入学式まで見に来ると、校門前で親に頼んで写真を撮ってもらった。

プリクラ以外での初のツーショットだった。


10ヶ月目、俺は車の免許を取った。

親父のボロ車でドライブに行った。

ガチガチに緊張して、どこをどう走ったか思い出せないほどだった。


11ヶ月目は、ユイの学校の夏の文化祭を見に行った。

ユイのイラストを初めてまともに見た。

うますぎてカルチャーショック、俺は一時期イラストが描けなくなる。


12ヶ月目の今は……

二人で初めての旅行に来ている。

きれいな海が見たいというリクエストから、沖縄にする。


初めてのユイの水着姿に戸惑う俺。


そんな俺をユイが笑う。


水をかけっこしたり、バナナボートで浮かんだり、ビーチバレーをしたり。

ユイはビーチバレーでは手強いコーチだ。


たくさん遊んで宿に戻ると、市場を見に行こうと俺を誘う。

残念ながら市場はもう終わっており、俺たちは仕方なく土産屋を見て回った。


夜のディナーは凄かった。食べきれないほどの南国フルーツ、豚の丸焼き。

豚の丸焼きを少しずつもらう。

とてもおいしく、満足のいく旅だった。

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