【連載小説】ガンズグロウ vol.31「くうちゃん」
まおちゃんの一件も落ち着き、私のタツキへの信頼も回復していた。
相も変わらずガンズグロウをプレイする毎日。
タツキも今季のアニメは不作だと言って、同じ時間にプレイすることが多かった。
そんなある日、とある女の子からメッセージが届いた。
『よかったらチームに入れてください。』
みなもの知り合いらしい。
タツキに相談すると、即入隊することに。
名前はくうちゃんと言う。
可愛い系のキャラをピンクでまとめている。
キャラをみる限りでは美少女イメージだ。
私はみなもにくうちゃんがどんな子かを聞いてみる。
「同じ学校の女の子だよ!最近はガンズも女子率あがってきたよね!」
と、嬉しそうだ。
みなもは、
「さやかちゃん一回くうちゃんに会ったことあるよ!○×町で待ち合わせたときに」
「うーん、思い出せないなぁ……」
「色白で、ちいさくて可愛い子ですよ!」
「キャラのイメージそのまんまだね」
「うんうん、あのキャラ似てるよ」
「ふーん」
私の彼女への興味はその程度だった。
くうはまだ初心者なので、いろいろフォローしてあげることも多かった。
同じ攻撃特化型なので、なおさらだ。
ゆらぎも一緒に懸命に彼女を育てる。
私も先輩という立場になったんだなぁと実感し、うるっとする。
くうは誰に対しても敬語だった。
一度、敬語がくすぐったくて敬語やめていいよ、と言ったのだが、みなさん先輩ですから、と言って聞かなかった。
ゆらぎも同じことを言ったらしい。
みなもに対しても敬語なので、それがデフォな子なんだなぁと納得した。
くうは特に私によくなついた。
むかしのみなもを思い起こさせるかのように、べたべたと引っ付いてきた。
私もまんざらではなかったが、チームメイトには気づかった。
ゆらぎは、
『まあ、女同士だからまだ許せる』
と言っていた。
これが男だったら、ゆらぎの鉄槌が落とされるところだろう。
日は経ち、バレンタインを目前とした私は、デパートへチョコの買い出しに来ている。
タツキにはゴディバかなあ……とフロアをうろつく。
みなもにも買っていくか……
みなもの分も買い足した。
そのときだ。
「さやかさん」
聞き慣れない声だ。
「さやかさん」
私を呼んでいるの?
振り返ると可愛らしい小さくて華奢な女の子が立っていた。
「さやかさんもバレンタインのお買い物ですか?」
やっぱり、私に話しかけてる?
「あの……私、ですか?」
少女はさらにニコッとして、言った。
「はい、そうですよ、さやかさん」
少女に見覚えはない。
でも少女は名前を知っている。
「くう、ですよ、さやかさん」
「えーっ、もしかして、あの、くうちゃん?」
驚きを隠せない私。
「なんで私のことを知って―――」
そういや、みなもが一回会ったことがあるっていってたっけ。
「私がさやかさんのこと忘れるはずがないじゃないですか」
くうはそういうと、私の横に立った。
「もうお買い物は済んだのですか?」
「あぁー、まだ、彼氏の分悩んじゃってて。実家に送るのとみなもの分は買ったんだけど……」
「私もご一緒してよろしいですか?」
「どうぞ!くうちゃんも彼氏か誰かに選びに来たのかな?」
「はい!好きな人にあげようと思いまして……受け取っていただけるのかはわからないのですけど」
「もう選んだの?」
「はい、最初からお店は決めてましたので」
「そっかぁ、私もう少しかかるけど、時間大丈夫?」
「はい、さやかさんといれるならどれだけでも!」
「じゃあ、ちゃちゃっと買ってしまうから待ってね」
私はゴディバの前に行くと、ショコラを選んだ。
「ごめんね、お待たせ。時間があるなら、少しお茶していく?」
「はい!是非!」
私はコーヒー、くうはミルクティを頼んだ。
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