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【連載小説】透明な彼女 vol.13「下着」
https://note.com/tibihime/n/n4c37266ff471
なんとか無事に正月休みを切り抜けると、ユイの服を買いに行く。
ユイは中学生くらいに大きくなっている。
なぜ?考えてもわからない。
神の気まぐれだとしか思えない。
とにかく服だ。
女性陣に囲まれた服屋は痛かった。
近くのシティモールに来たのだが、さすがに女物の売り場は女の子ばかりだ。
俺は食いついてきた店員に、彼女へのプレゼントだと嘘を――実際には嘘ではないが――をついて、なんとか売り場にいる状態だった。
そこで服を買うと、今度は恥ずかしそうに、ブラとパンツも欲しいと抜かしやがった。
そんなことできるわけないだろう?!
一人で女性下着屋にいたら、それこそ変態扱いだ。
「サイズがわからないだろっ?!」
と言うと、ユイは、
「わかる、大丈夫だから、お願い」
と言う。
ユイに言われた通り、彼女へのプレゼントに下着をあげたい、という理由で俺は店内に立っている。
幸いにも、店員さんがすぐに来てくれて、まるで従者のように俺の言うことを聞いてくれたので、変質者扱いはされなくて済んだものの、やはり女性からの視線が痛い。
俺はプレゼント包装されたC65の下着を二着、ショーツ(パンツはショーツと言うらしい)二組ずつ買うと、大汗をかきながら店内を後にした。
もうこれで二度と勘弁だ、と思うが、結局後からもまた買い足しにいくことになるわけだが。
オナホを買うときより、百倍以上恥ずかしかった。
もう二度と来たくない。
とりあえず買うものは買ったので、またお炊きあげをする。
値札がついたまま抱き上げようとすると、値札は外せ、とユイがおっしゃる。
前回は値札がついたままだったので、ついたまま着なくてはならなくて難儀したらしい。
値札を一つ一つ外して投げ込む。
他人が見たらなんと思うだろうか。
規制の緩いアパートでよかった、と思う瞬間だ。
するとユイが、今度はブーツを買い忘れたと言い出した。
俺は適当にウェブで調べてそのまま注文した。
ブーツが届く。
そうか、最初から通販にしておけば、あんなに恥ずかしい思いをしなくて済んだんだ、と今頃思ったが遅かった。
ブーツのお炊きあげはかなり時間がかかった。
合皮なだけあって、なかなか燃えず、木切れを何回も追加する。
やっと燃え尽きる頃には夜になっていた。
しかし、ただ燃やすものを買うなんて勿体ない。
でも、ユイが必要としている。
俺はお金でも抱き上げたかのような気持ちになる。
「そんな顔しないでよ、バイト代で足りたでしょー?」
と言うユイに俺は弱かった。
「うん、そうだね……ま、いっか」
毎度毎度、ユイには変なところでポジティブにされてしまう。
こうして冬は過ぎていった。
卒業も迫る3月。
俺とユイが同棲を始めてから8ヶ月。
俺は相変わらずバイトに来ている。
俺の絵はなかなか売れず、売れたと思っても安値だった。
とりあえず、中学の教師免許はとれたので、あとは配属されるのを待ちながら絵を描くことに没頭できそうだ。
バイトは慣れたもので、もうレジの精算まで俺はこなすようになっていた。
そんなある日、バイト先の後輩に呼び出される。
なんかイヤな予感はしていたのだが、案の定――
「好きなんです!よかったら付き合ってくださいッ!お願いしますッ!」
俺はなぜか返事を保留にした。
なぜか?
それは、ユイがいてくれたとしても、その先に未来はないから。
俺だって生身の人間だ。
人間同士の温もりが欲しい夜もある。
ユイには言えなかった。
言ったら悲しませるだろう、せめてユイが成仏してからにすべきだろう。
悩んだ末、俺は後輩を断った。
そして考え始めた。
ユイが成仏することを。
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