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【連載小説】ガンズグロウ vol.24「噂」

『彼氏以外とラブホ行ったんだって?彼氏いるのに』

『リア充以下だな』

『このビッチが!』

そんなメッセージがガンズグロウに届くようになった。


なにこれ……

って言うか、誰がせせらぎとのことをバラしたんだろう。

タツキと付き合ってるのもわざわざ言ったことはないし、見たことない人物からもメッセージが届く。

『タヒね、かす』

『くたばれ、ビッチ』

仲間でもなんでもないのに、こんな中傷って…


みなもに相談すると、

「タツキさん、めちゃくちゃ怒ってましたよ。さやかちゃんが悪いんじゃないの?」

と、困ったように返事がきた。


ゆらぎに相談すると、

『バカが言うことにいちいち付き合わなくていい』

と返事。

そりゃそうなんだけど……


まず、誰がいいふらしているのか、真相を確かめないと。


レナに相談すると、

『ちょっと調べてみる』

と返事がきた。



憂鬱……



メッセージは日に日に増えていった。

『女のくず』

『失せろ、かす』

ガンズグロウを開かなければ見ないで済むのに、私はついつい確認してしまう。

もう、プレイどころの話じゃない。


相談したくないけど、せせらぎにも相談した。

『そりゃーさやかちゃんが悪いんじゃないの?』

と、けんもほろろ。


私は毎日毎日、中傷を見るためだけにガンズグロウにログインした。


チャットもやる気が起きなくて、みんなの会話を見てるだけ。

タツキはログインすらしていないようだ。


憂鬱……



レナから返事が来た。

『せせらぎがいいふらしてるみたいだけど、何かあったの、あなたたち』

『せせらぎとラブホ行った……』

『なんでそんなことに?とにかく今からそっち行くから。家にいるんでしょう?』

『うん……』

『すぐ行くから待ってて』

レナが来てくれる……

私は少しだけホッとする。


レナは原付を少々乱暴に停めると家にやって来た。


「話が見えないんですけど?!」

レナはちょっと怒っていた。

私は、居酒屋からホテルへ行った経緯を思い出せる範囲で説明した。

それから、それをタツキに言ってしまって、完全に無視されていることも。

「でも、それだけじゃせせらぎも言いふらしたりしないでしょ?!」

「あー、そういえばこないだ告白されて……」

「されて?」

「断ったの」

「あちゃー、それでか」

レナは頭を抱えた。

「それでって、どういう意味?」

レナは私に向き直ると、言った。

「あんたが振った腹いせに言いふらしてるってことよ」

「え……」

「もっと早くせせらぎがチームにいることを聞いておくべきだったわね。」

「どうして?」

「せせらぎは前にうちのチームにもいたんだけど、女性関係のトラブルがあって追い出したのよ」

「そうなの?」

私は両手をあげて喜べなかったことをふと思い出す。

「どうやら、前のチームも、その前のチームも同じように女性関係のトラブルで追い出されてるの。先日までいたチームも、同様」

「そんな風には見えなかったけど……」

「人は見た目で判断しちゃだめよ」

「うん……」

「で、肝心の中傷についてだけど、あっという間に広がったみたいで、私では対処不能な感じなのよね」

「うん……」

「一度やめて、アカウントとりなおすっていう手もあるけど」

「いや、いい…ゆらぎたちと離れたくないから」

「じゃあ、せせらぎを追い出す?」

「それはリーダーであるタツキの権限だもん」

「上坂くんとは、話してないの?」

「うん、取り合ってくれなくて」

私は思い切り空元気な笑顔を作った。

「私から上坂くんに話してみる」

「いや、聞く気もないだろうから、いいよ」

「だって、さやか、こんなにやつれちゃって……」

私はふと泣きたくなった。

でも、我慢した。

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