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【連載小説】ガンズグロウ vol.22「お泊り」

店につくと、タツキを除いた全員が到着していた。

全員と言っても二人だけど。


ゆらぎを奥に通すと、まず飲み物を決める。

とりあえず、ビールで!

みなもだけはオレンジジュースだった。



ゆらぎが挨拶をする。

「初めまして、ゆらぎです」

「俺はせせらぎ」

「僕みなもです」

「タツキさんは?」

「まだバイト中なんです。先に飲んじゃいましょう!乾杯の音頭はせせらぎさん、お願いします」

「えー、俺はこういうの慣れてないよ」

笑いながら言うせせらぎ。

「頑張って!社会人でしょ!」

「えー、では、僭越ながら、ご指名を承りましたので、ここに、ガンズグロウを祝いまして、乾杯したいと思います。かんぱーい!」

「「「かんぱーい!」」」


「まさか、ゆらぎが女の子とは思わなかったー!」

「僕も、てっきり男の人だと思ってましたー!」

「キャラが男だからな、男っぽくなるわ」

「俺もてっきり、騙されたなぁ(笑)」

ゆらぎ自体はいつもと変わらぬ口調。

そのギャップがまたすごかった。


その後は、せせらぎの腕自慢大会になった。

「せせらぎが入って、ずいぶん強くなった」

ゆらぎも嬉しそうだ。


「ゆらぎ、僕ともメアド交換、しようよ!」

みなもは嬉しそう。

「みなもは思った通りのキャラだな」

ゆらぎは笑った。



タツキが合流して、カラオケ大会になる。

思い思いに好きな曲を入れていったら、アニソン大会になった。


ゆらぎに、

「いつもそういう格好しているの?」

と聞くと

「出かけるときは、だいたい……おかしい?」

「ううん、すごく似合ってるけど、びっくりした」

「さやかちゃんもすればいいのに」

と横から口出しをするタツキ。

「私は似合わないから、いいの!!」

「着るなら、服……持ってきたけど」

「ゆらぎも悪のりしないのっ!」


酔いも回ってきたことだし、解散しようという話になる。

ゆらぎは宿をとってあるからと、タクシーに乗って行ってしまった。

みなもはタツキと帰ると言い出した。

いい加減酔っぱらったせせらぎが、

「さやかちゃん、また一緒にラブホに泊まりに行く?」

と言い出した。

「え?さやかちゃん?」

タツキが確認するようにこちらを向く。

「いいじゃん、行こうよさやかちゃ〜ん」

せせらぎは完全に出来上がっている。

私は酔いが一気に覚めた。

「また、ってどういう意味ですか?」

せせらぎに向き合ってタツキが聞くが、もうその声はせせらぎには届いていなかった。


「さやかちゃん、どういう意味?」

タツキが怒り気味に聞いてきた。

「酔っ払いの戯言でしょ?気にしない気にしない」

タツキは

「ホントに本当に、行ってないよね?」

と確認してきた。

しらを切り通せない私は、とうとう言ってしまう。

「実は、こないだ酔いがひどすぎて、介抱してもらって……」

視線をそらしながら私は言った。

タツキの顔が酔いとは別に赤くなっていく。

みなもはこの修羅場をどうしたらいいかわからない様子だった。

タツキは拳を握りながら、聞く。

「だったら、なんで次の日に言わないで隠していたんだ?何もなかったら言えるはずだろ?」

私は何も言えなかった。

タツキはせせらぎと私を残してみなもとタクシーで帰ってしまった。



私はせせらぎを引きずってタクシーに乗り、家の近くのネカフェに移動した。

せせらぎのお財布をちょっと拝借すると、住所と名前を記入して、受付を済ませた。


せせらぎとグループルームを借りるとそこで寝てしまった。



何かの物音で目が覚める。

せせらぎがトイレに行って戻ってきた様だった。


私が起きていることに気づくと、

「なんか介抱してくれたの?ごめんねー」

と頭を下げた。

「せせらぎさん、昨日言ったこと、覚えてますか?」

「昨日は途中から記憶が曖昧で……」

「なんでホテルに泊まったことなんて言うんですか?」

「え……俺そんなこと言っちゃった?」

私は泣いた。わんわんと声を出して泣いた。

これでタツキともお別れかもしれない……。

私はひたすら泣いた。

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