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【連載小説】ガンズグロウ vol.20「ラブホ!?」
この試合以来、せせらぎが積極的に話しかけてきた。
私は試合が終わってお仲間モードに入っていたので、気にも留めず普通に返事していた。
家も意外と近いことがわかってから、ご飯を食べに行ったりもするようになっていた。
タツキは特に何も言わなかった。
お互いが休みの日には普通にデートしていた。
だから、何も起きるはずはないと思っていた。
大学も始まったある日、せせらぎから夕飯のお誘いがあった。
せせらぎは会社員なので、こういう時は必ずおごってもらえる、そんな打算もあり、私は軽々しくOKを出す。
今日はどこに行くんだろう?楽しみだ。
今日は居酒屋だった。
おごりとわかってガンガン飲む私。
そんな私をニコニコしながら見るせせらぎ。
せせらぎは25歳だそうで、大卒で今の大手会社に入ったらしい。
そういえばタツキの年齢も誕生日も聞いてなかったな……と、ふと思い出す私。
「大学は、どう?」
「暇ですよー!講義中小説書いてる子がいるくらいですよ!」
「でも、社会人になってから、あの講義聞いときゃよかった、なんて思ったりするから、しっかり受けた方がいいよ」
「ははーっ、先輩の言うことはきっとその通りかと存じまする!」
「バイトの方はどうなの?」
「やり甲斐あるっすよー!毎日が充実してる感じ!」
「それなら居座ってそのままそこに就職とか……」
「それはないっすね。私、出版社で働きたいんですよ」
「なんだ、ちゃんと夢があるんじゃん」
「はい、夢だけは大きく、です(笑)」
せせらぎといると、楽しい。
それは男女としてではなく、仲間として、だ。
酔いがずいぶん回ってきて、後のことは覚えていない。
ふと目が覚めると、見慣れない空間にいた。
シャワーの音が聞こえる。
まさか……
シャワーの音が止まり、せせらぎがでてくる。
私もなぜか下着だけ……
せせらぎが部屋に入ってくると、
「なんだ、起きたのか、よかったな」
そして腰にバスタオルを巻いたままベッドに腰かけた。
「さやかちゃんも入っておいでよ、すっきりするから」
「はい……」
としか言えない私。
シャワーを浴びながら、いたしちゃったの?私、いたしちゃったの?
と、自問自答を繰り返す。
結構長い時間そうしていたのだろう、ふいに風呂場のドアを叩く音がする。
「おーい、大丈夫?」
「あ、はい、大丈夫です」
慌ててお風呂からでる。「着替え、そこにおいといたから」
わざわざ畳んだ服が置いてある。
私はそれを着ると、恐る恐る部屋に戻る。
せせらぎももう着替えたようだ。
「あの……私……」
いたしちゃったのか聞きたいのだが、うまく言葉が見つからない。
そんな私に気づいたせせらぎは、笑いながら
「なにもしてないよ。お姫様の吐くのがあまりに止まらなかったから、急遽、休憩。」
「す、すみませんっ」
「いや、いいよ。実にいい飲みっぷりだったしね。終電も終わっちゃってるから、ここで始発までのんびりしようか?」
「はい……」
せせらぎは冷蔵庫を開けると缶酎ハイを取り出して、飲み直し、と言った。
私は一本もらい、ごくごくと飲む。
「またそんな、一気に飲むとまた気持ち悪くなるよ?」
「喉が渇いてて」
「まあ、あれだけ吐けば、確かに」
と言って笑った。
つられて私も笑った。
朝になり、私は目覚めた。せせらぎはソファーで寝ていた。
これがせせらぎの誠意なのだろう。
私の携帯が鳴る。
タツキからだ。
思わずドキッとする。
『家に遊びにきたけど、いないのー?』
ドキドキしながらメールを返す。
『昨日飲み過ぎちゃって、今ネカフェにいるよ』
『何時ごろ帰るー?俺待っとくわー』
『すぐ帰るね。喫茶店でも行って待ってて』
慌ててせせらぎを起こす。
事情を簡潔に話すと、
「なんだあ、さやかちゃんの彼氏ってタツキのことかぁ」
「うん、だから、今日のことはオフレコで!」
「了解!」
こうして私たちはラブホをあとにしたのだった。
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