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日本でなぜブランドアクティビズムは一般的にならないか?「ブランド」をマーケティング・コミュニケーションの視点だけで扱わないことの重要性

日本でなぜブランドアクティビズムは一般的にならないか?「ブランド」をマーケティング・コミュニケーションの視点だけで扱わないことの重要性についてまとめます。


はじめに

ブランドアクティビズムは、企業やブランドが社会的、環境的な課題に積極的に取り組む姿勢を指します。
欧米では、ナイキの「Just Do It」30周年キャンペーンやパタゴニアの環境保護活動など、多くの企業がブランドアクティビズムを実践し、社会に影響を与えています。

しかし、日本ではこの概念が一般的に普及しているとは言い難い状況です。

電通報の記事は日本におけるブランドアクティビズムの現状と、その普及を妨げる要因について考えるきっかけになりました。


ブランドアクティビズムの現状

ブランドアクティビズムは、企業が利益追求だけでなく、社会的な責任を果たし、ポジティブな変化を促すことを目指す活動です。欧米では、消費者が企業の倫理的行動を重視し、SNSの普及により企業の行動が迅速に評価されるため、ブランドアクティビズムが広がりました。上記の電通報の記事では、ブランドアクティビズムをめぐる用語の説明をはじめナイキの同性婚合法化を支持する「Swoosh Vote」キャンペーンなどの事例を用いて現状を詳しく説明しています。

そもそもアクティビズムとは?

このnoteではActivismは「積極行動主義 積極行動主義(せっきょくこうどうしゅぎ、アクティビズム、アクティヴィズム、英: activism)は、行動主義のひとつであり、社会的・政治的変化をもたらすために特定の思想に基づいて意図的な行動をすること」と定義します。


個人はもとより企業の活動はより良い社会を実現することにおいて積極的に行動すべきです。企業が持つ特定の思想は企業フィロソフィーや企業が存在するパーパス(意義)、ミッションやビジョンとしてすでに明示されているので、それを実現すると言う点では一般的な活動です。


改めて日本の現状

上記を踏まえて日本での現状を僕なりに見てみます。日本では、企業が社会的責任を果たすCSR活動は広く行われていますが、積極的なブランドアクティビズムとしての展開は限定的です。
その背景には、「アクティビスト」における「社会的な政治的変化をもたらす特定の思想に基づく」ということに対する消費者の抵抗感がありそうです。

また報道などを通じて、アクティビスト=過激というイメージが普及しており、企業が自らをアクティビストと位置付けることに抵抗を感じる傾向があります。

例えば、アクティビスト個人投資家である田端さんの活動をめぐる論争などからもそれを感じることができます。


日本でなぜ普及しないのか?

日本でブランドアクティビズムが普及しない理由は、いくつかの要因が考えられます。

1. 文化的背景:日本社会は調和を重んじる文化が強く、企業が政治や社会問題に関与することを避ける傾向があります。企業は中立的な立場を維持し、消費者の多様な意見に配慮するため、むしろ積極的なアクティビズムを展開することが難しいのです。

2. リスク回避志向:日本企業はリスク回避を重視するため、社会的・政治的な問題に対して強い意見を発信することを控えます。消費者の反発や批判を恐れるため、ブランドアクティビズムを展開することがリスクと見なされがちです。

3. 消費者の反応:日本の消費者は企業の社会的メッセージに敏感でありながら、企業が積極的に社会問題に関与することを期待していない場合が多いです。企業のアクティビズムが社会的対立を引き起こす可能性があるため、消極的になる傾向があります​​。

統合マーケティングとマーケティング・コミュニケーションは異なる

日本では、ブランドアクティビズムが統合マーケティングの一部としてではなく、PRや広告を通じたコミュニケーションの文脈で語られることが多いです。社会的な争点・論点をコミュニケーション上のレバレッジとして企業が社会的責任や企業倫理を強調するPR・広告・宣伝活動に活用してきた経緯があります。

ブランドアクティビズムをむしろPRや広告自体の革新のための材料に使ってしまっていることが最大の問題です。

PRや広告文脈だけでブランドアクティビズムを語ると、表層的な活動になったり、「ウォッシュ」(企業が表面的に社会的責任を果たしているように見せかける行為)と非難されることがあります。

これを避けるためには、企業が自らの活動によって生み出す価値こそブランドであることを理解し、統合マーケティングの観点でブランドアクティビズムを捉える必要があります。

すなわち、ブランドアクティビズムを「もの言う」以上のアクティビズム本来の目的で活用する必要があるのです。

まとめ

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