見出し画像

リフタ / Lifta 世界から注目される

Nakba それを聞いてピンとくる人が少ないようにLiftaを聞いてそれを知っている人を見つけるのはここ日本においても、ヨーロッパにおいてもなかなか難しいだろう。

照りつける太陽を背に少し大きめの石砂利と急な坂道で足を滑らせそうになりながら吸い込まれるようにリフタ村へと入る。
いつものようにプールで遊ぶこどもたちを横目に小川を越え、先へ急ぐ。
外国人(そういうわたしが外国人なのだが)はそうそういない村の中に人の気配がする。
左の少し坂を下りたところから声が聞こえる。どうやらドイツ語、ドイツ人の観光客なのか、それともユダヤ系ドイツ人なのか。
覆い茂る草木が落ち着いた太陽が再び勢力的に光をさすところ、その左側の人がいるであろうあたりに目をやると2人の男性と1人の女性がいた。
そのうちの1人の男性は明らかに素人用ではない少し大きめの動画用のカメラを持っていた。持っていたというより右の肩に乗せていた。女性の手にはマイクがあった。
ココがどこかの国のTVで特集される?
テレビでこの近郊が放送されるのは往々にしてエルサレム問題、入植地のこと、デモ隊との衝突・・・
この豊かな緑を見るだけで視聴者のパレスチナに対するイメージは変わるだろう、そう思った。
こちらの気配に撮影クルーも気づき3対1で視線が合う。口角を上げ軽く会釈をしわたしは先へ向かった。
好きな家があった。主人のいなくなった家は玄関が壊れ(壊され)、中に入るとその窓から対岸の家や木々が見える。外の太陽は遮られ石造り特有のひんやりとした感じと開けっ放しというか閉める扉のないおかげで風が抜ける。
窓の縁に座り遠くを眺め休むことにした。


カメラクルーがこの部屋に入ってきた。

ここで撮影するの?それだったらわたしは移動するけど。
いいのよ、ここにいて。あなたはここで何を?
わたしはここが好きで。ここがアラブビレッジだったなんて最近まで知らなかったけど。
それを知ってどんなところだったのか興味が湧いて何度か来ているの。
カメラ回せる?OK あなたはどこから?少しインタビューさせてくれない?
この番組はインターナショナルなんだけどドイツのTV局で、ナクバに関する番組を作っててリフタを取材しているの。日本からも人が来てるって思わなかったわ。エルサレムは初めて?
実はパレスチナが好きでエルサレムだけじゃなくて、西岸のいろんな街に行ってて7回目かな。
ここはどうやって知ったの?
はじめは人に聞いて。それで日本で本を読んだからここがナクバでなくなった村の1つだと知ったの。

知らないうちにインタビューが始まっていた。
パレスチナが好きなこと、日本では西側のニュースが多いこと、パレスチナ料理は個人的遺産だから残して伝えたいこと、国際社会はパレスチナを無視して欲しくないこと、だからお料理していること。そんなことを話したと思う。それは無我夢中で話をした。

ドイツはその歴史のせいで、イスラエルのことに触れるのはタブーなこともあったりユダヤ人を悪く言えない空気があることを知っていた。みんながみんなではないかもしれないが、ドイツの友人にパレスチナが好きで行ってきたのよ!と言うとイスラエルの話はちょっと。歴史のことがあるからドイツ人のわたしは意見が言えないよ、と言われたことがある。
そんなドイツの会社がパレスチナの特集をしていると知ってわずかかもしれないけどでも確実に時代は変わっていると実感した。|

この家が待っている人はわたしの本拠地である日本よりも近い場所におそらく住んでいるだろう。もしかしたら物理的な距離はわたしの方がはるかに遠いが実際はわたしの方が簡単に来られるのかもしれない。70年も主人を待ち続けるこの家の寂しさ、わたしは縁から立ち上がり少しだけ残っている床のタイルを撫で、ひんやりとした湿気を含んだ壁に手を当てた。

嘆きの壁。エルサレム旧市街にあるエルサレム神殿の現存する西壁。石造りのこの壁は朝方になると夜露で壁が濡れそれがまるで涙のようだ、ということで嘆きの壁と言われるようになったとか。

パレスチナ、ユダヤ人の言うところのエレツイスラエルには嘆きの壁がいくらでもある。

あなたがサポートしてくれた分を同じだけ上乗せしてパレスチナのジェニン難民キャンプで使います!!もしジェニンをサポートしたいと思ってくださった方はこちらへ< https://thefreedomtheatre.org/donate/ >