エルサレムのアルメニア

アルメニア人地区には多くのキリスト教に特化したお店がある。絵やタペストリー、キリスト像やマリア像、そしてお香。エルサレムはユダヤ人地区、ムスリム地区、キリスト教徒地区のエリアがあると思っていたがアルメニア人地区が最小ではあるが思ったよりも広いことに驚いた。アルメニア地区というとイランにもあったのを思い出す。イランはアルメニアと国境が接しているとはいえ、イスラムシーア派の国だがアルメニアキリスト教会が素晴らしかった。

エルサレムのアルメニア人地区を歩いていると店舗の軒下で椅子を出して座っている店主が微笑みかけてきた。思わずわたしもにっこり。

店主・観光かい?

わたし・そうです。

店主・まあ、見て行きなさい。見るのはただだから。

どの国でも同じような文句があるもんだな、と感心しながら店の中に入ることにした。

店主・暑いだろう、お茶でも飲みなさい。

そう言って店主は冷たいミント入りの紅茶を出してくれた。

店主・どうだい、エルサレムは?

わたし・なんだかすごいエネルギーだと思ったの。わたしはクリスチャンでもムスリムでもジューでもないんだけど、不思議な気持ちよ。

店主・そうだろうね。ここはエネルギーがすごいんだよ。君はそれがわかると思ったから声をかけたんだ。君のために祈りを捧げたいけどいいかな?

そういって初老の店主はお香を見せてくれた。

店主・このお香は薔薇の花から出来ていて手作りなんだ。年に一度作るんだよ。香りもいいし、きっと君を守ってくれるはずだよ。

警戒心がないわけでもなく、よくわからなかったのだけど、これも経験と思い快諾した。火をつける前からお香は本当に薔薇のいい香りがしていたせいもあった。

宗教行事に使うような燻んだ金色の真鍮の香炉を用いて香を焚きわたしに目を瞑るように言う。

頭から足の先までそのいい香りがする煙に燻され小声で何か祈りの言葉を囁いているのが微かに聞こえる。

祈りの言葉は意味がわからなくても音の波長の心地よさは仏教のお経でもイスラムのコーランでも同じだった。瞑想状態なのか、疲れからくる眠気なのかゆらゆらと身体が揺れ心も身体も心地よくうっとりとしてきた。煙は相変わらずもくもくとしており店中に薔薇の香りが広がった。

店主・君は守られている、君の行く道は大丈夫だよ。

優しくそう言って、祈りは終わった。

わたし・ありがとう。なんだかとても心地よかった。

店主は微笑み、またおいでね

と言葉を交わしわたしは店を後にした。

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