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NHKBS「欲望の資本主義2021~格差拡大 社会の深部に亀裂が走る時~」を観て

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

前回の投稿からかなり時間が空いてしまいましたが、今日は久しぶりにゆっくりできる一日だったので、昨日録画したNHKBSの「欲望の資本主義 2021~格差拡大 社会の深部に亀裂が走る時~」について記します。

この番組では、これまでの資本主義の歴史を紐解いて分かりやすく解説されていて、興味深く視聴しました。ただ、コロナ という2020年の変化と長期的な変化が混在していたので、やや混乱しました。そのなかで、後者については、20世紀後半の、高度経済成長→オイルショック→「労働による富」から 「資本による富 」への転換や、グローバリゼーションの開始(72年のニクソン大統領訪中あたり)と終焉(昨今の米中関係悪化)といった教科書的な話がうまくまとめられていました。

短期と長期が混在していた点については、番組としては、グレン・ワイル氏の「2020年は、これまで35年を全て詰め込んだ1年」という言葉で、「欲望の資本主義2021」 を語ろうとしたのかもしれません。ただ、オートメーション化、スタグフレーション…といった35年が昨年に全て詰め込まれていた、というのは言い過ぎのような気はします。また、果たして、昨年は最も格差が広がった年だったのか?もう少しデータを見てみたいところです。

トッド氏による、ケインズはトランプ をどう評しただろう?という問いのデザインは秀逸でしたね。トランプの経済学的なセンスには魅了されただろう、とのこと。また、イェール大学のシラー教授は、トランプは「アメリカは資本主義的な国であり、株式市場を重視する」というナラティブ(語り口)を大いに増幅させ、アメリカは世界一高額な株式市場に成長した、とのことでした。一方、「今のヨーロッパは無秩序状態」というトッド氏のコメントから、ヨーロッパの厳しさを改めて痛感しました。

また、高度成長を象徴する人物として長島選手がとりあげられていたのは面白かったです。ドジャーズの戦法をとりいれてV9を実現した川上巨人は、確かに高度成長期に日本経済が米国を見習ったアナロジーですね。ということは、1975年に長島巨人が最下位に沈んだのは、野球学的にはスタグフレーションによるものだったのでしょうか?そしてその後の復活(若手育成による強化)は、レーガノミクスによるものか…そこまでは共通項はありませんね(失礼)。

アメリカ型資本主義と北欧型資本主義の間に位置する「禅的資本主義」という概念はもう少し話を聞きたかったです。

MITのアセモグル教授が重視する「社会規範(Social Norm)」の必要性には強く共感しました。ラッファーカーブは、x軸に社会規範、y軸に欲望を入れても成り立つような気がしますね。その『Think right カーブ』で、「欲望の資本主義」の構造が説明できるような気がします

その他、インペリアルカレッジのハスケル教授による「無形資産」についての議論など、様々な視点で内容が濃く、なかなか一つの投稿には書ききれないので、また時間がある時に感想を追記したいと思います。