オワリはじまり32 「祖母の数珠を持って…」

祖母が足の手術を行った12月20日の早朝、祖母の妹が亡くなった。

祖母の家系的に心臓や血管の病に苦労する人が多いのだが、祖母の妹はここ1〜2年ぐらい悩んでいた。そして2ヶ月前ぐらいからは、妹の娘(父の従姉妹)から「いつその時が来るかわからない状態」であることを聞いていた。

今年は1度ぐらいしか会っていないが、「身体は衰えているが、頭はばあちゃんよりもはっきりしている。」という感じだった。その時点ではまさか祖母よりも早くその時を迎えるとは想像できなかった。

そんな祖母の妹の通夜と葬儀は22日金曜日と23日土曜日に行われ、家族葬用の式場には祖母の妹家族、祖母の兄妹、その兄妹の子や孫が久しぶりに集まり、式が終わった後の会場はコロナ以前の親族の集まりの時のような和気藹々とした空気が流れていた。

しかし残念なことに、祖母は骨折のため入院しているので参列できない。
認知症だとしても、妹の存在と顔は未だ覚えているので僕も父も参加させてあげたかったが、できないことはできない。

そこで、僕は祖母が以前愛用していたピンク色の数珠(明らかに女性用)を使い、お経を聞いている間もずっと握りしめていた。

これが今の僕が祖母のため、そして亡くなった祖母の妹のためにできる最大限のことだったと思っている。

訃報の連絡を受けてから、僕は1つ悩んでいることがある。
それは「いつ祖母に妹が亡くなったことを伝えるか?」についてだ。

「祖母は妹が亡くなった事実を理解できるだろうか?」

「言ったところで忘れるだろうな。そしていずれ言ったときに『なんで早く言わなかったのか!』と言うだろうな」

と、認知症ならではの問題が僕を悩ませている。
そして、入院という精神的に辛い状況下で妹の死を伝えるとさらに辛くなることも想像できる。

だから、今はどうしてもそのことを祖母には言えない…

この記事を書いている日である24日の夕方、僕は父と病院に行き洗濯物を回収するついでに祖母の様子を見る予定なのだが、どうしても伝えようという気持ちにはなれないのだ。

現在の僕のプランでは、祖母が退院後再び施設に戻り、元気になったタイミングで伝えようと思う。そして通夜の時に家族・親族用に用意されていた「感謝状」というA4サイズの用紙をもらってきたので、その時が来たら祖母に書いてもらい僕と父が仏壇に備えさせてもらう予定だ。


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