オワリはじまり29 「入院は突然に」

12月16日正午、僕の携帯にケアマネからの不在着信が来ていた。
介護保険の勉強のため、集中力を保つために携帯をあえて別室に置いていたため、電話がかかってきたことを知らなかった。

祖母を施設に入れてから、初めてのケアマネからの電話。
在宅介護中もそうだったが、ケアマネから電話が僕に直接連絡がくるという状況は基本的に良いことではない。

「こりゃ、ばあちゃんに何かがあったな。」
「わざわざラインではなく電話をしてきたということは、俺がこれから病院とかに連れていくパターンかな?」

不在着信を確認し、折り返しの電話をかけるまでのわずかな時間
僕の脳内では上記のことを考え、そして自分なりにある程度状況を理解していた。

いざ電話をかけると…

「〇ちゃん、私よ。もしかして寝ていた?」

と、いつも通り大きな声でハキハキした話し方のケアマネが、これまたいつも通りハイテンションで電話に出た。ちなみに「もしかして寝ていた?」の確認については、在宅介護をしていた時の僕が介護が原因で生活サイクルが乱れ、起きる時間がいつも昼過ぎだったからである。

ケアマネに、勉強中で集中力を削らないために携帯を別室に放置していたことを伝えると、間髪入れずに電話のメイントピックを伝えてきた。

「実はね、〇〇さん(祖母)が昨日の夜中にトイレに行こうとして転倒したの。」

「午前中、〇〇(かかりつけ院)に連れて行ったんだけど、左の大脛骨が折れているらしいの。即入院が必要な状況よ。」

「入院手続きには家族が来ないと行けないの。〇さん(父)に電話したんだけど、〇〇に遊びに行ってるのね。ごめんだけど、〇ちゃん(僕)今から来てくれる?」

最後に関しては、この日父は仕事が休みで本来なら即対応可能だったはずなのに、この日に限っては自宅から車で片道2時間のところに友人と遊びに行っていた。

ケアマネからの電話で介護保険の勉強どころではなくなった僕は、急いで身支度を終わらせた後病院に向かった。

あまりに突然の出来事

ケアマネとの2分ぐらいの電話で状況をある程度理解し、病院での道中に僕は色々なことを考えていたが、まず一番に考えてしまったことは次のことだ。

「入院か…こりゃさらに(認知が)進むな。」

僕は介護をしている時から周りの介護経験者からこのことを良く聞かされていた。
Mさんからも、親友からも、僕にとって憧れの車であるコペンを所有していて以前2回ドライブに連れて行ってくれたあの人も…みな口を揃えて、「確実に進む」と僕に言っていた。

ただでさえ施設に入居して以来、症状が進行している祖母が入院するとなると、どれほど進むのだろうと考えてしまった。

介護中もそうだったが、先が見えず正解がわからない状況を考えていても仕方ない。約20分の運転中で僕は「入院手続き」という第1に取り掛かる必要があるのだ。

病院に到着し、夜間・緊急外来で祖母の名前を名乗った後、僕は案内された先で施設職員と合流した。そこでケアマネとの電話中に知りえなかった祖母が転倒し骨折するまでの詳細を聞くこととなった。

そして少し話した後に沈黙の時間があったのだが、とあるきっかけで話が盛り上がった。それはふと職員が施設から持参していたファイルの中身である。初めは祖母の情報が詰まっているのだろう程度に思い横目で見る程度だったが、ファイル内の書類の1つに「アセスメントシート」と書いてあるのに気づく。

「あ、これがアセスメントシートなんですね。初めて実物を目にしました。実は今介護保険制度を勉強していまして…」

この言葉をきっかけに、僕はそれまで横目で見ていたファイルを堂々と見ることができた。

結局僕が病院にいたのは12時半〜16時までの間、父が14時半に到着するまでの間は基本的に1人で対応した。その間に僕は医師と看護師による手術と入院のプランの説明を受け、病歴などの祖母の情報を口頭や書類で伝えた。

その中で特に時間を要したのは、祖母の情報を伝えることだった。
手術までの残り日数を安静に過ごさないといけないのは最重要なことだが、悲しいことに祖母は理解できない。在宅介護中にあれほど動き回り、徘徊などで僕がストレスをたくさん抱えていた状況を今度は看護師が対処しないといけないのだ。

だから孫であり、祖母の介護を最も近くで行ってきた僕だからこそ伝えることを全て伝えた。

また気にしなければいけないのが、「どうやって安心できる環境を用意してあげられるか」である。僕もそうだったが、看護師もせん妄の恐れを懸念していた。手術までに、そして手術が無事終わった後順調に退院できるようにするためにも、祖母にはとにかく安静にしてもらわないといけない。今施設で落ち着いて暮らせているのであれば施設内の祖母の部屋に近い状況を作らないと、と思い、僕と父は本来は入れない夜の時間帯に特別に病室に行き、写真をいくつか置いていった。

今日僕は父と協力してあるものを祖母のために用意する予定だ。
そのことは後日書いていこうと思う。

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