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複合施設「tone village」が生まれるまで

私たち、デザイン会社である「アプリコットデザイン」の理念は「シアワセをデザインする」なのですが、その根底には「関わる人たちが充実した幸せな人生を送れるように」という願いがあります。

創業時に「LIFE&WORK DESIGN COMPANY」と掲げてから10年、ようやく暮らしや生き方をデザインするためのスタートラインに立つことができました。

2023年6月、デザイン会社・カフェ・ドッグサロン・ネイルサロン・スクールが集まった複合施設「tone village」がオープンしました。

今日はオープンまでの奮闘記をお届けしたいと思います。これからお店を始める人や、多角化などで新事業を始めようと思われている方の励みになれば幸いです。

2022年夏、土地との出会い

ずっと前から、事務所を新しい場所に移転したいと考えていて、できれば自分たちの建てた新しい建物に移りたいと思っていました。でも、なかなかピッタリの土地が見つかりませんでした。気に入った土地は見つけるとすぐに売れてしまうんです。

ある日、よくお世話になっている銀行の方から「良い土地が見つかりましたよ」と連絡が入りました。すぐにその土地の情報を見せてもらったら、まさに僕が探していた条件にピッタリ合う素敵な場所でした。

良い土地はすぐに売れると知っていたので、僕はすぐに行動に移りました。銀行の方に連絡して、その土地を扱っている建築会社の人と一緒に土地を見に行きました。

広々とした200坪の土地

その土地は立地が良く、200坪もあって、事務所としては少し大きすぎるくらいでした。その場で、以前から考えていたアイデアが頭に浮かびました。それは、トリミングサロン、ネイルサロン、カフェが一体になった複合施設を作るというものです。これまでずっと夢だと思っていたそのアイデアが、その土地を見た瞬間、実現可能に感じました。

思い立ったら即行動

土地を見てからすぐ、建築会社の事務所に行って、頭にあったアイデアを手書きで説明しました。その後、おおよその見積もりをもらう約束をして会社に帰りました。

会社に帰る道すがら、冷静に考えたら、僕のアイデアはとても大胆で、実現するのが難しいかもしれないと思い、ほとんどあきらめかけました。

数日後、建築会社から見積もりが届いたんです。その高い金額を見て、さらにあきらめようかと思いました。「こんなにたくさんのお金を銀行から借りられるわけがない」と考えました。

でも、これが最後のチャンスかもしれないと感じたので、何とかしてみようと決め、銀行に出す企画書を一生懸命に書きました。

銀行は、お客さんが信頼できるか、そしてその計画が将来うまくいくかを大事に考えてお金を貸します。僕たちは始めてからずっとお金を借りてはちゃんと返してきたので、信頼についてはクリアしていそうです。問題はプロジェクトの将来性でした。だから、銀行の担当者が上司に提案しやすいような資料を作りました。

その結果、融資が通ったんです。

その知らせを受けたとき、時間が止まったように感じました。そして、空を見上げて心の中で「やったー!」と叫びました。

まさか、夢のまた夢だった計画が本当に実現するなんて、夢みたいでした。

コンセプトをつくる

実行することが決まったは良いものの、たくさんのことを一度に始めなければならなくて、少しパニックになりました。お金のこと、契約のこと、建物の設計や外装、内装の準備など、色々なことが同時に進んでいきます。

建築会社と相談した結果、建物が完成するのは2023年の3月ごろになることがわかり、オープン日を5月に決めました。

決めたは良いものの、逆算してみると、たくさんやるべきことがあります。だけど何はともあれまずはスタッフの採用です。特にトリミングサロンとカフェの採用は、新しい試みで専門性が高いため難しいことが予想できます。

採用は早めに始めなければいけませんが、建物もまだ無く、サービスもまだ決まっていない状態で、本当に人を集められるか不安です。

そこで、まずは施設のコンセプトを作り始めることにしました。

今回は、施設全体のコンセプトと、それぞれの店舗のコンセプトが必要で、最初に施設全体のコンセプトを考えました。

考えるべきことは以下の通りです。

●なぜこの複合施設を作るのか
●会社のビジョンやミッションとどう一致しているか
●社会にどんな価値を提供するか

特に大切にしたのは、社会にどんな価値を提供できるかという点です。最近、会社の存在意義(パーパス)がとても重要視されているからです。

施設の名称を決める

僕たちの仕事はブランディング・デザインです。これは、会社の良いところを見つけ出し、その良いところを分かりやすく伝えることで、その会社の価値を高め、売上を増やすことを目指しています。

この考えを「色」という言葉で表しました。

●色を見つける
●色を輝かせる
●色を磨き続ける

この三つのステップを使い、ブランディングで色を見つけ、デザインで色をきらびやかにし、ずっとその色を伝え続けることで、色を磨いていきます。

これにちなんで、複合施設の名前に「色」に関連する言葉「TONE(トーン)」を選びました。「トーン」とは、色を調合することや、調子を整えることを意味します。僕たちは仕事でよく「トーン」という言葉を使います。

ただ「トーン」だけでは物足りなかったので、他の言葉と組み合わせてみました。「TONE CROSS」や「TONE CONNECT」などを考えましたが、なかなかしっくりくるものが見つかりませんでした。

複合施設はコの字型で、中央には庭があります。ここで多くの人が集まり、いろいろな話をしてコミュニケーションを深める場所になればと思い、この形にしました。

僕たちはデジタル中心で仕事をしてきましたが、アナログの大切さも忘れていません。コロナウイルスの流行で、社会はデジタル化が加速しましたが、人と直接会って話すことの大切さを再認識した人も多いでしょう。

そこで、この複合施設をデジタルとアナログがうまく合わさった場所にしたいと考えました。そして、「ビレッジ(村)」という言葉が思い浮かびました。アナログとデジタル、街と村はどちらも対立する言葉ですが、それが面白いと思い、「トーン」と「ビレッジ」を組み合わせて「トーンビレッジ」と名付けました。

トーンビレッジのコンセプトと社会的意義

日本の社会を見ると、30年間で給料があまり上がっていないという問題があります。この原因は、企業が適切な利益を出せていないからだと思います。例えば、本来200円の価値があるものを100円で売っていては、その価値が正しく評価されていない状態であり、思うように利益が生まれません。働く人も同じで、働いた分の価値が適正に評価されれば、給料も上がるはずです。

企業と個人は違うように見えますが、根本的な問題は同じです。私たちが行っているブランディングやデザインの仕事は、本来の価値を正しく評価してもらうためのものです。これを個人に当てはめると、自分の「色」を見つけ、その「色」を輝かせ、続けて磨くことで、自分の価値が上がり、社会も良くなると思っています。

だから、トーンビレッジの社会的な意味は、個人が自分の能力を最大限に伸ばす手助けをする場所になることです。

この考えから生まれたトーンビレッジのキャッチフレーズは、「それぞれのらしさ溢れる日常を」です。訪れた人が自分に納得する人生を送れるようなきっかけを提供したいと考えたのです。

「自分らしさ」とは、自分自身に納得している状態を意味します。これを仕事に置き換えると、仕事をただの仕事と思わず、夢中になれる遊びのように感じられることです。仕事に没頭しすぎてご飯を忘れてしまうほど楽しく、探究心が湧いてくるような状態です。こんな人が増えたら、社会全体がもっと楽しくなるのでは?と思いました。

価値を明確にする

コンセプトが決まった後、複合施設の価値をはっきりさせます。

訪れた人が自分らしい人生を送れるようなきっかけを与え、自分らしい人生を送るためにはどうしたらいいかを考えました。

まず大事なのは、施設に訪れた人が前向きな気持ちになること。新しいことを発見できること。また、訪れた人が元気になったり、束の間の休息がとれることも大切です。

自分の良さを見つけるためには、自分自身をよく理解することが必要です。そのためのきっかけをtone villageで提供したいと思いました。

これらの考えから、私たちが提供したい価値が生まれました。

新しいトキメキは人生のスパイス

視野を広げれば、世の中には知らないことばかり。世界には、人生を変えるワクワクが溢れてる。訪れるたびに出会う新しい自分と新しい発見。ここにはきっと、あなたの人生に豊かさを与えるとっておきのスパイスがある。

自分のイロ(個性)を探し輝かせる

「わたしの人生、このままでいいのかな?」そんな疑問が心に浮かぶ瞬間はありませんか?なんとかしたくても、具体的な行動はもちろん、自分の個性や価値も、なかなかわからない。ここにはそんなあなたへのヒントが隠れているはず。

イロドリある豊かな時間をお届け

忙しい毎日では、身近なシアワセを見逃してしまう。一度きりの人生を、楽しく豊かに暮らしたいと誰もが願っているはずなのに。そんなときにこそ一度立ち止まって、”調子”を整えてみませんか?明日からまたがんばれる自分になるために。

これらの価値を元にして、各店舗のコンセプトを作り始めます。

各店舗のコンセプト

ネイルサロン

「色を纏い自分らしく生きていく」
忙しい毎日を、ほんの少しだけ忘れるような穏やかな時間の中で、あなたらしい色を一緒に見つけ、そっと背中を押すサロン。

トリミングサロン

「特別な日常ではなく、穏やかでずっと続く日常を。」わんちゃんの心と身体を大切にすることをモットーにしたトリミングサロン。

カフェ

tone villageのまんなかで、誰もがほっと一息つける場所。ゆっくり一人の時間を楽しみたいときも、大切な誰かと優しい時間を過ごしたいときも。日常のさまざまなシーンにフィットする、そのままのあなたに寄り添うカフェ。

スクール

あなただけの「色」を見つけて輝かせる場所。日々の暮らしを少し豊かにするための講座が受けられる『ライフスタイル部門』と、自分らしく働くヒントを見つける講座・セミナーを開催する『ワークスタイル部門』の2つのカテゴリーを設け、tone villageを訪れるみなさまの“わたしらしく生きる”未来を一緒に考え、作っていきます。

それぞれのコンセプトを考える上で気をつけたのは、一貫性があること。自社の価値観と複合施設の価値観、各店舗に至るまで、どこを切っても絵柄があらわれる金太郎飴のような一貫性を意識しました。

建物が完成して準備が本格化する

ついにオープンの1ヶ月半前に、建物が完成しました。この時から、事務所の引っ越しや店舗の準備が始まりました。

準備することはたくさんありました

●店舗の設備を手配する
●決済システムを整える
●音響やインターネットの設置
●セキュリティの確保

特にカフェでは、メニューを決めるために何度も試作を重ねたり、店でのオペレーションの流れを整えたりと、準備がとても大変でした。本当にオープンできるのかという不安を常に持ち続けながら。

●看板のデザイン
●名刺やパンフレット
●店頭のPOP
●ショップカードやポスター

僕たちの得意とするデザイン制作も、4店舗分作る必要がありとにかく大変でしたが、コンセプトがはっきりしていたので、意外とデザイン制作にはそれほど時間がかかりませんでした。

準備の途中、コロナの影響で必要な機材が入荷しないなど、トラブルや新たな課題が見つかることは日常茶飯事でしたが、そんな問題を乗り越えて、なんとかオープン当日を迎えることができました。

オープン当日は、関係者のみなさんからたくさんのお花をもらい、ついにオープンしたんだなと実感しました。そして、これからが本当のスタートだと感じ、気持ちが引き締まりました。

新規事業は人と集客がカギ

新しい事業を始める時は、働く人を集めることと、お客さんを集めることがすごく大事です。これはどんな事業でも同じですが、新しい事業を始める時には特に重要です。

私たちはデザイン会社で、たくさんのお店の開店をお手伝いしてきました。準備が忙しいと、ついついお客さんを集める準備が後回しになりがちです。なぜなら、開店の準備が最優先になるからです。

僕はこれを知っていたので、忙しい中でもお客さんを集める準備を進めるようにしていました。コンセプトやロゴが決まると、すぐに採用活動とホームページの準備を始めました。

まだ写真やメニューが決まっていなかったので、ホームページはシンプルなものになりましたが、オープン前にたくさんの人に知ってもらい、興味を持ってもらうことは大切だと思いました。

インスタグラムも早くから始めて、少しずつ情報を発信しました。

その他、社内では開店後の宣伝活動についても話し合いました。仮のホームページができた後は、私たちの得意な情報発信を始めました。

普通、お店が開店する直前や当日にホームページを公開することが多いですが、僕たちは半年も前からホームページを作り、情報を発信し続けました。

集客活動について

今回のプロジェクトで、お客さんを集めるためにInstagramとホームページを使いました。ターゲットは20代後半から30代前半の女性でしたので、これに合わせて、Instagramとホームページをメインに活用しました。

写真が少なかったので大変でしたが、情報を発信する際には、相乗効果を生むよう心がけました。例えば、採用活動をするときには、私たちのコンセプトをしっかり伝えることで、同時に認知度を広げるように工夫しました。

オープン前には、メニューがどう進んでいるかを少しずつ公開して、期待を高めました。また、カフェでの試食会を開催して、新しい情報を広げる活動もしました。

オープン時にはプレスリリースを出して、ニュースやメディアに取り上げてもらうこともしました。その結果、オープン月のホームページアクセス数は1万件を超えました。

私たちはいつも情報を発信することの重要性を感じています。自分たちの価値をしっかりと伝え続けることが大切だと思っているからです。それが良い結果につながったと思います。情報の管理やコントロールがとても重要だと、改めて感じました。

採用活動でコンセプトの重要性を知る

コンセプトが決まった後、すぐに人を採用する活動を始めました。会社の採用サイトを作って、いろいろなところに知らせました。

カフェの求人にはすぐに応募がありましたが、最初に心配していたトリミングサロンの求人にはあまり応募がありませんでした。もし働く人が集まらなければ、お店を開けないので、Instagramで広告を出して告知をもっと強化しました。

その結果、何人かが応募してくれて、その中から現在のサロンの店長と出会うことができました。

ペット業界には悲しいことも多く、業界を変えたいと思っている人も少なくありません。僕も20代の頃にペット関連の店を経営していた経験があり、業界のことをよく知っています。

ペットと飼い主が幸せになることを願って、「わんちゃんファーストのサロン」というコンセプトを掲げました。このコンセプトに共感して集まってくれたのが、今のスタッフです。この時、コンセプトの重要性と、事業の目的や意思が人の心を動かす力を持っていることを再確認しました。

まとめ

いかがでしたでしょうか?途中かなり端折ってしまいましたが・・・。事業が決定してから店舗のオープンまで1年弱という短い準備期間ではありましたが、本当に様々なドラマがありました。その中でも改めて「コンセプト」の重要性を感じました。コンセプトが決まっていると、判断する軸となるため、決断スピードが圧倒的に早くなります。さらには求人や集客にも大きく影響を与えることが分かりました。

もしこれから店舗の開業や事業の多角化などをお考えの方は、まずコンセプト設計からスタートすることを酷くおすすめします。コンセプトの作り方についてはまたどこかのタイミングで記事にしたいと思います。

最後までお読み頂きましてありがとうございました。

ただいまTONE BRANDING(アプリコットデザイン)では、ブランディングに興味のあるデザイナーを募集しています。実務経験3年以上、WEBデザインやロゴ制作・グラフィックの制作ができる方、クライアントに対して一貫性のあるデザインを提供できる方(将来そうなりたい方)のご応募をお待ちしております。

▼TONE BRANDING
https://tone-branding.jp

▼採用募集サイト
https://apricot-recruit.com/application/webdesigner-2/

▼弊社運営の複合施設
https://tone-village.com

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