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そこにいても「ガンダム」にはなれない

以前の「自己紹介をゲームで語る」のお題では「カエルの為に鐘は鳴る」について記事にしたことがある。

「カエルの為に鐘は鳴る」は確かに、私の心に残ったゲームだ。

けれども「対・人間」の部分で私の心に今も残っているゲームに「SDガンダムオペレーションズ」がある。

「カエルの為に鐘は鳴る」は、ゲームボーイにソフトを差し込んで、そのプログラムを楽しむ―つまり、通信対戦の無い「一人用」ゲームだった。

対して「SDガンダムオペレーションズ」は、ネットを介してのチーム戦を行う。つまり、画面の向こうに生身の誰かが居るゲームなのだ。

言わずと知れた「機動戦士ガンダム」をモチーフとしたこのゲーム、多くのプレイヤーはガンダムを見て育った世代の男性が多い。

と言っても「ガンダム」にはたくさんの種類がある。「機動戦士ガンダム」からの流れの「宇宙世紀」は勿論のこと、「宇宙世紀」ではないアナザーストーリー的なものを含めれば、「ガンダム」と名の付くモビルスーツ(ロボット的なアレ)だけでもかなりある。

そして90年代くらいになると、多くの女性の心をも掴み、中には登場人物でのBLなんかが流行ったり…なので、ガンダムシリーズには女性ファンもだいぶ多いのだ。

ゆえに「SDガンダムオペレーションズ」にも、それなりに女性プレイヤーが存在した。

そして、その内の一人が私だったのだ。

三年くらいプレイしただろうか。制圧戦という、週に何度か夜の8時とか9時に集まって、運営によってあてがわれた敵チーム(勿論、向こうも一般プレイヤー)と戦ったり、総力戦という課金しないとチームによっては村八分にされる様なイベントがあったり、続けていくには結構大変なゲームだった。

なんせ、真剣度の高い人が多かったのだ。

制圧戦では毎週一度、各自の参加・不参加のスケジュールを提出し、それをリーダーがまとめて日程表を組むのが当たり前だった。

勿論、そんなに真剣にやらないゆるいチームもあれど、チーム内でのチャットが重要な機能と化していたこのSDガンダムオペレーションズについてはもはや、人と人との関わりがメインになっているところがあった。よって「ゆるいチーム」というのはメンバーとの関係が極端に希薄。なんとなく誰かと関わりながらゆるくやる、というネットゲームにとっておそらく理想的なスタイルは、このSDガンダム~、略して「ガンオペ」でやっていくには、だいぶ不向きな理想論だった。

我が家は夫婦でガンオペをプレイし続け、ある時いろんなしがらみに辟易して、二人して「引退」した。

裕福な家庭でも無いのに、月に三千円は課金しないとチームメンバーから白い目で見られるのにも疲れたし、親切なメンバーの為だけに頑張るのにも疲れた。そして、期限付きのイベントの為にプライベートの時間すらも削られていくことにもえらく疲れた。

言い換えればそれくらい皆、ガンダムを好きな人たちの集まりだったのだろう。

うちの夫の小学校時代の文集か何かで、そこに書かれた彼の将来の夢は「ガンダム」だった。ガンダムのパイロットになりたかったのか、いっそモビルスーツになりたかったのかは、本人にもわからないらしい。ともかく少年はガンダムに憧れていた。そして、同世代の多くの少年たちもまた、ガンダムという存在に夢を見て育ったのだろう。

だからガンオペに集う人々は皆、課金してガチャでいいモビルスーツを引き当てて、それに搭乗して颯爽と戦うという日々に明け暮れた。まるで自分が本当に、ガンダムシリーズの登場人物になったかの如く、だ。

私もそうだった。でも、だんだん疲れていった。

疲れた理由には、もう一つあった。「対・人間」のゲームには、実際に画面の向こうに「誰か」がいる。いい人ばかりでは無い。人の悪口を言うことを「言論の自由」だなんて言ってのける様な人が、戦闘力の強さだけでこれ見よがしに、チーム内で偉そうにしている。そして誰かが少しでもイベントをこなせなかったりすると、けちょんけちょんに悪口を言ってくるのだ。

私は一度、悪口を言うその人にブチ切れて、本人にしっかり文句を言う形でチームを辞めた。私がいなくなってからもごんごんと暴言を吐くその人の様子を人づてに知り、きっと、リアルな世界では絶対にこんなこと言えないんだろうなこいつ、と思った。ネットの悪いところだ。ネット弁慶という言葉を作った人は本当にすごい、そのセンスは有吉どころじゃあ無い。

現実の世界で、私たちはもっと先の未来にでもならない限り、モビルスーツには乗り込めない。ニュータイプと呼ばれる、新たな能力を持った新人類はもしかしたら居るのかもしれないけれど、少なくともパソコンの画面に向かって悪口を書きまくる類の存在では無いだろう。

そこにいても「ガンダム」にはなれないのだ―だから私たち夫婦は、三年間を過ごした思い出の場所から離脱した。

今でもガンダムシリーズのことは好きだ。そして、ガンオペプレイ中に出逢ったいろんな人たちのことは、今もなお我が家の話題に上っている。秩父神社の修理に携わったという人、実際にホタテを送ってきてくれた函館の漁師さん、子どもが生まれたことで迷いなくきっかりと引退した重課金プレイヤー…いろんな人が居て、彼らとの関わりは、プレイ当時は本当に楽しかった。

けれどももう、私たちがガンオペに戻ることは無いと思う。

結局、ゲームなのだ―楽しめなくなったらもう、潔く引退する方がいい。

私たちはガンダムシリーズの世界の中に生きる、命がけで戦う存在では無い。ガンオペが用意した世界はあくまで、遊びとしての意味を持つ和製英語である、そういった「ゲーム」の場、なのだから。


ちなみに今はどんな塩梅かはよくわかりません。悪しからず。


これ、昨年末くらいに書いて寝かしておいた(というかUPのタイミングを見失っていた…)記事です。

昨日ガンダム関連の記事を書いたところだったので、ついで?にこの記事をUPしちゃうことにしました。

ガンオペ、楽しかったけどね。でももう戻れないや。とび森やってればとりあえず幸せだし、今。


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