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『麦と兵隊』作者・火野葦平の著作も蒐集する郷土玩具蒐集家・梅林新市

 以下の記事で郷土玩具蒐集家・梅林新市のことを紹介してきたが、郷土玩具、民俗学方面以外にも梅林の仕事はある。

『書物展望』第10巻6号(書物展望社, 1941年)に梅林は「火野葦平の著書に就て」という文章を投稿している。この文章は、梅林が蒐集した火野の本を紹介した著作目録と呼ぶこともできるものであるが、この中に火野の著作を蒐集するようになったきっかけが書かれているので、以下に引用してみたい。

火野葦平氏が玩具好きであるといふ事は知つていたものの、全々未知の人であつたが、同僚の尾園君とか、火野氏をめぐる九州文学の同人に知己(特に詩人原田種夫君)があつたために、氏の風貌なり趣味なり性格なりに共鳴し、ついでに昨年九月から知遇を得、氏の全著作を蒐めて、愛蔵したいと念願し、(単行本及新聞雑誌に掲載されたものを自分の手で製本し)兎に角次の如き単行本を書架に蔵する事を得た。その中の数部は余り知られず入手も不可能なので、詳細に書いて見る事にした。(後略)(一部を筆者により現代仮名遣いにあらためた。)

梅林と火野は玩具を趣味としているという共通点があったようである。このような共通点があったので、火野に共感して彼の著作を蒐集するようになったのだろう。

 日本の古本屋を調べてみると、『玩具詩集』詩・火野葦平、絵・武井武雄(青園荘, 1951年)という本があり、梅林はこの本のあとがきを寄せているのをみつけた。火野は戦後厳しい批判にさらされたが、梅林と火野の交流は戦後も変わらず続いていたようである。

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