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「教わる」より「教えろ」

「教わる」よりも「教える」ほうがやる気が出る

自分のこれまでの行動を思い返してみてほしい。

例えば、自分が得意としている趣味や仕事の領域において、助言を与えてもらったり、説教されたり、講釈を受けたりするよりも、逆に自分が「教える」立場であったほうが、悦に浸ったり、俄然やる気が出た覚えがあったはずである。

ここで、最初にネタバラシをしておくと、

必要なのは、

自己効力感

である。

ある研究では、食事や運動の習慣を変えられる自信があると答えた人ほど、減量に成功する可能性が高いという。

「変われないと思っている人は変わることができない」という、このあたりまえのことを、さまざまな研究の結果が裏づけている。

「教わる」という行為は、実は役に立つどころか逆効果を生むこともある。

自己効力感を著しく阻害することがあるのである。

人はたとえ他人の行動に他意がなくても、そこに隠された意味を汲み取ろうとする習性があるという。

そこで、ソリューションである。

困難は表だけでなく、裏からも考えてみる。

「教わる」ことで自己効力感が低下してしまうならば、「教える」側に立ってしまうのである。

「教える」立場にたつと、「自分は知的で、他人を助ける能力があり、模範的な存在で、成功するタイプの人間だ」というメッセージを自分に送ることができる。

それにより、自己効力感が高まり、自身の目標達成に手が届きやすくなる。

ある研究によると、目標を追求する人たちは、人に助言を与えると、同じような助言を受けたときよりもやる気が高まったと感じる割合が多いという。

かの有名な「マネジメントの父」、ピーター・F・ドラッガーもこう言っている。

〝人に教えることほど、勉強になることはない〟

一貫性の原則

心理学者のロバート・B・チャルディーニの書籍『影響力の武器』に一貫性の原則というものがある。

これは、人は自分が置かれた立場や言動と一致した行動を取りやすいというもの。

心理学で「話したことを信じる効果」と呼ばれる現象があるそうであるが、これも似たようなもので、誰かに何かを言うと、認知的不協和を避けるために、それを自分で信じてしまうことが多いのである。

AA(アルカホーリクス・アノニマス)という世界的な団体がある。

この団体は、さまざまな職業や社会に属している人達が、アルコールを飲まない生き方を手にして、それを続けていくために自由意志で参加しているもの。

アルコールに依存している人達が、断酒を達成し、継続するために自発的に参加する自助グループである。

ここでは、メンバー同士が互いに助言を与えあうという優れた文化があるそうなのである。

助言を与えあうことにより、自己効力感が高まったり、一貫性の原理が働き、自分も断酒を継続していくという決意が揺るがなくなるのである。

メンターとメンティという1対1の関係を一方向ではなく、双方向の関係として捉えてみると、「教える」とか「教わる」を超えて、お互いを高めあうというポジティブな変容を促す方法となる。

自分の職場においても、参考にしたい文化である。
どちらかというと、自分の職場は出来て当たり前の風潮があり、認めあい助言を与えあう文化というよりも、マイナス面にフォーカスを当てすぎ、けなし合う文化に比重が偏っている感がある。

思い込む力

ある示唆に富んだ研究がある。

ホテルの客室清掃係84人に対して、半数には自分たちの日々の仕事が健康専門家の推奨する1日の運動量に相当するということを説明し、もう残りの半数には、この情報は伏せておいた。

4週間後、清掃係は今までのルーティンを崩すことなく、いつも通りの仕事をこなしていただけにもかかわらず、仕事が健康によいと説明を受けていた前者の群は、体重が平均で0.9kg減り、血圧も下がり、いつもより運動した気がすると答えたという。
一方、情報を伏せられていた群は、健康状態にまったく変化は見られなかったそうである。

なぜ、このような結果になったのか?

それは、

仕事に対する「見方」が変わり、その結果、仕事への向き合い方や取り組み方が変わったのである。

自分たちが普段何気なくやっているルーティン、例えばマットを持ち上げることが単なる億劫で出来れば避けたい重労働ではなく、一種のエクササイズと化したのである。

掃除機をかけたり、テーブルや窓を拭いたり、浴室を洗うことも労働という名を冠したワークアウトとなったのである。

この研究結果は、何かに対する私たちの「考え方」が、その何かの「あり方」に影響を与えるという過去50年間の心理学的発見をうまく要約しているのである。

このような効果は、「プラセボ効果」とも呼ばれている。

思い込む力は、とくにポジティブな期待を持てば、尚更に人生を変える力があるといえる。

ポジティブな感情がストレスを軽減させたり、レジリエンスを高めたり、血圧低下に効果があったりと、生理学的に変化を及ぼす。

肉体的にも精神的にも活力がみなぎる実感を少しでも感じれば、より思い込む力が増し、よりその効果に拍車をかけて、自己をその効果の期待を裏切らないようにさせようとする一貫性の心理も働く。

それにより、いい循環のスパイラルが回ることとなるのである。

何を、どのようにやるかに先立って、「なぜ」やるのか、これは〝雨垂れ石を穿つ〟ということわざがあるように、自分の信念に基づいて、困難を分割して、小さな成功を積み上げていけば、やがて大きな成功を得ることが出来るようになる、そのための北極星として自分の〝なぜ〟を思い込む力は人生を変える方程式の係数となるのである。

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