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今に生きるかっこいい少数民族を目指して、糸紡ぎと布づくりと服作り中心に日々修行・研究中…

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今に生きるかっこいい少数民族を目指して、糸紡ぎと布づくりと服作り中心に日々修行・研究中です🌱 Instagram:https://instagram.com/the_taris?igshid=ZDdkNTZiNTM=

マガジン

  • 「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料

    「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」をさらに楽しむための補助資料です。 タリ族の衣文化を、幼少期から現在にかけて時期ごとに解説。

  • tari textile BOOK 後編

    丹波布専修生時代(2018年4月~2020年3月)の作品をもとに開催する、1人企画展。 作品解説と綿の物語が合わさった、ちょっと不思議な企画展です。

  • tari textile BOOK 前編

    丹波布伝習生時代(2016年4月~2018年3月)の作品と、布づくりについて、自然の中での生活について、などなどを綴りました。

最近の記事

「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料 #6 おわりに

おわりに 以上、タリがタリ族を目指しているという自覚を持った時期以前にまで遡り、その衣文化を時期ごとに分けて紹介することで、展示の補助資料とさせていただく。展示では、作品の保存状態や展示スペースの関係上、本稿でご紹介した全ての衣服を展示できないことが残念ではあるが、近年の作品に焦点を絞ることでより生き生きとしたタリ族の今の衣服を感じていただけることと思う。  本展で展示している衣服は、小さな小さな辺境の一部族であるタリ族が、きわめて個人的な好みや感覚によって制作している衣

    • 「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料 #5「タリ族の衣服へ~現在」

      「タリ族の衣服へ~現在」 丹波の自然豊かな土地で、畑仕事をしたり植物を採集して布づくりをしたりという生活にこれまでにない喜びを感じていたタリは、ようやく自分が「タリ族」を目指しているのだということに気が付いた。(詳細はnote『tari textile BOOK 後編』https://note.com/the_taris/m/m4a62894c80f6参照)  これまでの自身の服にまつわるあれこれも、タリ族の衣文化の歴史だったのだ。  現代に生きる少数民族である「タリ

      • 「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料 #4 「tari denim」期

        「tari denim」期 その後、生地好きが高じて、自分の手で糸を紡ぎ草木で染めて織る、という織物を学ぶために会社を辞め西宮から丹波へ移住したタリ。(布づくりの詳細はnote『tari textile BOOK 前・後編』https://note.com/the_taris/m/mb346830a1f03参照)  布づくりを中心とした生活ではあったが、服作りも細々と続けていた。移住したため洋裁教室に通うことが難しくなり、先生の手助けがない状況で、なんとか自分一人で作るこ

        • 「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料 #3 「ムツミ商店」期

          「ムツミ商店」期 その後、運と縁あってテキスタイル製造卸の会社に就職したタリ。覚えることも多かったが、生地にまみれながら夢中になって様々なことを吸収していった。  そんな入社したてのある日、電車の窓から見えていた洋裁教室のことをふと思い出した。最寄りの西宮北口駅前にあり、家からも徒歩5分程だ。すぐに見学に行き、ベテランらしい女性の先生と話しているうちに、むくむくと服をつくりたい気持ちが大きくなっていった。  その日から5年間、毎週末にその洋裁教室に通った。その時々の自

        「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料 #6 おわりに

        • 「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料 #5「タリ族の衣服へ~現在」

        • 「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料 #4 「tari denim」期

        • 「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料 #3 「ムツミ商店」期

        マガジン

        • 「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料
          7本
        • tari textile BOOK 後編
          14本
        • tari textile BOOK 前編
          10本

        記事

          「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料 #2 「3びきの子ねこ~SHOP band」期

          「3びきの子ねこ~SHOP band」期 転機は15~16歳ごろ訪れた。    就職した一番上の姉が東京で一人暮らしを始め、タリは姉が住んでいたアパートに遊びに行った。そして近くの下北沢へ連れて行ってもらった。  そこは今までに知っている街とは違い、何か独特のエネルギーがギュッとつまっている感じがした。タリは街を散策しながら、さまざまな古着屋を巡った。 「こんなに楽しい服屋さんは初めてだ!」今思うとその時のタリは体内の細胞全体でその場所の空気を吸収しているような感じだ

          「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料 #2 「3びきの子ねこ~SHOP band」期

          「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料 #1 「肉まん帽子」期

          「肉まん帽子」期 とある冬の朝。洗面所の前にあるカゴの上から、灰色のフェルト地、丸い形の帽子を取り出し、満足げにかぶる少女がいた。その帽子の縁には一周、同じ素材の2センチほどのチューブ型のつばが付いている。年の離れた姉二人には、その少女の見た目がまん丸だということもあり「肉まん帽子」と呼ばれている。どうやらその帽子はもともと姉のものだったようだが、二人ともあまりかぶらずしだいに忘れ去られ、長い間カゴの上に置かれていた。  少女の名はタリ。歳は6歳か7歳。ようやくかねてより

          「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料 #1 「肉まん帽子」期

          「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料 #0 はじめに

          はじめに 今あなたはどんな服を着ているだろうか。なぜその服を選んだのだろうか。その服はどのように今そこにたどり着いたのだろうか。  人類の衣服の起源は謎に包まれている。衣服の遺物は数千年前の繊維製品や毛皮のものが発見されているが、それ以前がどうだったのか、なかなか痕跡が残りにくい衣服の起源については不明なことが多く今も研究が続いている。  しかしながら、この人類特有の「衣服」という文化にはなにか特別な、人間にとって重要な意味があるように思える。    例えば毛皮。衣服

          「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料 #0 はじめに

          tari textile BOOK 後編 #13「素材にふれる丹波布」第6話

          第6話  藍染めを終えたあと、タリはそのわたねくんたちの糸を用いて順調に布づくりを進めていった。初めて和綿で、それも自分で弓を使って綿打ちした綿を紡いだ糸だったので、整経やちきり巻き、そして機織りの段階で、糸が切れるなどのトラブルがもっと頻繁に起こるのでは、と心配していたがそれほどでもなく、いつも通りの感じで、これまで学んできた丹波布の技法でその布を織り上げた。  いつも通りとはいえ、その布はみんなの育てた綿から生まれた、タリにとっては特別な意味を持つ布になった。みんな

          tari textile BOOK 後編 #13「素材にふれる丹波布」第6話

          tari textile BOOK 後編 #12「素材にふれる丹波布」第5話

          第5話  ガラッ。  硝子戸を開け、颯爽と染色室に入って来たタリと綛になったわたねくんたち。タリはキュッとエプロンの紐を締め、まずはささっと作業台とコンロ周りを軽く拭き掃除。忘れがちなガスの元栓も開け、準備は整った。 「わたねくん、まずは精練で汚れを落とすね。みんなで育てた綿だからそんなに汚れてないと思うけど」 「うん、でも精練は汚れを落とすためだけではなくて、繊維の1番外側にある撥水性の膜を取り除く意味もあるんだよ」 「え? そうなの? そんな膜があったの?」

          tari textile BOOK 後編 #12「素材にふれる丹波布」第5話

          tari textile BOOK 後編 #11「素材にふれる丹波布」第4話

          第4話  タリは押し入れからおもむろに謎の弓を取り出した。 「ついにこれを使うときが来たか」  この弓は、種を除いた後の綿の繊維を、ふわふわにほぐすための道具だ。柄の部分は竹製で、弦は弾力性の高い樹脂のような素材。床の上に綿の繊維を片手で掴めるくらい置き、弦を綿に当て、びーんびーんとはじく。「綿打ち」という作業だ。 「ところでわたねくん、もう今は種から分離した繊維の状態だけど、変わらずそこにいるんだね?」タリは弦をはじきながら尋ねた。 「うん、繊維もぼくの一部だか

          tari textile BOOK 後編 #11「素材にふれる丹波布」第4話

          tari textile BOOK 後編 #10「素材にふれる丹波布」第3話

          第3話 「タリさん、ここ、ここ。ぼくはここにいるよ!」  収穫後の白い綿のかたまりの中から、その声は聞こえていた。 「わたねくん、こんなところに!」タリは、その白いふわふわの綿の中にいるわたねくんを取り出そうと、指で探ってみたが上手くいかない。 「わたねくん、この白いふわふわのわた毛の中から出てきてよ」 「それが、そうもいかないんだ。この白いわた毛はぼくの身体の一部、種の表皮細胞が長く伸びたものなんだ。なかなか取れないでしょ」 「そうだったの? 知らなかったよ。

          tari textile BOOK 後編 #10「素材にふれる丹波布」第3話

          tari textile BOOK 後編 #9「素材にふれる丹波布」第2話

          第2話  運命的(?)な出会いを果たしたわたねくんとタリは、最高の織物づくりを目指して歩き出した。 「タリさん、今からぼくたちはどこへ行くの?」わたねくんは、その奇妙な人物と並んで歩きながら尋ねた。 「棉ばたけの畑に行くよ」 「『棉ばたけの畑』とは不思議な表現だね。棉の畑なの?」 「私が今住んでいるのが『棉ばたけ』という名前の建物で、そこの住人が借りている自家菜園用の畑のことなんだ」  なにやらややこしいが、わたねくんはとにかく着いていくことにした。 「さ

          tari textile BOOK 後編 #9「素材にふれる丹波布」第2話

          tari textile BOOK 後編 #8「素材にふれる丹波布」第1話

          第1話    20××年 和綿村 「ただいまー」 「あら、わたね、お帰り。学校はどうだった?」 「まあまあ、かな」 「あらそう、ちょっとお母さん買い物に行ってくるね」  コットン学園に通うわたねくんは、現在3年生。綿の種として、この先の進路について考え始める時期にある。インド原産のアルボレウム族として和綿村に生まれた彼は、クラスメイトである、他の種族の種たちとの違いを自覚しながらも、自らの進むべき方向がまだわからずにいた。 「俺は、広大な大地で

          tari textile BOOK 後編 #8「素材にふれる丹波布」第1話

          tari textile BOOK 後編 #7「素材にふれる丹波布」プロローグ

          「素材にふれる丹波布」プロローグ  ここに1枚の丹波布がある。遠慮なく、自由に手にとってみてほしい。  丹波布については、実物や写真で見たことはあっても、実際にふれたことはなかった、という人も多いかもしれない。  ひと口に丹波布といっても、糸の太さや打ち込みの数、また仕上げの糊の量やその有無によって、そして布の使用年数や使用方法などによって、その手触りは大きく異なってくる。そうした手触りの違いを味わい、変化していく様子を楽しむことも布の醍醐味だといえる。  では、今あ

          tari textile BOOK 後編 #7「素材にふれる丹波布」プロローグ

          tari textile BOOK 後編 #6「I ♡ T」作品NO.15

          作品NO.15→経糸:落花生(石灰)、落花生(みょうばん)、落花生(おはぐろ)  緯糸:落花生(石灰)、落花生(みょうばん)、落花生(おはぐろ)  整経本数307本、半反 ●  「I ♡ T」展も残すところ最後の作品となりました。この作品は、落花生布の第2弾。昨年収穫した実を種にして育てた、自家製落花生としては2世の落花生布です。  作者はこのように自家菜園にものめり込み、収穫した作物を食べること、さらにはそれらを用いて保存食を作ること、そしてそれらを布

          tari textile BOOK 後編 #6「I ♡ T」作品NO.15

          tari textile BOOK 後編 #5「I ♡ T」作品NO.14

          作品NO.14→経糸:柘榴(木酢酸鉄)、柘榴(石灰)、枇杷(おはぐろ)  緯糸:柘榴(木酢酸鉄)、柘榴(石灰)、枇杷(おはぐろ)  整経本数308本、半反 ●  それでは次の作品です。作者はこの作品で、ある2人の人物とシーンをイメージし、表現しようと試みました。みなさんにはそれがどんな人物でどのようなシーンか、伝わるでしょうか。  ヒントは、この作品に使われた染色材料の「柘榴」と「枇杷」。  柘榴は、割れた果実の中にある鮮やかな紅い種が印象的な植物です

          tari textile BOOK 後編 #5「I ♡ T」作品NO.14